読み物
小野陽介 Polaris ②
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渡りを行う小鳥の中には、夜明けに見知らぬ土地に着くと、
新たな土地である石岡に移り住んだ小野陽介さんも、
そして実際に手にした近辺の土。
鉄分を含んだその土を使い、 青緑色の釉薬を作り出し試行錯誤を続けている。
いや、不動ではないというのは、やや語弊があるかもしれない。
自転している地球の歳差運動により天の北極が移動するため、 北極星の役割を果たす星は、徐々に徐々に角度を変え、 やがてほかの星と役割を交代していくのだ。
およそ25800年で元の星に戻り、これを繰り返す。
現在の北極星であるこぐま座α星(Polaris) は西暦2100年頃に天の北極に最接近し、 西暦4000年頃にはケフェウス座γ星(Errai)が、 新たな北極星になるという。
小野さんの代名詞として挙げる人も多いかもしれないのがコバルト 釉の青いうつわ。
新しい場所に移り住み、窯が変わり、焼成条件も大きく変化。
色合いや釉調にも以前とは異なる佇まいを小野さんは今感じており 、新たなコバルト釉への変化と模索の時を迎えているという。
何事にも変化や変遷はつきものだ。
円環のように移り変わりゆく中では流動するからこそ生み出される 豊かさもある。
決して不安や怖さだけではない。