読み物

冬の家 ⑤

石原ゆきえさんへ冬に纏わるQ&A/冬の家 episode04

石原ゆきえさんへ冬に纏わるQ&A/冬の家 episode04


通奏低音のように。

それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの全体に影響を与える。「もの自体」だけではなく、根源となるその作家自身の存在は欠かせない。それだけに作品のみならず出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いがいつもあります。
今回は4人の方が集う展覧会ということで、それぞれの皆さんに一問一答形式でお答え願いました。質問テーマに冬を織り込み、感じ方、過ごし方、楽しみ方などから作品や人柄が淡く浮かび上がるようです。
それぞれの方の作品からイメージを膨らませた「冬の家 小話」も合わせて掲載します。


①自己紹介をお願いします

石原── 1997年 愛知県立窯業高等技術専門校 修了。
瀬戸でやきものを学んでから随分経ちますが現在は、名古屋の西隣、津島という街で白、黒、無彩色のシンプルなうつわを制作。
個展、グループ展を中心に活動しています。

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②冬は好きな季節ですか?苦手な季節ですか?

石原──寒いのが苦手なこともあって、冬はどちらかと言えば苦手な季節
でもここ数年は寒い冬は暖かい部屋で温かいものを食べると言う楽しみも見つけたので今展の冬の家では温かい食卓をイメージして制作したものをいろいろ展示したいと思います。

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③ご自身の冬の暮らしで欠かせない暮らしのアイテムを教えてください

石原──私の冬の暮らしに欠かせないものは取手のないカップ。
仕事の合間や寒い外から帰ってきた時に温かい飲み物をカップに入れて両手を温めながらホッとできる冬に欠かせないもの。

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④秋の終わりから冬にかけて様々な風物詩がありますが楽しみにしているものはなんですか?

石原──紅葉狩りに行くのも楽しみですが家の近所で色づいていく街路樹の様子を眺めるのも秋から冬にかけての楽しみ。

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⑤今年の冬にやりたいことを教えてください(新しいことでも、毎年のルーティンでも)

石原──冬の定番、作業場のストーブで焼き芋。
今年もまたやりたいです。


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冬の家 episode04

目下就活中の大学生の彼女(21歳)に、遅まきながら始めたアルバイトの初給料が出た。
幼い頃、母に手を引かれながらごくたまにだけ入る作家もののうつわの店があった。
「素敵ね」
と言いながら数々のうつわを前に、母はいつも見るだけで、決して買うことはなかった。
女手一つで自分を育てずっと応援し続けてくれた母に、何かうつわをプレゼントしたいと考えていたある日、彼女はふと通りかかったうつわ店のウインドウの前で立ち止まった。
ウインドウの向こう側に並んでいる、味わいある濃淡と柔らかな丸みを描いたきれいなグレーのゴブレット。
これを母と自分のとを二つおそろいで買ったら?
お酒もようやく飲めるようになったから。
いつもは素直に言えない〈ありがとう〉の言葉も添えて。
母と一緒にこれで飲んでみたい。
かすかな緊張を覚えながら、店のドアを押した。
バイト代が入った財布をお守りのように胸に抱き、この冬、彼女は生まれて初めて、一人うつわの店へ、ゆっくりと足を踏み入れた。

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