読み物

春日静座 ①

穀雨の季節に

穀雨の季節に


2021年以来、久しぶりに出展してくださる境道一さんと知子さん。


この数年の間に、お子さんたちの手が離れ、仕事場に居を移されたとお聞きしています。
まだこの文章を書いている時点では工房にはお伺いできていませんが、がらりとすべてが一変したのではなくとも、見えづらい根っこのようなところでは新しい何かが徐々に芽吹いて、作陶にも作用されているのではないかと思っています。

展覧会は穀雨の季節。
花散らしの雨から、草木を潤し田畑に染み込む雨。
春の雨は、自然や作物にとっては恵みの雨。
冬を忍んだそのご褒美の雨。
たくさんの生命を育み、その背中を押します。

成長に目を見張る一方、夏へと入れ替わっていく端境期で、新しい暮らしや時間が始まり、変化の波でふと草臥れることもあるでしょう。

雨を聴きながら、静かな時間を作る。
こころとからだに、気持ちよい風を通す。
咲き始める牡丹を愛で、伸びてきたよもぎの若葉で拵えた草餅を新茶で楽しむ。
ささやかなご褒美とおもてなしを〈私〉にも。
忙しい時ほど、自分のことも大切に。

本展のテーマは、自分への初夏のご褒美とおもてなしとしました。
皆さま、ぜひ楽しみにお越しくださいませ。

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