読み物

小野陽介 Polaris ③

一問一答|小野陽介さん

一問一答|小野陽介さん

一問一答|“陶芸って芸術でもあるけど、科学的な面も結構ある”

工房を訪ねた時に焼成についての温度変化と時間推移のデータを記したノートを見せてくださいました。新しい工房には新しいガス窯があって、ひとつひとつの焼成、そしてそのデータを積み重ねていくことが財産でもあるのだろうなあと感じました。
炎による芸術表現に大切なのが、釉薬調合や炎との化学反応を考えるという過程。焼成結果は偶然の結びつきによって生まれるよるものである一方で、全部が全部偶然にゆだねているわけではありません。どんなものが作りたいか、作り手自身の狙いがあり、それに向けて工程を積み重ね、予測、遂行し、最後は窯を開けた時に、自らの狙いが果たしてうまく行っているのか結果がわかるのです。小野さんがよく使う結晶釉も傾向と対策がかなり必要とされるということを知ると、質問2の答えには、日頃の様々な工夫や苦労もどことなく漂うものでなんだか感慨深くなります。


質問1
自身の制作をする上で、もしくは日々暮らす中で、大事にしている本(映画が映像でも)はありますか?もしくは仕事をしている時によくかける音楽などはありますか?

小野 ―「音楽は仕事している時に良く聴きます。幅広く聴きますが、J-POPからアンビエント音楽とか、最近はジャズをかじっています。本は特に大事にしているといったのはないですが…アート系や文化系の読んだり。最近は読む暇なく積読状態です」



質問2
座右の銘や好きな言葉、大切にしている言葉があったら教えてください。

小野 ―「(スティーブ)ジョブズが言ってたことで、『芸術は直感が大事で、科学は理論が大事だと思われてるけど、実は逆で、芸術には理論の積み重ねが大切で、逆に科学には直感的な閃きが大切』的な事を言ってたと思います。陶芸って芸術でもあるけど、科学的な面も結構あるので、たまに頭をよぎります笑」

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質問3 気に入っている作品やシリーズ、釉薬など教えてください。

小野 ―「気にいっているのは、白釉ですかね。ただ、満足はしておらず、もっと良くしたいです。コバルト釉も新しくリニューアルしたいです」



質問4
制作の上で大事にしていること、目指しているものを教えてください。

小野 ―「一つは釉調の美しさですかね。変化に富んだ釉調が好きなので、そこを突き詰めていきたいのと、あとはより自然な感じに近づけたいというのはあります。
もう一つは佇まいの美しさです。物として存在感あるものを目指したいです。あと割と意識していることは、重心のあり方です。使いやすい重心も意識はしていますが、重心の面白さ?みたいなのも意識していると思います。重心が上の方にあったり、下の方にあったりで持った時の印象がだいぶ変わるので、それも一つの楽しみ方として捉えてもらえればいいなと。手の中でずっと転がしたくなるみたいなのが理想です」


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質問5
百職では3年ぶりの個展になります。その頃から変わったと感じる点、変わっていないと感じる点を教えてください。

小野 ―「いくつかありますが、引っ越して親から離れたことが大きいと思います。それによって薪の窯からガスに変わったことが大きいです。やはり薪窯の時のような力強さは失われたと思います。逆に型をより洗練させるよう意識したり、釉薬のテストにより力を入れるようになりました。
あとは家庭を持った事で、より生活が身近になったと思います。妻の意見も聞きつつ、器作りの参考にしたりしています。以前より、より使い手を意識するよいになりました。
ただ、大きく作風は変わっていないかと思います。以前のように結晶釉を荒めの土にかけるのも変わってませんし、シンプルであろうとするのも以前のままです」


小野さんに仕事周りで好きな風景をお聞きすると「工房から見える、山並みが好きです」ということでした。
お写真は小野さんから頂きました。

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