読み物

ふつうの 少し先の 風景 ②

一問一答 |金城 貴史さん編

一問一答|金城 貴史さん編


一問一答|“僕の製作は、木の塊から匙を削りだす作業”


出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いのもと、この度もご紹介記事を上げております!
今回はいつもと趣向を変え、スタンダードに一問一答形式にしてみました。
どきどきしながら質問をお送りし、そして戻ってきた回答にまたどきどきしながらまずは店主の私が読むというもしかしたら一番自分が楽しかったかもしれないとはたと思ったりもしましたが。
シンプルな形式ですが作家さんのふだんの表情や過ごし方、考え方などもちらりと覗くことができて興味深いものになりました。
一問一答形式、そして末尾には店主の私が思い浮かんだ小文というスタイルになっています。




small作業机.JPG

質問1 制作をする上でもしくは日々暮らす中で大事にしている本あるいは映画、もしくは仕事をしている時によくかける音楽などはありますか?

金城 ―yumbo というバンドの「みだれた絵」という曲を、この冬はよく聞いたり歌ったり(子守歌として)していました。
学生のころから好きな曲で10年以上前の曲なのですが「新しい病が 今日を歩けば 揺れながら線を引く 暴れる目を開いて」という歌詞が今の気分にシンクロした感じでした。
昼の作業時は大体ラジオを聞いていますが夜の作業時、静かに集中したいときに音楽をかけます。
https://www.youtube.com/watch?v=_cE1I2znOvU




質問2 座右の銘や好きな言葉、大切にしている言葉があったら教えてください。

金城 ―「臆せば死ぬぜ」 松本大洋作 ピンポン(漫画)より




質問3 手仕事のもので大事にしているもの、使っているもの、(所持していないけれど)記憶に残っているもの、いずれか教えてください。

金城 ―木曽さわらのおひつ 4年ほど前に購入し、冷ご飯の美味しさに目覚めました。




質問4 今回制作されている中で、特に力を入れている作品、ご覧になってほしい作品について教えてください。

金城 ―どの匙にもそれぞれ思い入れはあるのですが、今回は「蓮華」を挙げようと思います。
大体半年から一年くらいのスパンで匙の型を作り直すことが多いのですが蓮華はこの3年半程、正面からの型の変更を行っていない唯一の匙です。
側面の型やその他細部は変更しているので出来上がりは以前とは別の匙になっているものの、正面からの形にある程度の強度があるんだろうなと思っています。




質問5 三人展、ご自分以外の橋本晶子さんや吉田慎司さんの印象、或いは籠や木の匙について思う浮かぶイメージのいずれかを教えてください。

金城 ―僕の製作は、木の塊から匙を削りだす作業です。
いわば最初から匙は木の中にあるのですが、箒や籠のように素材を束ね、編み、組んで、一つの形を作り上げる仕事にはより人の知恵や技が感じられて憧れに近い感情を抱いています。

small小刀.JPG


※本文写真は二枚とも金城貴史さんより

作業机→気に入っている風景というかいつもの風景です。製作に追われていると机の上がごちゃごちゃしてきます。無事に匙と向き合える一日が有り難いです

小刀→ほぼすべての匙を最後にこの小刀で削り仕上げています




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金城貴史さんのこと

過去に一度だけ企画展にお出になって頂いて以来なのでかれこれ7、8年ぶりにご一緒させて頂きます。
でも折に触れてふとどこかのイベントで顔を合わせたりお見かけしたりするので、その時々のお仕事ぶりや空気はそう遠くない距離感で感じさせてもらっていました。
いつもどこかで気になっているつくり手さん。
その証拠というか、常にご一緒にお仕事をしてきたわけじゃない割に、手もとには金城さんの匙をかなりの数所有しているのです。
写真はマイコレクションの金城さんの匙たち。
(引くくらい持っていて自分でもちょっと驚きました)
金城さんの匙は、いつもいろんな感覚や考えや思いを引き出してくれます。
匙考。
匙はもっとも身近な手道具のひとつで、使い勝手の定義は十人十色。
わかっていても、金城さんの匙を手にするとその美しさや用途について自分の中の感覚が触発され、ついああだこうだ語りたくなってしまいます。
そうやって知的興味を刺激させてくれるのと同時に、実際に今まで使わせてもらってきた実感…自分の内側の感覚はただひたすら「使いやすいよ!」と素直な声を上げています。
確信と実感を小脇に抱えながら、今回もまた超個人的目線による金城さんの匙についての思いを皆さんにお伝えできれば幸いです。

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