日誌

2022-11-23 11:12:00

展示終了の御礼、通販発送について

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長文過ぎて誰も読まないかもしれませんが載せます。

今はどうか知らないけど、中学生の頃、美術科目の授業ではクロッキー、デッサン、水彩画、平面デザイン、版画などの実技もあったが、他の教科と同じくペーパーテストもあった。
ペーパーテストでは用語、美術史、画家についての知識の他、実際に答案用紙に絵やデザインを描く内容もあって、答案用紙は具体的に「何点」と採点されて返ってくるのだった。
採点制のテストなので当然の話。
当時中学生の私は美術部に在籍し、美術の成績も良かった。
が、そもそも「何点」とつけられることに、不満、疑問、居心地の悪さを募らせていた。

クラスのどの子にも「自分なりの物の見方」がある。
なのに、そこに点数がつけられるように感じるシステムがものすごくいやだった。
というか腹を立てていた。
通知表の関係でペーパーテストが必要なんだろうなということは薄々わかりつつも。

ある時のテスト中、その不満が突然爆発した。
解答をさっさと全部書き終えた答案用紙の裏側に、日頃からの違和感や矛盾を感じている気持ちを書き連ねた。
そして最後に、書いた解答を全部消しゴムで消し、提出した。
怒れる中学生は、こうして小さな反逆行為を実行してしまった。
点数をつけなければいけなかったN先生はそりゃ大変だったろう。

呼び出しもなく静かに日々は過ぎた。
そしてついに戻ってきた答案。
どうなったんだろうとちょっとハラハラして見ると、裏にはN先生からの返事があった。

「先生も本当はペーパーテストをやりたくはありません。ごめんなさい。本当の先生の願いは、少なくとも中学での美術の授業は出来上がった作品の優劣をつけるものではなく、美術を通して物の見方を広げたり、絵や作品を仕上げる過程であなた方が何を感じて、何を考えたのかということから、この先の人生に生かせるようなことを見つけてほしいと考えています。みんなが卒業するまでに、これからは少しでも、毎日や生きることの中での面白いものを発見できるヒントを美術の授業を通して伝えたいです。
がんばります」

細かい言い回しは記憶が薄れかけているが、そういう意味の内容だった。
点数は零点ではなく、消しゴムで消してもうっすら見えていた私の解答に対しての採点が行われていた。

今回井上さんの作品が届いた時、この時のことが思い出された。
他の陶芸家さんや陶芸作品との「違い」について書くことがあっても、比べるのはしたくない。
井上さんのうつわはどこまでいっても、強く濃く井上さんであると思う。

少年時代から好きだったという鉱物の世界。
その質感や輝き、土中に埋もれているというロマン、歴史。
そこからのアプローチで始まる作陶への考え方や工夫がうつわの中に見事に反映されて、独特のヒビの出方の度合いや窯変の好み、まるで天然の鉱物と見まごうような釉調などに現れていると私は感じた。

作陶の「技術」というものは手を動かし作れば作り続ける限り自然と熟達していくものだが、感性や考えは自発的に自らの中に「水」や「養分」の役割となるものを取り入れたり吸収していく必要があると思う。
水や養分になるのは、学びや研究もそれにあたるかもしれない。
この学びや研究が井上さんは特に素晴らしいし、吸収する姿勢は貪欲といってもいいかもしれない。
誰とも比べる必要などない。
 「自分なりの物の見方」が揺るがないように、努力をしている。
それが井上茂さんという陶芸家だと思う。

今回の展にお運びくださった皆さん、通販をとおして作品を選んでくださった皆さん。
一緒に楽しい時間を共有してくださり本当にありがとうございました。

三年後(くらいかな?)に、井上さんの作品群と再会できる日を、どうぞ楽しみに待っていてください。
そして井上さんと奥様へ、心からの感謝をお伝えします。

最後になりますが、web通販は本当にたくさんのご注文を頂きました。
かなりの件数にのぼったため、ご発送までに10日以上かかってしまうお客様も出てきそうです。
一人作業ゆえ、大目に見てください、、
無事にお手元に到着するよう最善を尽くしますので、どうか辛抱強くお待ち願えますと助かります。



こころの風景|井上茂 個展
-実店舗展覧会、通販ともに終了しました