日誌

2023-01-22 20:33:00

小野陽介さん陶展「Polaris」全日程終了 お礼

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ありがとうございました。
おかげさまで先日のweb通販終了をもって、小野陽介さんの展覧会全日程を終えることができました。
通販に関してはこれから梱包発送作業があり、それを経てお客様のもとに届くまで(家に帰るまでが遠足みたいな)がすべてだと思うので正確にはまだ終わっていないんですが、ここでいったん区切りとしておきます。
今回は男性のお客様や、20代、30代のお客様の割合もいつもより多くて、客層の変化が興味深かったです。

3年ぶりの小野さんの展覧会でした。
「変化した部分」に驚いたり、逆に「変わっていない部分」を感じて面白さを覚えたり、楽しい時間を味わうことができました。

メインヴィジュアルにさせて頂いた瑠璃釉の5.5寸皿。
とても深い色で黒にも見える色で撮るのが難しそうと敬遠していましたが、天気のいい日を選んで撮ってみると驚きました。
深海のような暗青色に飛び込んでみると、そこからはぼんやりとした白っぽい気泡や赤鈍色の鉄分、澄んだ群青色、浮遊するような青緑色などの溢れるような色と光たちが陽射しを受け、鮮やかに浮かび上がってきました。

宮沢賢治が好きな私はすぐに「銀河鉄道の夜」冒頭の一節を思い出しました。
「『ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。』先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問をかけました。」
(ちなみに問いの答えは「星」で、主人公のジョバンニは答えを知っていながらも、うまく答えられませんでした)

瑠璃釉という釉薬は、透明感のある青から藍色を発し端整ではあるものの、淡々としていて平坦な釉調に収まりがちな印象を持っていました。
小野さんが作った瑠璃釉は豊饒な宇宙や海のような色と光を放っていて、眺めていると別空間へと吸い込まれていきそうで、今までの概念に新章を追加してくれました。
展覧会の在廊日に小野さんに、深みのあるこの瑠璃釉の表情の理由を尋ねてみると
「変化がほしくて、下地に家の庭土を塗っているからだと」
と教えてくれました。

もともと変化の大きな釉調を好み、制作の内の一つの指標にしている小野さん。
釉調変化の多様性がもっとも大きいと言われる薪窯から、焼き方にもよりますが比較的均一な焼き上がりになると言われるガス窯へと移行し、新たな試行錯誤と成長の日々を送っていました。

どんなに揉まれようとも、揺るがない不変の感性や感覚や意志は、力強く美しい。
一方で様々なことを経て成長し、必要性を感じるもの、自分が目指すもの、大切なものが変化していく様も、たくましく美しい。
不動の北極星を振り返って仰ぎ見ながら、小野さんはこれからも目指すところへと流動し動き続けていくのだろうなと思います。

装花のFlower Worksの本多さんには今回も瑞々しい花たちを空間にしつらえて頂き、年末年始のリースやお飾りも販売して頂きありがとうございました

小野陽介さん、奥様のまこさん(そして愛猫のちろぴ一家も!)、工房訪問の折には快く迎えてくださって本当にありがとうございました。

そして店頭と遠方からと、小野さんの作品を選んでくださった皆さま。
皆さまのおかげで次の原動力が生まれました。
心よりお礼申し上げますとともに、次回の小野さんの作品群、展示を楽しみにしていてください。

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