読み物
ふつうの 少し先の 風景 ①
清清しい意思
序
中津箒のつくり手の吉田慎司さんが、昨年8月に「ふつうの研究」 というクラフト冊子を上梓された。 特に、最後の章の終わりの文章が、 ものづくりの上での清清しい意思表明と一種のささやかな祈りのよ う なものを感じて印象的だった。
中津箒のつくり手の吉田慎司さんが、昨年8月に「ふつうの研究」
『イメージの固定化された振り子は、必ず揺り戻しが返ってくる。 けれど、ニュートラルで、地域、歴史的 に無理のない、普遍的な視点や価値観を得られるのであれば、 それは時代や流行に踊らされることの無い、 芯のある価値観になるのではないか。(中略) 全てが歴史の中の誤差に過ぎないと、ニヒルに構える事は簡単 ですが、一度きりの限られた人生の中、できる限り揺るぎない、 変わらない、できればスパンの長い価値を 作り、そのような場所に立脚したい。 人の暮らしや生き方に光を照らす仕事がしたいと思います。 そして、 確かな手触りを頼りに進みながら「ふつう」 の少し先の景色をのぞいてみたいと思っています。』
―吉田慎司「ふつうの研究」より抜粋
「ふつう」
今、様々な状況や環境が変わり揺らぎ、
落ち着かない世の風に吹かれているからこそ、 手の中に収まるようなつつましやかなもの、腰を据え地に足 の着いた仕事、 自然との結びつきを感じさせる手仕事から受け取るものはきっと大 きい。 今まで語られてきた「ふつう」から歩みを進め、 ちょっと先にあるものもまた見えてくる気がする。
今回の展覧会は私が思う、身近な自然や地域、 小さな規模の中でしっかりと根を張りすくすくとご自身のものづくりの樹を育んでいかれている三人のつくり手の皆さんによる ものです。
今回の展覧会は私が思う、身近な自然や地域、