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2021.07.30 Friday

読み物

森谷和輝 整音 ⑥

  • A piece of artwork with glass 作品紹介 キルンワーク篇 ②

    A piece of artwork with glass 作品紹介 キルンワーク篇

    作品紹介|The case of Kiln-slumping キルンワーク スランピング

    「熱でかたちが変わっていくところ。自分で曲げているんじゃなくて熱や重力で落ちたり曲がったりしていて、なんか手もとでじゃないところでかたちが変わっていくのが面白い。あとで冷めて手に取って見れる、観察できる、痕跡みたいなのを探すのが一番楽しいかもしれないですね(森谷)」

    森谷さんの定番のフォールグラスやフォールコップはその名も「落ちる」。ガラスが上から下へと落ちてゆく動きを利用して作られている。ガラスの中の気泡も落下していくのが看て取れる。ガラスが収縮したようなしわが寄ったようなテクスチャーもユニーク。
    流れ、落ち、広がり、収縮し、動いてゆく。予測可能な範囲でコントロールしても、あとはガラスの動き次第。それゆえにひとつひとつの個体差が大きいが、その揃うことのない偶然性さえも楽しさや美しさに満ちている。


    板ガラスを作り石膏の型に乗せて落とし込んで焼くのがスランピング。
    またスランピングの一種で、型に板ガラスを被せて焼成し成形する技法をホギングと呼ぶ。


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    フォールグラス

    なんだろう?
    とまず感じてほしい。
    そうしたら、ね。
    触れてみたくなるでしょう。
    ガラスの落下運動。
    落ちて滴って。
    ガラスは実は柔らかいのだ。
    今年のフォールグラスもいい。
    定番で、毎年同じものが並んでいると思うでしょう?
    違うんだな。
    今年も気持ちよく裏切ってくれる。



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    銀彩皿L

    銀彩皿が、森谷和輝さんが初めて作った「皿」作品。
    ガラスと銀の組み合わせに不思議なほど親和性を感じる。
    理由はわからないけれど、どちらも光を受けて輝く姿は美しい。
    銀色の輪郭はガラスの存在を引き立たせている。
    銀の輝きが、このキルンワークのガラスに凛とした芯の強さを与えている。



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    丸鉢


    やきものみたいな厚みの鉢。
    やきものみたいな、と書いたけれど、キルンワークは窯で焼成して成形するので半分くらいはやきものと呼んでもいいのかも?
    内側のガラスの、くしゃりとしわの寄ったような表情がいい。
    そしてたっぷりしている厚みは、ますます氷のような佇まい。
    涼しげで、同時に温もりも。



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    小鉢

    いつでも使う森谷さんのうつわは小鉢だ、自分にとっては。
    少なくとも二日に一度は手に取る。
    形がごくごくシンプルなのだ。
    サイズも手頃でちょうどいい。
    おかず担当の時もあればデザート担当になってくれることもある。
    曖昧だったり中途半端なのかというと決してそうではない。
    普遍的に使い良いサイズ感とフォルムというのは絶対にある。
    キルンワークのガラスの独特の雰囲気ばかりが目立つけれど、小鉢は普遍的な姿かたちを持っている。
    正真正銘のオールラウンダーという称号を与えたいと、私の中ではそれくらいの気持ちでいつも付き合っている。



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    長方深皿

    長方形の皿は並べやすい。
    何かを並べるためにもってこいの形だ。
    上から俯瞰すると、箱をイメージさせるからかもしれない。
    箱の中にきれいに並べるという行動は、それこそ誰もが子どもの頃から親しんでいることだからかもしれない。
    右から左、左から右。
    ランダムに並べても、きれいに等間隔で並べても、良い見映えで収まる。
    この面積の四角い枠の中に沿って、ただ並べるだけ。
    それだけで本当に整う。
    困ったら長方形と、いつも呪文のように唱えている。



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    葉皿
     


    葉っぱのように。
    丸い葉っぱは睡蓮やツワブキなどいろんな種類がある。
    葉、という名づけられていることで、イメージが広がっていく。
    ランダムでふわふわひらひらとしている輪郭。
    葉が風にでも揺れているのだろうかと想像する。
    少し丸まって形を留めている端っこは、水滴が乗っているようにも見える。
    薄いガラス片を並べることによって、薄くて軽やかさを感じさせる葉皿というガラスが生まれた。
    風に葉が揺れるようなその姿は見事に一枚一枚違う。
    選ぶのを楽しくさせる。



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    楕円皿

    楕円形のボートが一艘浮かんでいるようだ。
    ぷかりと静かに水面をたゆたう。
    ふだんの平和な料理、ある日の美しいご馳走、おいしいものをのせるためのガラスのボート。
    透明感のあるものや、焼いた時にちょっと白濁したような佇まいのものといろいろだ。
    欠片状のガラスを敷いて板ガラスを作り、石膏の型にそれを載せ、型に落とし込んで焼いている。
    段ができ、リムが現れる。
    それは本当に一艘のボートのようで、いろいろなものを載せるのに美しい舞台。
    楕円形も実は長方形の仲間。
    だから難しいテクニックなんて知らなくても、ささっと並べるだけでバランスよい盛りつけが出来上がる。
    (写真はMサイズ。Sサイズもあります)



    (了)

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