日誌

2022-10-28 19:32:00

出展作品紹介 ヒビ粉引シリーズ

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百職での井上茂さんの、3年ぶりの個展まであと6日。
乙女の頬のように、とろけるような白い色の中にぼんやりと現れる桜色。
ふと薫るような色気がある。

井上さんが作陶し始めた頃から好きで、ずっと意識していたという粉引。
更に今回は、その肌に独特の景色をもたらす貫入を施した「ヒビ粉引」のシリーズをお披露目してくれるそう。

使い込んだ粉引は通称「雨漏り」と呼ばれる染みが出るものだ。
料理や茶渋の汁が釉薬の割れ目から入ったり、素地の中の成分が白土部分に染み出たりする。
そこでヒビ模様のような貫入が現れることがあるのは、うつわ好きな方ならご存知かと。
古くは茶人に愛された茶陶としての粉引の存在があり、侘び寂びをイメージする人も少なくないだろうと思う。

趣のあるヒビ模様。
かと言って敷居が高すぎたり近寄りがたくはない。

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今回の井上さんのヒビ粉引、私はとても粉引らしい粉引だと感じた。
仄白く、柔らかく。
土や化粧の配合を変えながら、変幻自在に移ろい揺れる白い肌。
実際の暮らしで使うことによっても、白は、様々な白へと変わりゆく。
無垢な赤子から白髪の老境に至るように、白い色は原初と終焉を思わせる色でもあり、無限にもつながる色だと思う。

粉引に魅せられた井上さんの、今現在の粉引の居場所。
本展で皆さんと一緒に見ることができるのは、とても嬉しいことのひとつ。



こころの風景|井上茂 個展
2022/11/3(木・祝)-13(日)
12:00-18:00
▽初日14:00までは事前予約制/14:00以降の時間はフリータイムとなりますのでご予約は不要です
▽予約枠は現在満席です
会期中休 4(金)、8(火)、9(水)
最終日11/13(日)のみ16:30終了
- クレジットカードのご利用が可能です