読み物
井上茂 風に吹かれて ③

井上茂さんのやきものを知る 豆知識
井上茂さんのやきものを見る上で、今までよく出てきたキーワードを少しまとめてみました。用語解説というほどの大したものではなく、あくまでも百職的見地から綴ってみた読み物。
少し覗いてみることで、選び方や使い方が今までより少しでも楽しくなりますように。
陶器(とうき)
土器を主に作っていた時代を経て、日本では平安時代頃に始まったとされている。吸水性の高い粘土質の土を原料とする。成形後、およそ1000度~1300度で焼成される。釉薬を施すものと、無釉で焼き締めるものがある。
窯変(ようへん)
焼成時に、炎の酸素含有量やや釉薬に含まれる物質などの化学変化で、予想だにしない美しさや面白い色や表情に変化すること。「火変わり」と呼ぶことも。
景色(けしき)
窯変によって現れる、主にやきものの色や模様の様子を指します。
貫入(かんにゅう)
釉薬の表面に入ったひび割れの模様のこと。素地と釉薬の収縮率の違いから生まれる。陶器の温度が上昇し、下がる際に起きる現象のため、料理で使用するうちに貫入が増えることも。
見込(みこみ)
碗状のうつわの内側のこと。内側全体を指す場合と、内側の正面または中央の底面を指す場合もある。
常滑(とこなめ)
井上茂さんがうつわ作りを習った土地。日本における中世最大のやきものの産地。知多半島には500以上の古窯跡が発見されておりいかにこの地域でやきもの生産が盛んだったかがわかる。常滑は庶民向けの量産品が多かった。手間を省くために、常滑では釉薬を使わない焼締が行われ、古くから穴窯(穴を掘っただけの簡素な窯)で焼き上げる。そのため燃料の藁などが多く器に降りかかり、自然な釉薬となった。現在は朱泥の急須が多く作られている。
長石(ちょうせき)
素地や釉薬に用いる鉱物。比較的低い温度でしっかり焼き締め陶磁器の表面をガラス質で被覆する働きがあり、釉薬の大切な原料のひとつ。
粉引(こひき)
茶やグレーなどの色のついた粘土(赤土など)で作った本体の素地に、白い土(それを白化粧と呼んだり化粧掛けをするなどという)を塗り、透明な釉薬をかけ、白く仕上げた焼物をさす。つくり手それぞれが考えた粉引の配合があり、数日寝かせてから水を混ぜ調整し化粧土をつくる。
灰釉(はいゆう)
かいゆう、はいぐすりとも言う。釉薬の一種で植物を燃やした灰を水に溶かし、灰汁抜きし、施釉する。植物の種類によって表情、発色も様々。松灰釉、楢灰釉、栗灰釉、橡灰釉、林檎灰釉、藁灰釉、土灰(雑木の灰釉。混合されているので成分が一定しない)などのほか、つくり手の身近にある植物で独自の灰釉を作ることも少なくない。
刷毛目(はけめ)
化粧土(白泥など)を刷毛などで器の表面に塗り付け、刷毛の跡を模様する技法。
本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)
桃山時代から江戸時代前期に活躍した総合芸術家。家業は刀剣鑑定や研磨を行っていたが、それよりも書・陶芸・漆芸・能楽・茶の湯・作庭など様々な分野に携わり、優れた功績を残し、後世の日本文化に大きな影響を与えた。
川喜田半泥子(かわきた はんでいし)
明治初期に生まれ実業家として活躍する一方、陶芸は趣味として嗜んでおり50歳過ぎてから本格的に作陶するようになった。陶芸界で「東の魯山人、西の半泥子」「昭和の光悦」と謳われた異才。