読み物

Carpe diem ⑤

はしもとさちえさんに訊く 後篇

はしもとさちえさんに訊く 後篇


岡さんとはしもとさんによる2017年の10月の終わりに開始した二人展〈暮れる秋、近づく冬〉。
当時のフライヤーに寄せた文章の中の一節ではこんなことを書いていました。

「今回は女性ふたりの展覧会です。陶芸のはしもとさちえさんも、竹の岡悠さんも、最初は百職のお店に作品を持ってきてくださったことがきっかけでお付き合いが始まりました。またはしもとさんも岡さんも、それぞれ一児と二児のお母さんという横顔をお持ちです。陶と竹で素材は違いますが、ともにその作品の中には明るいのびやかさやもの柔らかさを宿しているように感じます」
あれから5年半が経過し、当然のようにお二人にも様々な変化があった一方、あの頃と変わっていない点も。それは、お二人ともものづくりだけに注力するのではなく、一人の家庭人として過ごし、楽しみ、その日その日を生活することもとても大切にしていることでした。
その日を摘む、という意味の〈Carpe diem〉という言葉を今回の展覧会ではタイトルにしました。
お二人には今回、制作について、そして少しだけ日常に触れる《5つの質問》をさせて頂きました。
そこから、岡さんもはしもとさんの素顔…その日その日を摘み、人としての年輪が重なり、作るものにも反映されて、今もなお少しずつ深化と進化を繰り返していることがゆっくりと読み解けてきたように感じました。


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――はしもとさんも岡さんと同様、家庭生活では家事やご家族との時間も大切にしている印象ですが、仕事、家族の時間ははっきり分けるタイプですか?時間の使い方のコツはありますか?

はしもと「えーと、私の場合は1階が工房、2階が住居になっているので、自然と下に降りれば仕事モード、2階に上がれば家庭モードに、、自然とスイッチが切り替わるみたいですね。背中辺りにスイッチが付いているのかもしれません(笑)。あとはもう息子が中学生なので、こどもに合わせるということが少なくなってきたように感じます。どちらかというと、私の場合は愛犬たちの夕方のお散歩時間を目安に仕事を切り替えるという作業を日々繰り返していると思います。夏だったら夕方遅い時刻に、冬だったらまだ陽のある夕方までの時間にお散歩に行こうと思っているので自然と季節に応じて仕事時間が変わっていますね」

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――制作している作品は食事用のものやお茶の時間のもの、インテリアなど多岐にわたっていますが、ご自身ではどのジャンルのものを作っている時が楽しいですか?

はしもと「うーん。ここ数年のブームでもあるプレート類ですかね。プレートを轆轤で挽くという作業自体に慣れすぎてしまったような感覚もありますが、特に最近はワイドリムかな。リム幅が広い分、今までみたいな鎬の入れ方では間に合わなくって、鎬幅も太くなったぶん、ひとつの羽の部分に何回も何回も彫り込んでいかないと完成しないんですよ。今まで以上に手間も時間もかかるんですけどね。そういうのも自分にとっては修行みたいな??感じでやってます」

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――手に取ってくださる方にとって、ご自身の作品はいったいどのような存在でありたいですか?

はしもと「年に1回、作るか作らないかのキャンドルスタンドを作ったんです。たぶん百職さんでの展示で出すのは初めてになるかと思いますが。作ってるときに、キャンドル文化って日本にはあんまり根付いてないなぁなんて思いながら作業していて。でも実際に灯してみると仄かな灯りに魅せられてしまったりしてね。心がほんのり温かくなるような。なんか自分自身も自分が作り出すものもそんな存在でありたいなぁなんて思いましたね」

(了)


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はしもと さちえ(はしもと さちえ) 略歴
大阪府生まれ、大阪育ち
2001 大阪産業大学大学院環境デザイン専攻修了
以降独学にて制作を開始
2006 枚方市にて工房設立
関西を中心に個展、グループ展など多数開催



番外編
最後は特別に、この春から中学生になったはしもとさんの息子さん(というプチ情報)と、はしもとさん自身が撮ってくださったさちえさんの制作の様子、工房と愛犬のシルちゃん、ドナちゃんのかわいらしい様子をご覧ください◎
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