読み物

col tempo土居祥子さんと三温窯さん ④

器、使い手、作り手 三方を温め合う

器、使い手、作り手 三方を温め合う


今回初めて、秋田県五城目町の自然豊かな土地に工房を構える三温窯さんのやきものもご紹介させていただきます。
きっかけはcol tempo土居さん。
「制作の時には、必ずと言っていいほど三温窯 佐藤幸穂さんのマグカップと八角皿をおともにしています」
ということからでした。

s-DSCF4091.jpg

三温窯さんは父子二代で作陶をされている窯。
お父様である佐藤秀樹さんが1983年開窯。
息子である幸穂さんが2010年から加わり、協業されています。

s-DSCF4197.jpg

「大らかであたたかな安心感を覚えて、お父様の築かれた窯と手の仕事を繋いで自然の恵みと制作が共にある暮らしの健やかさに、うつわを手にするたびにあたたかな気持ちになって、尊敬の思いとともにこちらも背筋を正してもらうかのようです」

という土居さんの言葉が表すように、使う人へのまごころと思いが実直な作陶によって結晶していると感じます。
今の時代性や生活様式も反映させながら、工程や技法には昔ながらのものも大切にしながら作られているのでした。

訪れた秋田県五城目町の工房。
2代目である幸穂さんと連絡を取らせて頂き、足を運ぶことができました。
三温窯さんでの時間は、特別なものになりました。
〈工房それ自体が今も純粋な民藝の精神を宿したまま、家族皆で大切にし、そこに存在している〉
少なくとも私はそう感じました。
まるで手つかずの自然に足を踏み入れるような感覚と、どこか似ている気がして。

豊かな木々に囲まれた広い敷地に工房はあり、移築してきたという古い木造建築の作業場、奥に進むとガス窯と登り窯の窯場が築かれていました。
同じく木造の作品展示室があり、什器の多くは幸穂さんが自ら作られたものというからびっくり。
そして住居(内装は少しずつ父・秀樹さんが自作し、増築部分は幸穂さんが基礎から作ったという見事なもの)も併設されていました。

幸穂さんに工房内を丁寧に案内して頂き、多岐に渡ってお話を聞かせてくださいました。

────────

s-DSCF4176.jpg

佐藤:父は会津若松の宗像窯というところで七代目の方に師事して修業し、その後修行の年季が明けて秋田に来て、ここ五城目町で仕事を始めて40数年になります。器の形はその宗像窯の形が結構入っています。そこは民藝運動に関わっていた窯元だったので柳とか濱田庄司が窯を訪ねてきていたという話は聞いています。

s-DSCF4143.jpg

私は、秋田公立美術工芸短期大学では漆コースで、短大の付属高校では金属コースでした。陶芸は避けていた気がします。ふにゃふにゃと柔らかいものより、金属や木材など手や道具でカキっとした形を立体物を作ることが好きでしたので立体であれば何でも興味がありました。その結果、いろいろな素材に触れる機会が多かったです。

s-DSCF4175 - コピー.jpg

s-DSCF4144.jpg

研修所で漆芸を学んでいた時、先生から『塗よりも形を作るほうが向いている』との言葉をもらった時があり、はっとしました。塗のもので身近なうつわを作ることを考えた時に、塗椀は別ですけど、マグカップや皿なんかはやっぱり素材として陶器のほうに広い可能性を感じたんです。今となってみれば子供の頃からのの仕事をそばで見てきたことが自分の中では強かったんだろうと。

s-DSCF4196.jpgs-DSCF4199.jpg


家業に入った頃、漆の影響があるのか、(自分の作る)形が硬くて。父は最初から土をいじっているので土の柔らかさなどが風合いに出ていますけど、私は木工とか、平面出すことを一生懸命やっていたので。乾漆も好きだったんです。石膏取りをして形を作るのが好きで。その乾漆の型の作り方を生かして始めたのが梅型の小皿だとか八角皿です。ただそれがやきものに適したやり方なのか悩むこともあります。父は型ものはほぼやっていなかったですし、私はほかの窯に修行へ行ったりはしていないので。よそでいろいろ経験を積んでおけばよかったかもしれないと思うことがあります。父のやり方しか知らないので。

s-DSCF4205.jpg
s-DSCF4206.jpgs-DSCF4207.jpg

良かったと思うのは、形などはよそでの影響は受けずに、自分がいいなと感じたものをやってこられた点でしょうか。
作りたい形が思い浮かぶと、形や用途によっては他の素材の方が良かったりするともったいないので土で作る良さを優先的に考えます。

s-DSCF4178.jpgs-DSCF4169.jpg

→→→続きは⑥にて
1