手しごとの器･道具
テ ノ ナ ル 工 藝 百 職

通奏低音のように。
それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの全体に影響を与える。「もの自体」だけではなく、根源となるその作家自身の存在は欠かせない。それだけに作品のみならず出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いがいつもあります。
今回は4人の方が集う展覧会ということで、それぞれの皆さんに一問一答形式でお答え願いました。質問テーマに冬を織り込み、感じ方、過ごし方、楽しみ方などから作品や人柄が淡く浮かび上がるようです。
それぞれの方の作品からイメージを膨らませた「冬の家 小話」も合わせて掲載します。



①自己紹介をお願いします

松本──磁器の制作。
白磁、土に銀や銅の金属を焼きつける仕事、植物を置いて焼き、土にその陰影を残す仕事などを軸にうつわ、装身具、オブジェなどをつくっています。
いままではつい求められるものを多くつくることに気を取られがちでしたが、自分の心動くものを見つけることにさらに焦点を合わせていくようなこれからになるといいなと思っています。



②冬は好きな季節ですか？苦手な季節ですか？

松本──冬はすきです。
春のつぎに。




③ご自身の冬の暮らしで欠かせない暮らしのアイテムを教えてください

松本──ありきたりですが、ストールやマフラーやブランケット。
巻きものがないと落ち着かないところがあります。
巻くと安心。巻けば安心。なぜかは不明。



④秋の終わりから冬にかけて様々な風物詩がありますが楽しみにしているものはなんですか？

松本──たのしみというよりは忘れないでやらなきゃという感じですが、球根を植えること。
春に中庭にいろいろな花が順番に咲くのを眺めるのがすき。
今年は何色のチューリップにしようかな。



⑤今年の冬にやりたいことを教えてください（新しいことでも、毎年のルーティンでも）

松本──引越しした友人に会いに行きたい。
簡単に実現できそうなのになかなか。
いつでも会える気がしてるのがよくないのかな。。あれ？この質問に対してこの答えでいいのかな。
彼女に会ったらいつものようにどうでもいい話しをしながら鍋でも囲もうかな。。やっぱり答えになってない気がするけど、ま、いっか。
冬はなんとなく久しぶりな誰かと会いたくなります。会えるといいな。


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冬の家 episode01

酒造メーカーの営業職の彼（28歳）は実はお酒が弱かった。
外回りから戻ったばかりの冷え切っている手をこすり合わせながら、家に帰ったら最近集め始めた全国津々浦々の日本茶からどれを選んで淹れるか、
癒しと温かさを求めて彼は考えていた。
（あ、帰る前にデパ地下に寄る時間がありそうだな。チェックしてた 冬季限定の和菓子を買って帰れたら、あのプレートと合わせてみたいな） あのプレート。
それは磁器の白の中からまるで草花の残像が浮かび上がるような、 彼が今まで見たことないものだった。 その緩く美しい曲線が脳裏に浮かび、笑みがこぼれた。
すると隣のデスクの先輩から「お前、ニヤついて手が止まってるの課長に見られてるぞ」と警告まじりに小突かれる。
ここはひとまず脳内妄想を一時停止させたほうがよさそうだ。 自分へのご褒美を励みに、あともうひと山がんばろうと彼は気合を入れなおした。