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2021.07.30 Friday

読み物

森谷和輝さんとガラスと ④

  • 森谷和輝さんロングインタビュー / 後篇

    インタビュー 後篇


    “自分の中の自然を映す「素地」として”


    大学からガラスをやり始めた森谷和輝さん。
    そうなるともう15年以上となってきます。それでもまだまだガラスの話は尽きません。
    最近取り組んでいることから、駆け出しの頃の話も少し聞かせてくださりました。
    これから先へ続く未来にこちらまで一緒に楽しみにさせられてしまう様子が印象的なインタビュー後篇です。

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    ガラスは最初からきれいだった

     
    ――八角皿や十角皿、角取皿など定番は割と多くキャスト技法で作ってますけど森谷さんの言葉で作り方を教えてください。

    森谷「キャストっていう作り方は、石膏で型を作ってそこにガラスのかけらを詰めて、窯の中で融かしていくとガラスがその型に沿って流れていく。ああ言葉にするとやっぱわかりにくいですね。

    キャストは今安定感あります。十角(皿)とか。
    八角(皿)の型は作り直したいんですけど。それは単に前の型がぼろくなってきたからで。
    ま、直すからにはもっとより精度を上げたい。今までと違う素材で原型作ってみたりとか。
    スライド丸鋸買ったから、これでもっとこう角度もピシッピシッとやって、そしたらもっとこう全体もきれいになる。
    けど僕がやるとなんかあんまりピシッとはならなかったりもします。あれ?って。
    素材が置き換わるからっていうのもありますけどね。
    木でまずやって、次は蝋でやって、でガラスでやってってすると自然と崩れていくじゃないですか、自分の手の跡が。でもそういうのも面白いですよね。

    最初の頃、なんでもこれでやったら面白いみたいに感じてた。なんにもわかってなかったけど感じてたと思う。
    吹きガラスだと難しいっすからね。自分で“かたち”を作っていかなきゃならないから無理。技術がないと無理しちゃうっていうふうになる。
    けどキルンワークは最初からそういうのとは違う…うまくいってなくてもいい感じに見えたりする。なんだろう?陶芸でもそうなのかな。釉薬かけて本焼きしたらなんかかっこよく見えた!みたいな。

    まあとにかく一番最初ガラス触った時の衝撃ってそういうことですよね。
    『もうこれ丸くなってるだけですごいきれいじゃん!』ってなった。
    最初からきれいだったから。ほんと最初の頃そんなんでしたから」

     ――ああ、ピアスとか?(※初期の頃のピアスは粒状のモチーフだった。現行のピアスthinはキルンワークで薄く制作されており形状はかなり異なる)

    森谷「そう!ピアス!あれ俺怒られましたからね」

     ――ええ?怒られた?

    森谷「怒られました。ベテランのガラス作家さんに。ほら文化博物館のあの時ですよ。(※京都文化博物館で開催されているイベント“京都アートフリーマーケット”に駆出しの頃の森谷さんは出展されており私たちが出会ったのもそこで偶々)
    『これはなんもしてない!』っつって。
    俺も『ほんとそうですね』って。
    でもあれはね、そんときはそれがすげえきれいだと、俺思ってたからね」

     ――そっか。あれ好きでした私も。指輪とかも同じ造りで。大切に使って修理出しにきてくださったお客様、去年もいらっしゃったじゃないですか。

    森谷「ね、今もね大事にしてくれててね。あれは嬉しかった」

     ――とにかく文博のアートフリマの時は無垢な感覚を叱られてしまったと。

    森谷「まあ…わかってなかったからなあ俺」

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    ○みんな作ってるけどその人にしか作れないオーバル


    ――キルンでは新作のオーバルに力入れてますよね。

    森谷「あれは楽しいですよ。オーバル。かたちを削って。結構かたちをね。だからびっくりしますよ、さっきと矛盾してるから話が(笑)
    面白いんです、かたちを削ってね、自分のいいと思うかたちね。
    あのかたちはね、ほんと削ってかたち整えて、ちゃんと型紙も作って。その通りに沿って。型にも乗せて、ちゃんと。
    今までいろいろ言ってるけど、そんな考えを持ったまま今やってるのはこんな感じです。
    これの面白味もあるし、決して工業製品みたいな感じにはならないし、なんか面白いんっすよね。削って丸く作ったけどもうそれがそういう自分なりの丸だっていうほうが面白いじゃないですか?」

     ――型にあててるのにどうしてもちょっと歪んだりしますよね。

    森谷「そうそう!それね。型にあててマジックで書いて、ここまで削るんだよってやってるのに。けどその中でも、たぶんみんなにやらしたら違うじゃないですか。なんかそっちのほうが面白いって思いました。
    オーバルなんてみんな作ってるけど、その人にしか作れないオーバル。
    昔はかたちを削って…が、やだったというか単に設備的にできなかった気もするかな。
    一番最初のキルンワークは荒川さんの影響が大きくて。リズミカルにシステマチックにぽんぽん作るっていうのを念頭に置いてたからあんまり削ったりとかいう作業がない感じで作ったという。
    お皿なんてそういうね、ちょっとへこんでりゃいいはずだって。シンプルな丸で。
    そういう感じで考えてたと思うんですけど、それともっとこういう感じで、もっと自分の好きな感じで作れるようになってきたのかなあ。
    好きなものがわかってきたというだけかも。
    作りたい感じがわかってきてるから自分出してもコントロールできてるというか。
    好きな感じにもっていけるように。
    これなんか最低限(笑)?スタート地点か!」

     ――今からまたスタートできるのいいと思います。新鮮です。

    森谷「そう?最低限だね、やっと。そうかもしんない。俺、今までちょっとガラスに頼りすぎてたんだ。みんな頼りすぎないでがんばってんだ、ほかの方はね。
    ま、でもいいですよ最終的には別に何も語ることはないという境地でいくんで」

     ――予定は、ですね。

    森谷「うんまあどうなるかわからないけど。今オーバルはそんな感じで、すごく楽しいの。すごく。大変だけど設備もちょっと整ってきてるし、そこまで時間かけずに体の負担も少なくできるようになってきてるってのがあるから。そこで結構ね、設備の成長もかなりありますよ」

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    ○ガラスってこう動くの?みたいなことがまだある


     ――設備を成長させると自分にも余裕が生まれて、仕事の質、ひいては作品の質も上がりますよね。

    森谷「そうそう。導入してみたら『あ、こういうのもできるからこんなんもできそう』みたいな発想のもとになる。早く気がついたほうがいいですよね。ずるずるあるものでいったり、気づけないことで僕はむだな時間過ごしてきたから。それも必要な時間だったとは思うけど。それを経てね必要なものはどんどん取り入れたいと思うし」

     ――いいチャンスをつかむきっかけがもっともっと増えるかもしれないですね。

    森谷「そうなんすよ。もっといい方法あったってね。決して早く作りたいってわけじゃないけど」

     ――今特にやってて楽しいものはなんですか?

    森谷「今はオーバルとか葉皿とか薄いものを作りたくて。丸い板を作るときの枠の型をなしにして、鉛筆で輪郭だけ書いておいてそこに細かめのガラスのやつを敷き詰めておいて融かして作るんですね。けっこうギリギリの量を置いてるんで」

     ――去年葉皿を出してくれた時に『薄板作るのでギリギリ融けて流れる量だけ敷くから広がらなくて穴開いちゃう』と嘆いてましたよね?

    森谷「そう変わってない!ほんとギリギリだから。オーバルもそれで穴が空いちゃって焼き直したりして。今それがネック。
    なんかけっこう細かい(ガラスのかけら)のじゃないとだめで。大きめのかけらでやるとなんかもう穴だらけになっちゃって。『どういう融け方!?』っていう。
    ターミネーターみたいにくっついてきゅって縮んだりするんですよね、粘度が高いから。
    シャバシャバって感じじゃなくて、隣がくっつくと、縮んだりして。油もそうですよね、広がらない。薄いと広がらないんですよね。厚みがあればねえ。

     ――厚みがあると重力もかかりやすいから押されて広がりますよね。

    森谷「ね。薄くやろうとするなら上から石膏の板で押すような型でやるとか、これから新しくできたらいいかな。
    けっこうガラスってこう動くの?みたいなことがまだある。
    焼き直したら逆に縮んで『なんで!?』みたいな。もう原因不明(笑)!そういうこともあるのかとまだまだね思いますね。
    これからまだまだ考えて考えてのくり返しですね。本当にまだまだ続きそうです」

    (了)

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