晩秋



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叶谷真一郎 個展「晩秋」

2025年11月8日(土)‐23日(日)
12:00‐17:00
*休廊日 11日(火)、12日(水)、18日(火)、19日(水)
作家在廊日 8日(土)予定

- 最終日の23日(日)のみ16:30終了
- 事前予約制ではありません
- お支払いは現金のほか
各種クレジットカードをご利用いただけます


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少々話は逸れるが、
かねてより叶谷さんから控えめな口調ではありながらも

「昔から映画が好きで…」
という話を聞いていた。
特に黒澤明、小津安二郎、溝口健二など
古い日本映画について言及されていた。


それについていけるほどの映画教養は
私には不足していてだいぶ昔に〈東京物語〉を観たきり。

ふと思いついて小津安二郎監督の〈晩春〉を観た。

当初は小津監督特有の低いカメラ位置、
定点撮影的な部分をおさらいしようと思っていたのが、
紀子を演じる主演の原節子さんの芝居に衝撃を受け
(特に有名な能のシーン。
『杜若』鑑賞時の紀子の表情変化が心の変容を表し、
まさに修羅が降臨したかの如く…!)、
戦後日本の劇的で特異な変容を
静かに淡々と描き出している点に
すっかり心を持って行かれてしまった。

独特の時代の空気、形式美、
住まいやしつらえにも深い魅力を覚えた。


そういえば叶谷家の住まいのインテリアには、
まるで古い日本映画に出てくるような古物が
至るところに使われている。

昔からのものとモダンがほどよく混ざり合い、
心地よく洗練されている印象がある。

だからなのか叶谷家は私にとっては
どこか懐かしい、
親戚の家で過ごしているような居心地の良さもある。
展覧会の打ち合わせだ、取材だとお邪魔しながらも
仕事以外のよもやま話も楽しみにしている。


そして欠かせないのが
発酵料理教室もされている奥さまが作るおいしい食事。

大きめの鉢や皿には
季節の主菜が代わる代わる盛られ、
小鉢には家庭的な小さな煮物や和え物で彩られる。

浅鉢やスープカップには具沢山の汁物がなみなみと。
春夏秋冬、朝も昼も晩も大小様々な叶谷真一郎さんのうつわに、
手作りのおかずが拵えられ
食卓に並ぶその光景はこの上ない幸福そのものだ。

昔であろうと現代であろうと、
季節ごとの食の風景があることの尊さは変わらない。


叶谷真一郎さんは今日も日々うつわを作り続け、
食卓の幸福を支えている。

我が家の食卓にも叶谷さんのうつわが並ぶ。
古陶を見て学び、それを作陶に生かし、
深くて静かな日常を支えるうつわを生み出そうと奮闘する。


ぱぱっと作った料理も、
丁寧に準備したごちそうも、
菓子舗で買ってきた甘いものも、
どのうつわに載せようか
食器棚の前でしばし思いめぐらせ手に取るのは、
かなりの高確率で彼のうつわだ。


使い込むごとに、次第に愛着が増す。

時に静かに、時に風格を添えてくれる、
どんなものでも受け止めてくれるうつわ。


前回の展覧会は2022年3月。
そこから3年半経っていよいよ個展の開催となりました。
折しも季節は晩秋。
秋から冬に寄り添う、
様々なうつわがたくさんたくさん並ぶことでしょう。

ぜひあなたの食卓にも叶谷真一郎さんのうつわを。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。

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