読み物
渡邊文矢 つながり/循環 ②
渡邊文矢さん インタビュー|自分自身であること、世界とつながること 《前篇》
井波彫刻の訓練校に進んで以降、富山で暮らしていた渡邊文矢さんが、ご結婚されて岐阜の一件家に移り住んだことはずっと前に年賀状を頂いて知っていたが、訪ねたのは今回が初めてだった。
ご夫婦と犬のもなちゃん、猫のむぎくん、この日は会えなかった黒猫ちゃん(お名前はまだ知らず)での暮らし。京町家とは比べ物にならないほどの間口の広い大きな古民家を、渡邊さんと奥さまのさゆみさんが協力しながら今もところどころリノベーションしているという。広々していて、随所にお二人の創意工夫が感じられ、風通しの良さ、空気の良さが印象的だった。
取材当日は大寒波で雪だったがよく日が差す明るい居間に通され、渡邊文矢さんと奥さまにお話を伺った。
これまでの展覧会でのお話や、制作の基にもなっているイラストを見せて頂いたり、奥さまの影響で始めて今では習慣になっているという絵日記のお話。そしてこの岐阜に引っ越してきてから新しく始まったことやこれまでとは変化した部分を尋ねてみたところ、日本に古くからある禅思想や民間信仰と自身の制作姿勢との関わりについて考えるようになったという、興味深い話題が出てきた。
(追記 *つい最近、新たに三匹目の猫が家族に加わったとのことでした)
日本人らしさってどこから来てるのかな

奥さま:たぶんこの地域の神社当番をやるようになったのも渡邊が考えるきっかけだったかもしれないですね。
渡邊:近くに木曽神社っていうのがあるんです。結構信心深い人たちで、この地域の人が。神社だとか祠だとか、結構たくさんあってそれを地域で神社当番っていうのが交代でやっていて。当番になったら1年間やります。
──1年間を通じてのお役目なんですね?
渡邊:そう。しょっちゅう回ってくるんですよ。住人も少ないから。いろんなお祓いみたいな催しが年に4回ぐらいあって。神主さんに来て頂いたお供え物してっていうのをやってて。
──そういえばさっき車に乗せて頂いていた時にもちらほらお地蔵様があったり。民間信仰や道祖神的なものが大切にされているんですね。
渡邊:うんうん。山のほうには山の神様で不動明王があったりとか。馬頭観音(馬と旅の旅の安全を守る仏として信仰が集まったという)っていうのもあります。結構ちょこちょこありますね。
──山が近いと山岳信仰などを身近に感じることもありそうですね。暮らしている風土や地域からの影響は感じたりしますか?
渡邊:もうちょっと自分の中で整理しないとあれですけど、日本人らしさとはというところに結構興味があります。日本人らしさってどこから来てるのかなといって浮かぶのは、近年(日本では)はほぼ無宗教だと言われていたりもするけど、どこかで皆、民間信仰(道祖神などの土着的な信仰)が根付いていて。仏教とか神道よりもっと前からあるものに影響を受け今の日本の文化っていうのに繋がっていってんだろうなって。
──アニミズムという自然界の山や川木や石などあらゆるものに魂(精霊)が宿るといった原始的な世界観が日本にはありますよね。民間信仰の根底になっている。
渡邊:それです。流れというか、その後にやって来た仏教とか神道とかそこら辺のことも知っていかないと。そこら辺と、それ以前からあった民間信仰がなぜちゃんと混ざり合ったのかなとか。それによって現代の僕がこの自然の中から感じ取るものはいったいどこから来たのかなとか。知らないうちに親からとかテレビとかいろんなところから影響を受けているのもあるけれど、辿っていくともとがあったはずだから。という意味で、文化的側面や民俗学的な点からの信仰が気になるなっていうのはありますよね。

──なるほど。となってくると木彫文化は民家の装飾だけではなく寺社彫刻とも関わりが深いですし、オリジンって言ったらいいのか、木彫というものの起源にもちょっと触れるようなお話かもしれませんね
渡邊:そうですね。日本の木彫も世界の彫刻文化も宗教と切り離せない。宗教的な儀式で使われるものから始まり、仏像とかもそうですが日本の彫刻っていったらやっぱり仏像とは切り離せない。人間はそもそも仏像や彫刻に意味を見出して、そこに自分の心を映すっていう部分がありますし。自分がやっていることと宗教についても知っていきたいというか、興味があります。
→→→後篇に続く

渡邊 文矢(わたなべ ふみや)略歴
現在、岐阜県在住
1985 東京都町田市生まれ 神奈川・岩手にて小中高を過ごす
2005 京都伝統工芸大学校 木彫刻科 卒業
2007 井波彫刻伝統工芸師 井口琇月氏に師事 職人仕事の合間に自分の作品を作り始める
2011 年期明け 独立
2020 Vima House維摩舎|中島GLAb(台湾) 個展
2022 san galerie|中島GLAb(台湾) 個展
2023 小器藝廊+g (台湾) 個展、ギャラリー上がり屋敷(東京) 個展、cut&paste select shop|中島GLAb(台湾) 個展
2024 Hase (名古屋) 個展、msb gallery (東京) 個展
2025 Ippuku林森40|中島GLAb(台湾)個展「HOME」、Galerie Satellite|ギャラリー上がり屋敷(パリ) 個展