読み物

渡邊文矢 つながり/循環 ④

工房にて

工房にて


お住まいのほうでお話を聞かせて頂いた後、次は工房スペースにもお邪魔させてもらった。
住居と同じ敷地内にある、母屋よりはもう少しちいさめの古い建物を改造した場所。
彫刻刀(ノミ)、そのほか手道具や電動工具。見える場所にあるだけでも彫刻刀(ノミ)はかなりの数。お聞きすると仕舞ってあるものを含めると彫刻のための刃物類は300本以上はあるということだった。刃の幅、厚み、角度など、すべてが微妙に異なり、それを使い分ける。必要なサイズや仕様のものはもうほとんど揃っているが、それでもいまだに少し買い足すこともあるという。
彫刻作品づくりと並行し菓子型の制作もされており、作業机の上には作りかけのものがあった。精緻な仕事ぶりだった。

工房にて


渡邊さんの趣味が集められた窓際の棚。鉱物、動物の小さな骨片、貝殻、実験中だという赤銅色の金属の珠など。
収集物たちが硝子瓶の中できらめいていた。
最近は川原に赴いた際に、これはという砂岩の石を拾ってきて、球体をつくる遊びを極めているようだった。仕事の合間の思い立った時に、金槌を手にし、少しずつ少しずつ石の角を叩き、削り取っては、球体に近づけていく。一度やり始めたら、時間を忘れてどこまでもやれそうで、どこで完成と見極めるか。泥団子のもうひと段階上の遊び、と渡邊さんは笑っていたけれど、これはなかなか終わりの見えない、どこまでも行ける遊びかもしれない。

おみやげにと、球体をひとつプレゼントしてもらうことに。幾つかあった中から大きいものを選ぶ。球体好きだけにずっと触っていられる。
触れながら、木彫の作品制作もいったいどこで終わりを決めるのかという疑問が浮かんだ。
終わりのない面白さを楽しめるということ。
今度またお話を聞いてみよう。


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──1日のリズムはいつもだいたいどんな感じですか?

渡邊:9時くらいから仕事し始めて。午前中からちょっと2時ぐらいまでは作品を作って。そこから菓子型をやって。夕飯食べた後もちょっと菓子型をやって終わり。

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──リズムが決まっている感じですね。夕飯の後にちょっとだけ仕事して終わり、でまた絵日記を書いたりとかできる時間もあるっていうのはいいですね。近くまでみんなでお散歩行ったりとかするとかは?

奥さま:いやー、渡邊がもう一人で散歩に行く感じですね。

渡邊:誘うんだけど、あんまり行くという返事は…。まあ僕も一人でいろいろプラプラするのは好きなので。

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──この辺のお気に入りスポットは?


渡邊:川の方に歩いていって、それで最後川をチラッと見てかな。たまに川に降りてこうやって石を拾って。

──見つくろっているわけですね。

渡邊:川沿いで金槌持って。ちょっと怪しい人になってしまうから、こそこそ川に降りて。こんな重たいでっかいカバンを持って帰ってくる。

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──どちらにせよ目立ちそうですね。

渡邊:目立っていると思いますけど、そもそも皆あんまり歩いてないんで。さほど…いや余計に目立っているかもしれないけど。

──ご高齢の方が多い地域?

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渡邊:そうです。家の中にいらっしゃる方が多いけど意外と皆さん近所の様子を見てるんで。

奥さま:すでに噂されてるかもしれない。

渡邊:ちょっと学術研究してる学者さんみたいにそれっぽくして怪しくないようにさりげなく見てます。本当は熱中して見たいんですけど、品良くやっています。


(了)



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渡邊 文矢(わたなべ ふみや)略歴
現在、岐阜県在住
1985 東京都町田市生まれ 神奈川・岩手にて小中高を過ごす
2005 京都伝統工芸大学校  木彫刻科 卒業
2007 井波彫刻伝統工芸師 井口琇月氏に師事 職人仕事の合間に自分の作品を作り始める
2011 年期明け 独立
2020 Vima House維摩舎|中島GLAb(台湾) 個展
2022 san galerie|中島GLAb(台湾)  個展
2023 小器藝廊+g (台湾) 個展、ギャラリー上がり屋敷(東京) 個展、cut&paste select shop|中島GLAb(台湾) 個展
2024 Hase (名古屋) 個展、msb gallery (東京)  個展
2025 Ippuku林森40|中島GLAb(台湾)個展「HOME」、Galerie Satellite|ギャラリー上がり屋敷(パリ) 個展

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