読み物

Carpe diem ②

岡悠さんに訊く 前篇

岡悠さんに訊く 前篇


岡さんとはしもとさんによる2017年の10月の終わりに開始した二人展〈暮れる秋、近づく冬〉。

当時のフライヤーに寄せた文章の中の一節ではこんなことを書いていました。
「今回は女性ふたりの展覧会です。陶芸のはしもとさちえさんも、竹の岡悠さんも、最初は百職のお店に作品を持ってきてくださったことがきっかけでお付き合いが始まりました。またはしもとさんも岡さんも、それぞれ一児と二児のお母さんという横顔をお持ちです。陶と竹で素材は違いますが、ともにその作品の中には明るいのびやかさやもの柔らかさを宿しているように感じます」
あれから5年半が経過し、当然のようにお二人にも様々な変化があった一方、あの頃と変わっていない点も。それは、お二人ともものづくりだけに注力するのではなく、一人の家庭人として過ごし、楽しみ、その日その日を生活することもとても大切にしていることでした。
その日を摘む、という意味の〈Carpe diem〉という言葉を今回の展覧会ではタイトルにしました。
お二人には今回、制作について、そして少しだけ日常に触れる《5つの質問》をさせて頂きました。
そこから、岡さんもはしもとさんの素顔…その日その日を摘み、人としての年輪が重なり、作るものにも反映されて、今もなお少しずつ深化と進化を繰り返していることがゆっくりと読み解けてきたように感じました。


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この日岡さんがつけていたピアスは、長女である小学生の娘さんが前の日に貯めていたお小遣いでプレゼントしてくれたもの


――岡さんは竹工のどのあたりに魅力を感じて今の道に入りましたか?

岡「私は何かを〈編む・組む〉ということと〈自分の手で一からものを作る〉ということが小さなころから好きでした。編み物も祖母から教えてもらい好きでしたし、何よりも覚えているのは、(NHKの番組である)おしゃれ工房のテキストに載っていた広告を丸めて作るゴミ箱に一人で取り組んだことですね。チラシを細長い棒状に丸めて材料にし、それを菊底の様に編むものでした。小2くらいだったと思うのですが、自分でだれの手も借りずに何かを作り上げることにとても夢中になる経験をしました。結局それは紙くずになりゴミ箱が完成することはありませんでしたが、本を読んだときに感じた〈自分の手と何の変哲もない材料のみで形あるものが完成する(かもしれない。今ならあんな雑誌に載っているものを素人が作り上げるのは不可能と理解しますが)〉というのに感動したことが、今の道に入る最初のきっかけです」

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――ご自身の制作や作品の「土台」となっているものは? すぐに見つけることはできましたか?

岡「土台、ベースとは物理的なものをいうのか精神的なものを語るのかで変わってくると思うのですが、物理的な土台はこの健康な体です。当たり前すぎて読む気がしませんね、すみません。技術の基礎という意味だとしたら材料作り、竹割です。竹細工職人なら十中八九そう答えると渡邊さんも思っていることと思います。精神的なもの(そんな土台は私の中にしか存在しないのかもしれませんが)なら空想です。こんな竹細工があったらいいな、こんな風に使ったら素敵だなという妄想が私の制作意欲を実物にするのです。きっとものを作る人間ならみんなそうでしょうね」

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後篇へ続く→

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