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ふつうの 少し先の 風景 ⑦

作品紹介|吉田 慎司さん

作品紹介|吉田 慎司さん


吉田慎司(よしだ・しんじ)略歴


1984年 9月生まれ、東京練馬で育つ。
2007年 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。
中津箒に出会う。元京都支店の職人に箒を学ぶ。
株式会社まちづくり山上入社。以降、展覧会、ワークショップ、講演、クラフトフェアなど全国で展開。

受賞歴 2011年~日本民藝館展入選または準入選

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中津箒のつくり手、吉田慎司さん。

野外クラフト展「工房からの風2011」にお出になっていた時にお声をかけさせて頂いて、お仕事させてもらっている。

箒といえば今も栃木の鹿沼箒が有名だが、中津箒もまた、明治頃から神奈川県愛川町中津で作られている特産である。
中津(当時は中津村だったそう)出身の柳川常右衛門が諸国を旅して身につけた箒作りの技術とホウキモロコシの栽培法を持ち帰って皆に広めたのだという。
箒づくりの産地として成長していたが、掃除機や安値で作られる箒の存在に押され始めると中津箒は衰退の一途を辿る。
しかし2003年、前述の柳川常右衛門から数えて六代目の柳川直子さんが「まちづくり山上」として中津箒の会社を再興した。

吉田さんは大学在学中に、中津箒とそして柳川さんに出会った。
(吉田さん曰く「今思うと、若いいい職人を作るべくスカウトされたような感じでしたね」)
そして卒業後、入社し2003年から箒づくりの道を歩き始めることとなる。

もともとは東京練馬のお生まれ。
ご結婚された今は、奥さまのご実家が札幌にあるということから北海道に移住し、詩歌に力を入れた書店と自身のアトリエの店「がたんごとん」を営む。

会社に所属しながらも、離れた土地で暮らしながらものづくりをするという新しいスタイルは新鮮だ。


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これが中津箒の材料となるホウキモロコシ。
中津の会社にはホウキモロコシの畑があり自家栽培されている。
吉田さんやほかの箒のつくり手たちも収穫期には、畑を訪れ手伝いをすることもあるそう。

つくり手たち自らも土に触れ、身体を動かし材料の収穫をする。
その土地に根ざしたものを使い、必要とされるものを作ってきた手仕事の歴史。
自然の恵みに直に触れることで、素材のありがたみやいとおしむ気持ちを持つのは、つくり手にとってもきっと大切なことなのだろうと思う。

箒の材料としているホウキモロコシの草は以前にも一度送って頂いたことがあったが、今回もぜひご来店された皆さんに実際に触れてみてもらいたいと考え、送って頂いた。

ホウキモロコシという植物について、吉田さんが所属する会社である「まちづくり山上」さんのホームページに大変詳しく書いてあり、それがまた面白い。
少し長いが以下抜粋。

*****

ホウキモロコシ

イネ科モロコシ属の一年草。江戸時代のころから主に東日本で、室内用の座敷箒の材料として栽培されていました。穂先がしなやかでわずかに油分を含むのが特徴です。そのため、ホウキモロコシで作られた箒で畳の上を掃くと畳につやを与えることができるとされています。もともと国内に自生していた植物ではなく国外から持ち込まれたものだといわれていますが、いつごろどこからどのようにして伝わったのか、はっきりとしたことはわかっていません。かつては茨城県一帯がホウキモロコシの一大産地として著名でした。中津でも箒の製造が拡大するにつれて地元産のホウキモロコシだけでは需要が賄いきれなくなり、茨城県をはじめとする各地から仕入れていました。
箒作りに使用するホウキモロコシは初夏に種蒔きをし、盛夏に収穫されます。収穫したホウキモロコシの扱い方は産地によって異なりますが、中津では脱穀してから穂先をムシロなどで覆って天日で干し、室内に保存します。
国内での箒作りの衰退とともにホウキモロコシの栽培も減り、現在では国産のホウキモロコシは一般に流通することのほとんどない稀少な作物です。

※中津箒(まちづくり山上さん)のHPより一部抜粋

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夏に収穫するわけだから少し時間が経っているが、上手に保管されているのだろう。

まだとてもいい香りを放っていて、そしてしなやかで柔らかい手触りだ。



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手箒(竹)


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手箒(枝)

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手箒は、吉田さん自身が「永遠のクラシック、性能を求められるTHE・道具 に位置するもの」というくらいで、そのとおり道具の中の道具と言えるだろう。

だからこそ掃きやすさが大切。
今まで何回も紹介してきているので、何度目の言葉だろうと自分でも思うが、とにかく吉田さんの箒は掃いてみるとその柔らかな使い心地に驚く。
けれどもしっかりと強いコシがあるので塵や埃をきれいに掃き出してくれる側面もある。
昔ながらの畳はもちろんのこと、現代のフローリングの床も傷つけることはほとんど少ないだろうと思う。
しなやかで柔らか、そしてしっかりしたコシを持つ箒は、つくり手によって材料を見極め、選び、のひとつひとつの工程が確実に行われて生まれる。

また特徴的なのはこの柄。
昔から箒の柄には扱いやすいように丈夫で軽い竹が使われることが多い。
けれど初めて吉田さんが作る箒を見た10年くらい前、なんと自由気ままな姿をした枝が柄になっているんだろうと衝撃を受けた。
テントブースに何本も吊るされた箒たちは、まるで何かの現代美術か彫刻のようで踊っているかのように見えたことを今でもはっきり覚えている。
そしていざ使ってみると意外にも掃きやすい。自然そのままのうねりや曲がりだからかもしれない。


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ミニ手箒

手箒より、約5センチ短めのミニ手箒。
使っている草の量も少なめのため全体もかなり小ぶりでコンパクトに作られている。
手箒よりも軽量。
部屋全体を掃きたい時は手箒を使うが、ちょっと周りだけ掃きたい時や階段を掃く時は、軽くて持ち運びも楽なので私はついミニ手箒をお供にしてしまう。
ささっと使える気軽さがとても魅力的。
何用で使えばいいですか?とたまに聞かれるが、気分で使い分けてもらったら一番気持ちよく使える気がする。
もちろんこのミニ手箒も、しなやかでしっかりとした穂先のコシがある。
だんだんと使っていくうちに穂先がへたってきたなとかコシが弱くなってきたなあと感じたら、穂先から数センチくらいのところで少しずつ鋏などでカットするとよい。そうすることで箒と長い年月付き合って使い続けることができる。


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ななめ小箒|18cm 15cm 12cm

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子どもの頃、学校の下駄箱(ってものすごい昭和の響き)掃除の当番が回ってくるとこんな形をした小箒を使って、自分のクラスの子達の下駄箱掃除をしていたことを思い出した。
今この小箒を使うなら、テーブルの上をパン屑をささっと掃いたりするのが素敵なんだろう。
とはいえ、やっぱり棚掃除をしたり気がついた時にレジカウンターを掃いたりしている。
一番小さいサイズはパソコンまわりをささっとやるのに使う。
おしゃれにと使いたい思いつつも、やっぱり普段づかいの道具であり、気取らない普段のなかで無意識に手が伸びるくらい使いやすさがこの箒の身上なんだろう。
使っていくうちに穂先がななめにへっていくのもなんだか愛嬌がある。
お子さんもこんな小さな箒があれば、お掃除を少しは楽しんでくれるかも。


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洋服箒

洋服の埃や塵を掃く箒。
刷毛のような形をしていて、自分に向けてささっと掃いてみると扱いやすい形をしている。
草の量も多めで、幅広くたっぷりと作られているので洋服の繊維にしっかりくっついた埃も払いやすい。
五つ玉という造りで、五つの小束から構成されている。
見た目からもななめ小箒よりも更にしっかりと編み綴じてあるのがわかると思う。
しっかりと編み綴じてあるのに加えて、装飾的な意匠を凝らしてもあって耐久性を高めているのと同時に見た目の美しさ楽しさも、この箒の魅力。


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筒型小箒

草束ひとつ分の細身の小箒。
この細さだから届く隙間というのもあるし、細かい作業をする人には喜んでもらえそう。
鉛筆のように軽く握って持ちやすい形もいい。
パソコンのキーボードの隙間掃除ならこちらの筒型小箒もおすすめ。
箒は使い始めると意外と便利なので、事情が許すなら部屋のあちこちに吊るしておけるとすぐ使えるし、いろんな場面で使い分けもしやすいので仕舞わずに、見せる収納で吊るしておいてみてほしい。


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コーヒーミル箒

コーヒーミルを掃除する刷毛よりも、もう少ししっかりしたコシのあるものを探している方をたまに見かける。
このコーヒーミル箒もリクエストがあって生まれたものだという。
柄の先が一段細くつまみやすいように作られていて、いろいろな構造のミルを掃除するのに対応できるようにこれは考えられているのが分かります。奥のほうに詰まった挽き豆のカケラを掻き出したい…みたいなこともあるはず。
穂先が広がらないよう綴じられて作ってあることにも、なんと芸が細かいのかしら…と感動。可愛らしいサイズの中に工夫が詰まっているのが伝わってくる素敵な箒。


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