読み物

col tempo土居祥子さんと三温窯さん ⑤

自然の巡りを感じること

自然の巡りを感じること


col tempo土居祥子さんがくださるメールにはいつも、季節ごとの風景や流れる時間に思いを馳せる文言が散りばめられており、それがとても心地よい気持ちにさせてくれます。
そこで、周囲の自然、季節や日々の移ろい等に耳を傾けることが制作のよりどころになることはありますか、と訊ねてみました。するとたくさんの美しいお写真とともに庭や身近な自然との触れ合いをあげてくださいました。
なんでもない毎日のひとつの瞬間も、目を凝らすと心動かされるものがたくさんあります。
日々変わる空や、街を流れる川の水面の表情、差し込んできた陽射しが今日は特別澄んでいるなとか。
愛おしむように過ごす庭での時間は、作品にも知らず知らずのうちに良い影響を与えているのかもしれません。

※仕事部屋の窓際写真を除き、このページの植物や庭に関するお写真は土居さんからお借りしたものになります

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土居:制作とともにある日々の中で、庭や身近な自然がもたらしてくれる音や香りや景色を、心のよりどころにしているような気がしています。
お昼ご飯は庭や軒下で食べることも多く、制作の合間のちょっとした気晴らしに庭に出て植物たちを観察するのも好きです。
窓を全開にして作業できるこの時期は、窓からはいってくる風の心地よさ、実をついばむ小鳥たちのさえずりには耳を傾け、刻々と変わる空模様に目を奪われてしまいます。

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この夏は、空に浮かぶ雲がおもしろいなぁと、よく眺めていました。

この夏から主な制作場所がリビングから2階の部屋になって、小窓からよく空の景色を眺めるようになったからだと思います。
目の前に広がる田んぼでは稲の収穫が終わって、ずいぶんとさっぱりとした風景になったなぁと季節の巡りを感じ、慌てて家の庭の草むしりにとりかかって。土と草の匂いに包まれながら草を引き、枝葉を整えて、自分の手の届く庭でさえ整えることはままならないけれど、手を入れることで、関わることで、またひとつ季節を重ねて、次の季節のことを思う。
そして、自然が生み出す美しさには敵わないなぁと、いつも思うのです。

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庭の紫陽花が好きで、ドライフラワーにして色が抜けていく様がとても興味深くて。青やピンクの花の色が抜け、緑になり、最後は茶色へと変化してゆく。緑や青で染めた革は日焼けなどの要因で退色しやすく、もとの革の色の茶色が混じるように浮き出てくるのですが、これも自然のことなのだなぁと思ったり。

庭で好きな場所は、下屋下とウッドデッキ。家の中と外の庭をつないでくれている場所です。

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ここで染色などの作業をしたり、お昼ご飯を食べたり、洗濯物やドライフラワーにするものを干したり。
庭のお気に入りスポットは、季節によって変わるなぁと写真を眺めていて思いました。

我が家の庭が一番華やぐ、春。ムスカリたちがはじめに咲き、そこからミモザ、チューリップ、モッコウバラ、野ばら、と続いていきます。

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その後は大好きな紫陽花たちが色形さまざまに咲き、夏は雑草生い茂る緑の中に家庭菜園のプチトマトの赤が映えます。

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秋はもみじの紅葉が夕暮れに美しく、冬はたまに降る雪の雪化粧が新鮮な美しさを見せてくれます。

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自然との関りは、今はまだ明らかに作品の形として活かせているわけではないのですが、日々の暮らしの中で大切にしていたい感覚で、自然と関わり、自然の巡りを感じることで心に響きわたるものが、形や色を生み出すことにもよい影響を与えてくれているなと感じています。

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col tempo 土居祥子(どいしょうこ)略歴

1985年生まれ 地元の普通高校、大学を卒業
2008年 百貨店に入社
2014年 フィレンツェへ短期留学
鞄職人養成学校「scuola del cuoio」にてバッグ作りの基礎を学びながら、伝統工芸品を作る工房「il Bussetto」にて修行
2018年 col tempoとして制作活動を始める

《col tempo はイタリア語で「時と共に」という意味
【時と共に 変わっていく、育っていく。 そんな、ずっと使い続けたい 革のもの】
をコンセプトに、フィレンツェの伝統技法を用いた縫い目のない革小物や革を纏うようなシンプルなバッグを制作》

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