読み物

渡邊文矢 つながり/循環 ①

作家紹介 前嶋洋明さんへの一問一答

作家紹介 渡邊文矢さんへの一問一答


通奏低音のように。

それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの全体に影響を与える。「もの自体」だけではなく、根源となるその作家自身の存在は欠かせない。それだけに作品のみならず出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いがいつもあります。
作家さん自身からの誠実な言葉と考えをお読み頂きながら、作品を紐解く手助けや愛着を深めていく入り口になれば幸いです。
渡邊さんは初めて百職では展覧会開催となりますので、なじみのない方もこちらの一問一答でぜひ一歩、二歩と近づいて頂けると嬉しいです



質問1
はじめましての方に向けての、経歴とは違う自己紹介をお願いします。

───初めまして。渡邊文矢といいます。木で彫刻をしています。日常の中で感じていることや、人生の中で大切に思っていることを形にできればいいなと思い、制作しています。
「ただここに在るように」
今回の展示は、そんなことをテーマとしています。この言葉は、僕にとって作品を制作していく上でも、生きていく上でも大切にしている言葉です。何か特別な役割がなくても、誰かのためにならなくても、ただここに在るように。そんなものが好きで、草や木のように、ひっそりとでも生命の輝きを感じられる、そんなものが作れたらと思い、制作しました。

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質問2
木彫というものづくりを選んだ経緯、始めた頃に感じていたこと、そこから歳月を経て変化したこと、変わらない点をそれぞれお聞かせください。

───木彫は、中学の頃に落ちていた枝で、自分の指を模して作ってみたのが最初だったと思います。
それから、鳥や魚などを写真を見ながら作るようになり、専門学校や弟子入りさせてもらう中で、本格的に木彫を学びました。
始めたばかりの10代の頃や専門学校時代は、とにかく何か形にすることが楽しくて、ひたすらいろいろなものを彫り、そのために技術を身につけていたように思います。20代になり、少しずつ自分の気持ちを表現してみたくなり、作品も作り始めました。工房の仕事を終えて帰宅後、ただ何も考えずに、今の自分の気持ちを手が動くままに作っていました。その作品制作が、今へとつながっています。
過去と現在で創作において変わったことは、始めた頃は「形にすること」を楽しみ、今は「感情を形にすること」を楽しんでいる点です。作品を作り始めてから大きな変化はないと思いますが、年齢を重ねるごとに、少しずつ考え方の変化はあるのかなと思います。

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質問3
今まで訪ねた中で、最も印象に残っている場所はどこですか。その時の思い出も、よかったら少し教えてください。

───真っ先に浮かぶのは、小学生の頃に友達とよく遊んでいた空き地です。友人の家の裏にある、少し小高く見晴らしのいい場所で、秘密基地を作ったり、ごっこ遊びをしたりしてよく遊んでいました。その日も夕方まで鬼ごっこをして、疲れたあとに、みんなで並んで見た空が思い浮かびました。旅行先で見た絶景よりも、身近な景色のほうが印象に残っているような気がします。


質問4
犬と猫と暮らす楽しさについて以前から少しずつお聞きしていましたが、あらためて犬の魅力、猫の魅力、それぞれどういった点が魅力でしょうか。一緒に暮らす上で、つながりを感じる時はいつですか。

─────犬は、尻尾を振って感情を表に出して喜ぶ様子が可愛いですし、猫は気ままな様子や、ちょっと勝手だなと感じるところも魅力で、一緒に遊ぶのも楽しいです。猫も犬も、日向で気持ちよさそうに寝ているときなどに、「いいな、癒されるな」と感じます。

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質問5
冬のはじまりを迎える中で、風情を感じるのはどんな瞬間ですか。

───散歩するのが好きなのですが、道端の枯れ草の立ち姿は、造形的にもかっこいいなと見てしまいます。あとは、すべてを埋め尽くすような真っ白な雪原もいいなと感じます。暖かい部屋でみかんを食べたり、旬のものが献立に入っている時も、いいなと感じます。

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質問6
循環は自らの体内でも起こり、生活環境や宇宙にまであらゆるところにありますが、渡邊さんが「循環」と聞いて頭に浮かべるのは何でしょう。

───心が浮かびます。悩み事や考え事があると、自分の頭の中でぐるぐると回っているうちに、なんだか澱んでしまうような気がする時があります。そんな時は散歩に行き、川や森を眺めてぼーっとしていると、頭の中がすっきりしてきて、自分も自然の一部のような感じがし、頭も心も循環するように感じます。人に話すことも同じで、溜池のように、人の心も一箇所にとどまっていると濁ってきてしまうのかなと思います。たまには誰かに話したり、自然と一体になったりして、循環していくのが健全な気がします。


質問7
これまで継続して今のお仕事をされてきたと思います。ものごとと向き合い続ける中で、ご自身が大切にしてきたつながりは何ですか。

───つながりで言えば、いろいろなことが大切だと思います。人とのつながりも、自然とのつながりも、過去とも未来とも、つながりがあるからこそ継続ができるのだと思います。作品づくりに限定すれば、自分の心の声と言いますか、奥の方にいるもう一人の自分、本当の自分、そんな存在とのつながりが大切だと思います。そこに嘘をついてしまうと、その作品は自分の作品ではなくなってしまいます。まずは自分自身であること。その上で、世界とつながることを大事にしてきました。もちろん、作品だけを作っていれば幸せなわけではないので、いろいろなつながりがあってこそ、作品が作れているのだと思います。

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渡邊 文矢(わたなべ ふみや)略歴

現在、岐阜県在住
1985 東京都町田市生まれ 神奈川・岩手にて小中高を過ごす
2005 京都伝統工芸大学校  木彫刻科 卒業
2007 井波彫刻伝統工芸師 井口琇月氏に師事 職人仕事の合間に自分の作品を作り始める
2011 年期明け 独立
2020 Vima House維摩舎|中島GLAb(台湾) 個展
2022 san galerie|中島GLAb(台湾)  個展
2023 小器藝廊+g (台湾) 個展、ギャラリー上がり屋敷(東京) 個展、cut&paste select shop|中島GLAb(台湾) 個展
2024 Hase (名古屋) 個展、msb gallery (東京)  個展
2025 Ippuku林森40|中島GLAb(台湾)個展「HOME」、Galerie Satellite|ギャラリー上がり屋敷(パリ) 個展

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