読み物
濵端弘太 木を見て我を見る ①
シンプルな円環
「材料の木を眺めている時は、ここから何を作ろうかと考える時。
と言った濵端さんは、
長崎の濵端弘太さんの工房を8月に訪れた。
2018年の秋以来の再会。
4月に別のギャラリーで行った個展では漆ものをいつもよりも多く
「割と前に戻ったみたいな。定番のやつを」
と話してくれた。
作りたいものや、やってみたいことはいろいろとある。
そこで重要なのは、材料の〈木材〉。
その時その時で、今どんな木材を所持しているかということ。
材によって作れるものが異なるので、木を見ながら、
すべては木から始まる。
自身の制作の源、原動力になっているものは?
すると少し考えてから濵端さんは言った。
「自分の作品ですかね。前のやつを見て、
濵端さんは制作において外的要因に頼ることがほとんどないという
手元にある素材の木を見つめ、自分自身を見つめて、
まったく健全で、潔い姿勢だと思った。
中学生くらいの時に読んだ村上春樹のあるエッセイの中で
〈レイモンド・チャンドラーが小説を書くコツについての文章で、
という内容が確かあって時折ふと思い出すのだけれど、
素材となる木材を見つめ、作品を生み出し、
それはとてもシンプルな円環だ。
展覧会で私たちが目にするものは、