匙ごころ

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金城貴史 個展「匙ごころ」
2025年10月11日(土)‐25(土)
12:00‐17:00
*休廊日 10/14(火)、15(水)、21(火)、22(水)

- 最終日の10/25(土)のみ16:30終了
- 事前予約制ではありません

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岐阜県中津川を拠点に〈木の匙のみ〉を制作する作家 金城貴史さん。
知り合ってから20年近く(!)経とうとしています。
お互い、取り巻く環境も暮らす場所も歳月とともに
徐々に変化していきました。
ただ〈匙を作る人〉と〈店を営む人〉という場に
立ち続けているのは変わらない。


この度とてもありがたい機会を得ました。
出会いから20年近くを経て、
初めて金城貴史さんの展覧会をさせて頂きます。

「匙ごころ」というタイトル。
金城さんのもとを訪ねると、
お住まいに吉野弘さんの詩が飾ってありました。
それががきっかけといえばきっかけです。
吉野さんの詩を見つけ、独り言のようにそらんじた時、
反射的に詩心という言葉が浮かびました。

詩心というのは
「詩を創作する上での基本的な考え方や、
詩の趣を理解し、感じる心」
と定義されているようです。
感受性や創造的な姿勢、
表現や作り出す喜びなどが
詩を作る上でも大事なことなのでしょう。

それは匙という物を作りだす金城さんにも
共通しているように感じました。
日常の出来事や自然、
感覚に対して先入観にとらわれず、
素直に受け止め心を動かし、
それをかたちで表現しようとする感受性や、
作ることを通して新たな発見や感動を生み出す
創造的な心構え。
それは特別なものではなく、
身近なものや現象から生まれる感性を
大切にすることから始まります。

中津川の工房とお住まいへ向かった6月のある日。
駅まで迎えに来てくださった奥さまの車に乗ると、
みるみるうちに街の風景は遠ざかり、恵那峡を過ぎ、
田畑や林が広がる静かな場所に行き着きました。
のどかな集落は雨上がりの草木が瑞々しく青く茂り、
はじめて訪れた私たちも心地よく迎えてくれました。
金城さんのお話をお聞きしている最中、
何度も鳥たちの歌うような囀りが
会話の間に入ってきました。

奈良から移住された金城さん自身や家族にとっても、
現在のこの地は
心地よく安心できる住環境であるそうです。
それは作家自身の感受性に大きく作用すると思います。
その礎があることで、
普段見過ごしているものの中に隠された美しさや
面白さを見つけ出すこともできるでしょう。

表現する喜び、楽しさ、探求心が生み出す作品たちは、
各々の佇まいと存在感、静けさと豊饒さを併せ持った
うつくしさを備えていました。

それが今の金城さんの「匙ごころ」なんだろうと。

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