読み物
time piece ①
時のかけら
石井美百さんは、神戸を拠点に青竹細工をされています。
彼女の技術的なルーツは大分竹細工。
岡悠さんは、京都宇治田原で白竹細工をされています。
彼女の技術的ルーツは京竹細工。
竹細工の産地は今も日本中に点在し、以前はもっともっとありました。
寒暖差のある日本では土地ごとに生育する竹の種類に違いがあり、同じ竹でも青のまま使うところもあれば、白くして使う場合もあります。
お二人が使う青竹と白竹は、同じ真竹。
青竹は伐採した真竹そのものの色を生かした素材で、白竹は真竹に含まれる油分を抜き天日に晒すなどして色を抜いた素材のことを言います。
同じ真竹でも、青と白では、硬度やしなやかさなどの性質、材料づくりのタイミングや保管の取り扱いなどは異なります。
そして見た目で分かりやすい「編みの模様」。
竹細工の基礎となる編み模様(六つ目、四ツ目、網代等々)こそ共通しますが、そこからまた応用され生み出された編み図の発展を見ると、大分系統独自のものと京都系統独自のものとではそれぞれかなり特色があり、個性ある美しさと面白さを楽しむことができるでしょう。
土地ごとの文化の違いから始まり、どこでどんな人々にどのように使われていたかで求められるもの、良しとされるものはその都度変化します。
先人たちの竹の仕事がこれまで長く長く積み重ねてきた時間。
流れ流れて現代。
竹の仕事をする石井さんと岡さんがそれぞれ積み重ねてきた時間。
時のかけらが降り積もり結集し編まれた一目一目の中には、目に映る以上のものが深く濃く編み込まれているようにも感じます。
今回の小さな催しでは並ぶ数は少ないですが、その代わりに作られたものたちとじっくり対話するような場をご用意いたします。