読み物

Carpe diem ①

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共に家庭を持ち、三児の母である岡悠さんと、一児の母であるはしもとさちえさん。

お二人と会ってまず出る話題は、ものづくりのことよりもそれぞれの普段の暮らしの中の近況。
それを喜怒哀楽を交えながら話す。

京竹細工の岡悠さんは、家事は一気にこなすほうが得意だという。
一方、陶芸のはしもとさちえさんは、家事も仕事も合間合間でこつこつやるタイプ。

それぞれ性に合うやり方があって、対照的にも思える二人。
けれどどちらも、家庭生活とものづくりを営みながら今日というその日を生き、歩みを進める一人の人間。

Carpe diemはラテン語。
直訳すると「今日という日(diem)を摘め(carpe)」という意味になる。

人間は、常に〈今〉という時を生きている。
過去はもうなく、未来はまだないもの。
過去も未来も、一人一人の〈今〉に包まれている。
過去の事実は事実として存在し続けるが、〈今〉の現況次第でその捉え方は変化する。

〈今〉悲しい時を過ごしているならば、過去の悲しみもより強く思い出される。
しかし〈今〉が幸福であるならば、過去の悲しい事実もある程度受け入れることもできるだろう。

未来もまた〈今〉の状況によってどのようにも変化する。
予測する未来が気がかりで、〈今〉何も手がつかないなら。
〈今〉を十分に生きられず、未来の結果も頼りないものになってしまいそうだ。

未来は〈今〉の投影。
〈今〉を生きることが、未来にもきっとつながることになる。

〈今〉ここで、二人が作る美しい作品を目にし、触れることで、過去にも未来にもその美しさや明るさは波及していく。
少なくとも〈今〉を生きるこの時を美しく彩り、喜びを添えるだろう。

〈今〉を生き、日々の暮らしを通じながら、ものづくりにも取り組む、岡悠さんとはしもとさちえさん。
サンプルとして届いた作品群には、以前から取り組んできた手法の洗練や再構築があった。
未来へとつながっていくかもしれない芽吹きの気配やディテールがあった。

先のことはわからないけれど。
〈今〉を満たす作品を咲かせることは、未来を満たす種を生むだろう。
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