読み物

井上茂 こころの風景 ①

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素直で一途な心の風景

この三年のうちに、お店を知ってもらった方はもしかするとピンと来ないかもしれませんが、愛知県在住の陶芸家 井上茂さんの個展を三年ぶりに開催します。

井上さんといえば、原土を探求したり、釉薬や古陶を熱心に研究されることで知られ、それを原動力にしているイメージです。


一方で、その心や独特の感性も、井上さんの大きな力になっているように感じます。

今回の個展のご挨拶と今後のスケジュールをお送りすると、返事にはこう書いてありました。

物作りが段々と難しく感じるこの頃ではありますが喜怒哀楽がある生き方は幸せなことだと今の時代は特に感じます。
作為が無い物作りはあり得ない事かもしれませんが、花が綺麗な事は人に魅せる事では無いように素材のあり様が器に出たら良いと思うのです。
難しく考えずに、とにかく楽しみながら作ってます」

綴られていたのは澄んだ素直な言葉で、明鏡止水という言葉が脳裏に浮かんだのでした。

心が強かろうが弱かろうが、やりたいことがある、やってみたいことがある。
日々浮き沈みすることがあっても、一歩ずつ目指したいものに向かって足を踏み出しこつこつと手を動かし続ける心と姿勢があれば、時間はかかっても、何かに到達し、触れることはできるのではないかと感じさせてくれます。

つくり手の井上さんの、素直で一途な心の風景を映し出す器。
使う人の、日々の心の風景を映し出す器。

喜びにあふれる日の食卓、時に悲しみに沈む日の食卓でも、食が、器が、明日を迎える力になりますように。

新作のヒビ粉引のうつわ、関西では初めてというプレート皿定番の三島系のうつわに、個展ならではのお楽しみの特別な一点もののお品など、以前からご愛用頂いている方も、はじめましての方も、お楽しみ頂ける品揃えでお待ちしています。

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