日誌
莊司晶さんの鍋敷き
数年ぶりに京都の木工家 莊司晶さんに作品を注文しました。
今回届いたもののひとつが、今では莊司さんの代表作にもなっている鍋敷き。
吉祥モチーフがかたどられています。
吉祥というのは簡単に言うと、縁起の良い、おめでたいという意味。
たとえばポットを載せたこの鍋敷きは「巾着」。
中に宝物やお金、お守り、香りものなどを入れることから、富や財に恵まれる福袋を表し、縁起が良いとされています。
結び型のものは、形の通り「結び」。
一番なじみがある形だと思いますが、これは手紙をひと結びした形が由来と言われています。
恋の縁結び、子孫繁栄、そのほかにもあらゆる佳きものとのご縁を結ぶ吉祥モチーフ。
ではこの四角い「入隅」。
器などでもよく見る形ですが、これも吉祥モチーフなの?と疑問が浮かぶかもしれません。
四角の隅を凹ませたり切り取ると、八角形が現れます。
中国から渡ってきた易という占いの基本図像・基本理念「八卦」は八角形をしており、悪い気を跳ね返し全方位から良い運気が集まってくる形であるとされています。
古代中国や、そこに色濃く影響を受けた日本では〈八〉そのものが吉数とされています。
入隅(その仲間の隅切型も含め)は歴史あるラッキーモチーフともいえます。
仕上げの彫りはよく研がれた刃物で。
ごくごくゆるやかな丘の稜線のようなやわらかな丸みを帯び、美しく素朴な彫り跡によって形作られています。
手による仕事だからこそできる有機的で妙なる膨らみは莊司さんならでは。
自然と手で撫でたくなります。
材はキハダ。
木の器やカトラリーでは使われることは少ないのでなじみのない方もいるかもしれません。
黄色みを帯びているのが特徴で、漢方薬としても多く使われ、かなり古い時代から(飛鳥時代とも)装束や紙を染める黄色の染料としても非常に重宝されていました。
木目が似ていることから桑の代用として使われることがあります。
かなり多岐に渡る用途を持ち、古来から多用されてきたため、関西では明治以後かなり数が少なくなり、現在流通しているのは北海道産のものが多いようです。
あまりほかにはない、この樹種独特の個性ある落ち着いた黄色は魅力的。
材の樹種であったり縁起の良いモチーフであったりと語れるところも多いお品ですので、贈り物にすると喜ばれそう。
結婚祝い、引っ越し祝い、新築祝いなどにぴったりです。
木の鍋敷きですから時には焦げることもあります。
そうして色合いを深め、時を重ね、その家だけの味わいが加わっていくことの嬉しさを味わって頂ける人に選んでもらえるといいなと思います。