読み物

col tempo土居祥子さんと三温窯さん ②

5年越しのコインケース

5年越しのコインケース


今回の展覧会がいつもとはちょっと違う形になったきっかけは、土居さんと三温窯の佐藤幸穂さんとのつながりから。


秋田県五城目町の三温窯さんのもとを取材で訪れた際、まずはという口ぶりで、佐藤さんが土居さんとの出会いを訥々と話してくださったのが印象的でした。

標準語とほぼ近い口調に、時折ほんの少しだけ混じる秋田弁と思われるイントネーションもまた優しくて。
出会いとご縁に感謝し心から向き合ってくださっている姿勢に、誠実であたたかな佐藤さんの人柄を感じました。

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佐藤:実は土居さんを知ったのは、2019年の「工房からの風」での同期出展より前なんです。前年の2018年に行われた埼玉県のギャラリーさんでのグループ展に、僕も土居さんも出展していたんです。その会場で土居さんのコインケースを初めて見ました。このコインケース、すごくいいなと思って。 財布は持ってるけど、小銭入れは持ってないしなって。ご本人にはその場では会えなかったので次の年だったらもしかしたら会えるかもしれないからまた次にしようと買わずに終わったんです。

その翌年。応募した2019年度の「工房からの風」に審査が通ると、出展者の中に土居さんの名前もあって。ただ事前の出展者が集まるミーティングでは、誰が土居さんかわからなくて。コインケースは見て知っていたんですけど、ご本人には会ったことがなかったから。


何回かあったミーティングのタイミングもそのまま過ぎていってしまい「工房からの風」当日を迎えたんですけど、当日は当日でものすごい忙しさ。終わったら見に行こうと思っていたら気がつくともう終わりの時間を迎えて。撤収作業に追われ、結局見に行けず。


コロナ禍に入りしばらくは野外イベントの機会もなくなりましたが、去年(2023年)のクラフトフェアまつもとでお互い出展することを知って。ようやく再会できました。土居さんのお顔をちゃんと認識できたのは初めてだったんですけどね。

そこでずっとほしかったコインケースも買えました。色、すごい迷って。ひとつひとつ刷毛で色を着けるっていうので、そのムラの加減でみんな色の感じが違うのもすごくいいなって。あとは使っていって雰囲気が良くなっていくのがまたいいなあと思いました。

それがこれです。毎日身につけてます。ちょっと雑に扱っているかもしれないですね。もっと丁寧に扱ってあげたほうがいい感じに育つのかな。

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話しながら、5年越しに手にしたコインケースを大事そうに撫でて手の中に収めていたのがまたいいなあと思ったのでした。
これからますます佐藤さんの手もとや日々に溶け込んでいって、ふさわしい姿へと育っていくのでしょう。

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