読み物

井上茂 風に吹かれて ①

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土や石に愛され、愛する人


お父様が土木関係の職に就いていたという井上茂さん。
それもあり少年だった井上さんにとって石は身近で大好きな存在だったという。
そして井上少年の身近には土もたくさんあったそうな。

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2年前の個展時のインタビューを読み返した。
井上さんが陶芸を習い始めた初心者の頃、やりやすい精製土ではなく、何故かいきなり原土を渡されたという。
それでもさして戸惑いもなく、直感的に或いは経験的に
〈ああ、じゃあこれを溶かして、乾かせば粘土になるのかな〉
と井上さんは察した。

原土との出会い。
それを軸に陶芸人生が始まった。

自然の恵みがもたらす表情、味わい、偶然性を井上さんは好む。
素材と作風との高い親和性。

生まれ育ったものがもたらしたのかもしれない。
泥臭く追い求める井上さんの努力あってのものだろうとも思う。
作品に触れじっと見ていると、土や石に愛される何かを井上さんは持っているようにも感じる。

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やきものの粘土が持つもの。
鉄分だったりアルカリだったり、珪酸、石英、長石…

どのような豊かな成分が土の中に含まれているのか。
それを焼成するとはどういうことなのか。
どのように変化するのか学び、予測し、実践し、理解する。

作り出そうとするものをイメージし、深い表情や味わいを十全に引き出すことを井上茂さんはこれからも目指していくというそんな心意気がうつわたちから漲っている。

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