2021.03.04 Thursday

読み物

With a warm feelings ⑥

  • 皆で燃やす火とあたたかさ、たやすことなく とりもと硝子店 鳥本雄介さん、由弥さん / 前篇

    皆で燃やす火とあたたかさ、たやすことなく とりもと硝子店 鳥本雄介さん、由弥さん / 前篇


    “チームでやると、その火がね、使える火が多くなるんです”

    とりもと硝子店さんは、ガラス作家の荒川尚也さんの工房「晴耕社ガラス工房」で長くスタッフとして働いていた鳥本雄介さん・由弥さんご夫婦が営んでいます。夫婦であり、良き制作パートナーでもあるお二人。つい先日三人目のお子さんが産まれたばかり。上のお二人のお子さんもまだまだ甘えたい盛り。電話インタビューを行った際は電話越しにお子さんたちの笑い、泣き、時に叫ぶ声も聞こえてきて実に楽しく微笑ましい時間でした。主に雄介さんが話してくださり、お子さんを見ながら時折由弥さんもお話してくださるスタイルでのインタビューとなりました。

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    ○個人ではなくとりもと硝子店、というかたちで活動することについて

    雄介
    「一人じゃたぶんもうすでにここまで来れてないと思うんでね。このスピードでたぶん来れてないので、やっぱりこの人たち(家族みんなの)のサポート、応援がね。」

    由弥
    「あなた(雄介さん)と私で出来ることは全然違うけど、それは枝葉なことであって、目指していく方法はズレてないから迷わないみたいな、船の航海でいえば…そんな感じやったんな。私の品物を、あなたが作ることに対して私はまったく疑問がなかったやん?それであなたが作ることで逆にすごく良くなったなって思うことのほうが多かったし、今はそのタイミングじゃないって寝かせてる作品も多いけど、それはそれでね。そこからのスタートだなって。」

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    雄介
    「荒川(尚也さん。晴耕社時代のこと)さんのとこで、チームで作るという仕事があって。スタッフだけで。それが僕の中で楽しかったんですよ。そもそもガラスっていうのが、荒川さんの教えでもあるんですけど『一人でやったら無駄な火が燃えすぎるんです』っていう。で、チームでやると、その火がね、使える火が多くなるんです。同じだけ点けてても品物に変えることができる。ガラスの場合は寝てても起きてても火が燃えているので、火が点いてる限りは一つでも物を作ったほうがいいんです。

    一人で5時間作ってたとえば20個作れましたっていう時と、二人とか三人で5時間やって40個や50個できましたって時にも燃えてる火は同じなんです。出来るだけ無駄な火は燃やさないっていうのはとても大事なことなんで。そういうのも合わさって、そもそも一人でやるっていう発想を良しとしていなかった部分がありますね。とりもと硝子店というスタンスにして、一人でやってんじゃないぞという形にして良かったなとすでに思っています。一人の名前を打ち出したいなとは全然思ってない。

    サインもね、責任のために(作品の裏に)サインを入れてるところがあって。「誰が作ったんやこれ?」と責任を問われた時に、サインがあったほうがいいねと。うちで作ったんですと(誇るような)いうサインじゃなく、何か問題があったら言ってくださいね、という。
    だから詠み人知らずでいいんですよ。だけどみんな知ってるという。誰が作ったかわかんないけどこのコップ俺も持ってる、私も持ってるとか、そういうとこに行けたら嬉しいなという。ニューノーマル。
    あと、もともとは由弥さんが作ってたやつって渡邊さん、わかるでしょ?チリリとか波紋の花器とか、今回出してないけど游水の鉢とか。あれは由弥さんの。名前がね詩的なのは由弥さんです。うちのヒット商品は由弥さんが作ったやつが多いね。」


    「昔作ったやつは私はもう作らんやろなっていうのはあって。自分は吹いていた(※過去形なのは由弥さんは現在育休中でしばらく吹きからは遠ざかっているためと思われる)から思うけど、ガラスが選んだ人がいるなっていう。融けたガラスが吹く人を選んでいる感じがする時があって、個人的な私の見方なんやけど、うまいへたじゃなくて、なんかこう融けたガラスと仲良く仕事するのがうまい人って見てて音楽的っていうか、お互い無理がないっていうか。見てたらそういうのがあって。私はけっこう逆にガシガシしがみついてるなあという感じが自分の中にあって。向いてるか向いてないかで言うたら向いてへんのやろうけどでもやりたい!みたいな。培ってきたもんもあるし、すごく吹きガラス愛してるから。今は自分のできる仕事をするし、また二年後くらいには吹きもまた始めたいと思うのでそれを楽しみにしてます。」

    雄介
    「あとね、ちっちゃいコップだとかはね、このちっちゃい人(鳥本家のお子さんたち)たちが使うかどうかっていうのを、ちゃんと正解かどうかをこの人らは判断するんですね。そういう大事な役。残酷な判定が下ります。がんばってるからとか関係ないんでね(笑)。」


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    ○これからガラスを通じてやりたいことについて

    雄介
    「今、灯油使ってるんですけど、天ぷら油の廃油を燃料に入れていこうと。しないといけないなと思ってること。ちゃんとクリアしていかないと。あとは一緒に働く人と出会えたらいいなと。自分らだけでは辿り着けないところに行けるでしょう。そうしたらきっと、さっきの火を燃やさないとってところにも繋がるんですよ。

    (※最近とりもとさんは、お客様のもとで割れてしまったとりもと硝子店作品があったら取扱店に持ち込んで頂き回収し、融かして再利用するという試みを始めています)
    割れたのを回収させてもらうことでいいことは、いっぺんガラス化したものを融かすほうが温度低くても融けるんですよ。調合した原料のほうが高温で焚かないとガラス化しないんですよ。それだったらちょっとでも回収してゴミも減るっていうのと、悪いことはないなと。持ってきてくれる人も「これはゴミじゃないんだな」と思える。そういう活動をしているってことをまず知ってもらうのが大事かな。
    あまりガラスのことをご存知じゃない方でも『え、これ割れてもまた融かせるの?』と知ってもらうことが増えたらなあと。」

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