読み物

Carpe diem ④

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はしもとさちえさんに訊く 前篇


岡さんとはしもとさんによる2017年の10月の終わりに開始した二人展〈暮れる秋、近づく冬〉。
当時のフライヤーに寄せた文章の中の一節ではこんなことを書いていました。

「今回は女性ふたりの展覧会です。陶芸のはしもとさちえさんも、竹の岡悠さんも、最初は百職のお店に作品を持ってきてくださったことがきっかけでお付き合いが始まりました。またはしもとさんも岡さんも、それぞれ一児と二児のお母さんという横顔をお持ちです。陶と竹で素材は違いますが、ともにその作品の中には明るいのびやかさやもの柔らかさを宿しているように感じます」
あれから5年半が経過し、当然のようにお二人にも様々な変化があった一方、あの頃と変わっていない点も。それは、お二人ともものづくりだけに注力するのではなく、一人の家庭人として過ごし、楽しみ、その日その日を生活することもとても大切にしていることでした。
その日を摘む、という意味の〈Carpe diem〉という言葉を今回の展覧会ではタイトルにしました。
お二人には今回、制作について、そして少しだけ日常に触れる《5つの質問》をさせて頂きました。
そこから、岡さんもはしもとさんの素顔…その日その日を摘み、人としての年輪が重なり、作るものにも反映されて、今もなお少しずつ深化と進化を繰り返していることがゆっくりと読み解けてきたように感じました。


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――はしもとさんは陶芸のどのあたりに魅力を感じて今の道に入りました?


はしもと「よく聞かれます。私の場合、最初から陶芸をしようと思って選んだ大学ではありませんでした。本当は建築の道を選んだんですよね。シビックデザインというか、公共空間のデザインみたいなところにざっくりですが憧れました。でも、実際に入学してみると違った…まぁ、相性が良くなかったんですね。図面を引いたりする授業もあれば、造形実習の授業もあったりで、私はこちらの方にグィ〜っと強く、惹き込まれていきました。とにかく手を動かして、その先に何かを創り上げるという作業が楽しくて。最終的に4回生の時に轆轤の実習があって、ああ、これやん〜って思って今に至るって、感じです。あとはひたすらにルーシー・リーに憧れました。溶接したり、織り機で織物したりの選択肢もあったんですけどねー。今は、というか、今も、自分の選択は間違ってなかったんだと信じています」

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――ご自身の制作や作品の「土台」となっているものはなんですか?それはすぐに見つけることはできましたか?

はしもと「ん〜、土台になっているかどうかはわかりませんが…答えになってなかったらすいません。私の場合はひととの出会いなのかな。ルーシー・リーに出会う前に、大学院時代に非常勤助手で教えに来て下さっていた或る先生がいました。この方に2年間いろんなことを教えてもらったんですよね。もちろん公私ともに。ものを視る視点、感じ方、これは陶芸に限らずファッション、音楽、美術であったり刺激を受けずにはいられませんでしたね。それからかな、作るものが変わったというか。大したものは作れていませんでしたけどね。その時のことが今でも自分のルーツになっているようなところはあります」

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後篇へ続く→

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