読み物

harmonia ②

山梨、神奈川、岩手

山梨、神奈川、岩手



山梨

染織の飯島たまさんのところへはご無沙汰してしまっていて、お訪ねしたのは8年も前。
もうそんなに経ってしまったんだなあと古い写真を見返した。

当時たまさんは山梨の勝沼にいて、葡萄棚をくぐった先の古くて趣のある家にお住まいだった。
たまさんは愛犬のミニチュアピンシャーのPさんと出迎えてくれた

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六月も終わりのこの季節は、まだ青い葡萄がたわわに実っていた。
見上げれば葡萄の青と木漏れ日。
こんな景色は生まれて初めてだった。
たまさんは当時の家先の庭でも、草木染めに使う茜や紫根なども育てていた。

それから数年後、たまさんは生まれ故郷の山梨県笛吹市に移られた。
今度の家は、新たに建築した住まい。

新しくても、室内はきっと居心地よく落ち着けるよう設えてあるだろう。
庭先にはやっぱり草花が植えられていることはもうわかっている。
ミニピンのPさんと、そして新たに家族になった白サバのトラ猫であるサラちゃんとみんなで暮らしている。
生けるものから糸を紡ぎ、染め、布を織るたまさんの営み。
久しぶりに展示参加して頂き、皆さんにご覧頂けるのが私も嬉しくて楽しみで仕方ない。

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竹筬と筬通し|
筬(おさ)は機織りの際に、織布の幅や経糸の密度を保つための道具で、筬通しは筬に経糸を通す道具。どちらも飯島さんの大切な愛すべき道具。お守りのようなものでもあるかもしれない。



神奈川

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陶芸の小川麻美さんの工房にだけは、実はいまだにお訪ねできていない。
知り合ってからずいぶん経つのに(11年!)。
ご結婚後はそれまでの神奈川県平塚から、同じ神奈川でも北部の相模原市に移り、緑豊かな場所に家を建て、暮らしと作陶を営む。
行ったことはないのだけれど、小川さんは作陶や暮らしぶりがよくわかるような投稿をいつもされていて、遠くにいるのにまるで近くにいるような不思議な距離感を覚える。

ご家族には、大切な2匹の猫、茶トラ白のじんくんと、サビ白猫のにこちゃんも含まれている。
そう、実は今回の三人の作家さんは全員「猫飼い」という面白い共通点がある。
最初、仕事場である工房には立入禁止にしていたという猫たち。
でも徐々に徐々に猫たちはするすると入り込み、そして麻美さんもそれを許すようになったそう。
きっと猫たちも
「大好きなご主人様は別室でいったい何してんねん?」
なんや部屋から出てくると悩ましげにしてはるしどうしたんやろ?
などと気になって仕方ないはず。
見守られながら(時に邪魔されながら?)作陶する麻美さんが目に浮かぶ。

窯場には、陶芸教室時代の恩師から譲られた年季の入った中古のガス窯がある
その前には、麻美さんと恩師の先生とを出逢わせてくれた方のところで使われていた窯だそうで、年季の入りぶりに貫禄さえ感じる。

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これは炭化焼成もできる仕様の窯。
前の持ち主も前の前の持ち主も炭化焼成で使っていたのだから窯もすっかり燻されて黒い。

結婚後に建てた新居に新たに仕事場を併設した際、先生のもとからこの窯が到着するのを麻美さんは数ヶ月もの間、今か今かと待っていた。
当時、麻美さんに電話をすると、よく
「窯がまだ来ないんですよね〜」
とじれったそうにため息をついていたのを思い出す。

炭化は、20時間近くかけて作品を焼成した後に行っていく。
ゆっくりと冷ましていく段階で窯の中及び作品を燻し黒い色を吸着させるという手法。
徹夜を余儀なくされる作業だけれど、変化の度合いのなかなか読めない炭化という手法がすごく好きだという。

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今回の三人展ではこの炭化で仕上げた作品が多いとのこと。
麻美さんの作品で私が最も大好きなのも炭化の作品。
とにかく今は、いい窯焚きになるのを信じて楽しみにしていようと思う。



岩手

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もう3年も前になる。
9月の半ば、橋本晶子さんに案内してもらった二回目の盛岡。

一緒に歩いた道は、北上川の支流にあたる中津川沿い。
水が澄んでいて、川底の石までよく見えた。

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市街地だけど、広くてのびやかな景色だった。
向こうの山はそびえるようではなく、不思議とこちらを見守ってくれている気がした。

古くから続く喫茶店や、晶子さんが懇意にしている古い竹細工のお店さんなどを訪ねた。
そこにいる人たちは、やや癖があって、シャイで、この地ならではの考えを持っていた。
話が始まると、次第にその暖かさでじわじわと他所から来た私を包んでくれた。

次こそは、またこの道を歩きたい。

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