読み物

森谷和輝 origin ①

今、これから、原点

今、これから、原点


森谷和輝さんがガラスをやり続けている根底に流れているのは、ガラスへの色褪せぬ感動なのだと思う。


大学から始まったガラス造形。
初めてガラスに触れた時をこう振り返る。
「最初にガラスに触った時の衝撃がすごかった。もうこれ丸くなってるだけですごいきれいじゃん、って。最初からきれいだったガラスは」
原点で抱いた感覚。

過去に話した中にもこんな言葉がいくつもあった。
「ガラスがゆっくり流れている感じ。本当にゆっくり融けていく。流れているのを感じられると『ああ、きれいだな』と思う。ガラスの厚みの中に泡の動きがじわぁとなって閉じこめられている感じが好き」
「熱でかたちが変わっていく。熱や重力で落ちたり曲がったりして、手もとじゃないところでかたちが変わっていく面白さ。冷めて手に取って観察できる、痕跡みたいなのを探すのが楽しい」

いつも彼が夢中になって見つめているのは
「窯の中でどんなふうにガラスが流れていくのか
バーナーを介して触れるガラスはどう変化するのか
その透明感の美しさ、質感、表情」

森谷さんのガラスに大自然の氷や湖、光の色や質感を見出して、どこか特別なものを感じる人もいると聞く。
ガラス本来が持つ性質を出発点にしてつくられるものたちには「ガラスに寄り添った自然さ」が少なからず投影されるからだと思う。

今年も森谷さんは話してくれた。
「ガラスのね、かたまりをちょうど作りたいなと思っていて。かたまりみたいなうつわにナッツを載せてつまんでいるだけで、特別な感じがあって、僕はとても好きで」

今、これから、原点。
それぞれはいつも隣り合って歩んでいる。

今も変わらずに、素材を知る面白さに飽くことなく、こんなにも愉しんで、作っている瞬間にもガラスの美しさに感動している人が、ここにいる。

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