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2021.10.25 Monday

読み物

With a warm feelings ③

  • とりもと硝子店 鳥本雄介さん、由弥さん

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    とりもと硝子店さんは、鳥本雄介さんと由弥さんの夫婦二人が営むガラス工房。
    とは言えこのお二人を知る方々すれば、もはや夫婦二人のみならず長女、長男、そして生まれたばかりの次男坊を加えた、鳥本家から成るガラス工房だ、いう意見多数かもしれません。 

    それほどにとりもと硝子店さんのガラスは、ふだんの家族での暮らしから制作までがひと続き、ひとくくりになっていることが良く作用しているように感じます。

    旦那さんだけがつくり手、もしくは奥さんだけがつくり手、というわけではなく。
    それぞれ別個の一作家同士でもなく。 

    雄介と由弥の、吹く男と吹く女が一緒になって夫婦揃っての「とりもと硝子店」で、それがいまや子どもさんも生まれ、夫と妻の二人から世界は広がり、ひとつの家族になったからなのか。
     

    鳥本さんのお二人は、ガラス作家の荒川尚也さんに師事し、荒川さんの晴耕社ガラス工房に勤務していました。
    おなじみのガラス作家 森谷和輝さんもまた同工房に勤務経験があり、鳥本さんご夫婦(兄姉)と森谷さん()は兄姉弟弟子という間柄です。
    森谷さんが2011年に初個展をしてくださった時に二人は駆けつけてくださいました(当時はまだご夫婦ではありませんでしたが)
    雄介さんと由弥さんに初めてお会いしたのはこの時でした。

    初対面の雄介さんは、まるで職人気質のうちの祖父のように寡黙で、どこか鋭くてセンシティヴな雰囲気を漂わせて見えました。
    でももしかたらナイーブでシャイなのかなとも。

    そして由弥さんはすらりとしたスタイルが印象的で、内面から新鮮な果実のような不思議な瑞々しさを放っている人だなと感じたのを覚えています。
    今も昔も明るくて優しくて爽やかな風のようでちっとも変わりません。

    そこからまたお二人に再会したのは数年先になるのですが、その間も森谷さんを介してお二人の話を聞くこともあったためか、数年後にお会いした際にも何か近しいもの、親しみを感じながら「お久しぶりです」といった温度感で会うことができたのは確かです。

    とりもと硝子店さんのつくるアイテムは、実用性豊かである同時に、しなやかな遊び心や文学的要素を感じる作品も多いです。
    今までお二人が培ってきたガラス制作の基礎や応用などの高い技術のほかに、文学や芸術、デザイン、お二人がともに好きな絵本、華道、自然科学などの教養や知識がたくさん散りばめられています。
    雄介さん個人が作ってきた作品、由弥さん個人が作ってきた作品、それぞれの作風も大事にし、そして融合させながらまた新しいものを一つずつ二人で生み出す。
    それがとりもと硝子店さんなのかなと思います。
     

    以前の取扱説明書にある鳥本さんたち自身の言葉。
    「とりもと硝子店のガラスは珪砂、石灰、ソーダ灰等、10数種類の原料から始まり、透明度、輝き、強度、厚み、耐熱性、音の響き、作業性等ベストを探りながらり品物が出来上がります」
    自家調合は不安定な要素もつきまといますから簡単にできるわけではなく、どのガラス作家さんでも導入しているわけではありません。
    実用性や用途に考えをめぐらせ、ガラスの柔らかさを生かしたフォルムもとても美しく時にチャーミングです。

    そして材料から自家調合することで生み出したまるで日の光に柔らかく揺れる澄んだ澄んだ水のような、透明なガラス。
    二人だからこそできるものを作ろうよということから始まって、そしてこれからも続けていこうという心意気が、二人がつくるガラスからいつも満ちているように感じます。


    とりもと硝子店(鳥本雄介、由弥) 略歴

    鳥本雄介 1975年生まれ。
    鳥本(旧姓 酒井)由弥 1978年生まれ。

    晴耕社ガラス工房に勤務、荒川尚也に師事。 

    それぞれ自身の作ったものを世の中に発表しながら、ガラスの技術だけでなく様々なことを学ぶ。

    退社後、2人で窯を築く。 

    2015年独立、開窯。「とりもと硝子店」として活動を始める。

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