日誌

2023-03-10 20:21:00

柔軟さと謙虚さと

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すず竹細工の橋本晶子さんが先行紹介用に送ってくれた、脚付きの高台笊。


数年前、この作品を写真で送ってくれた時に驚いた。
長野の戸隠竹細工では見る形だけど、鳥越のすず竹細工では珍しいはず。
橋本さんはこんなものも作るんだとわくわくした。

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今改めて橋本さんに、あれはどうして脚をつけたか聞いてみたら
「百職さんでお付き合いのある陶芸の高木剛さんの高台皿を見て、籠にも脚があったら素敵だし、便利だろうなと思って」
と返ってきた。

橋本さんの持ち味として、思考の柔軟さがあると思う。
良さそうだなと直感したものは異素材からのヒントでも、竹細工にあった形に仕立て直して、取り入れてみる。
ここで大切なのが、安直にやっているのではなく、良さそうな対象を理解してすず竹細工に似合う構造や形に咀嚼するということだ。

橋本さんのもうひとつの美点である謙虚さが、制作には常に生きていると思う。
橋本さんは、コロナ以前にすず竹の笊づくりの名人の方のもとに通い、笊づくりを習っていたという。
すず竹細工には、笊や弁当箱などその道ひと筋の名人がいて、彼女はその先輩たちをリスペクトし礼儀を払い、学ぶ姿勢をいつも持っている。
作るだけではなく、受け継ぐという感覚も、橋本さんの中には常にあるのだろう。
先人たちに教わった〈基礎〉があり、その基礎の土台があるからこそ「脚をつける」という〈応用〉が成立するのだ。

もう昔に読んだ、どの工芸の本だったか忘れてしまったけれど、そこには〈工芸は、昔から作られてきたそのままを形にするのではなく、現代の有り様を映してこそ未来につながっていくものだ〉的なことが書かれていた。
青は藍より出でて藍より青し、という言葉があるけれど、作り手も作品も店も、そうして時を越えていけたらいいなと思う。

橋本さんの作る籠や竹細工には、過去・現在・未来のそれぞれの楽しみがたくさん詰まっている気がする。

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【次回展覧会】
harmonia
飯島たま×小川麻美×橋本晶子 展
2023/3/25(土)-4/2(日)
12:00-17:30

‐3/25(土) 12:00-14:00のみ予約優先制

‐close 3/28(火)、29(水)
‐最終日4/2(日) 16:30close