読み物

森谷和輝さんとガラスと ②

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淡くなるほどに濃く

森谷和輝さんのガラス作品。
大きく分けると二つの技法があり、二種類のガラスがある。

 

ひとつはバーナーワーク。
バーナーによって棒状のガラスを溶かしながら、成形していく。
使うのは「ホウケイ酸ガラス」という、理化学器具等にも使用される、透明度の高い耐熱性を持ったガラス。

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もうひとつはキルンワーク。

キルンは窯の意味。
低温(とはいっても800度前後)の窯で、型を用いてガラスを融かし、成形する。
使うのは「廃蛍光管リサイクルガラス」という、独特の淡い淡い青緑色が特徴的なガラス。
キルンワークは更に多くの技法が枝分かれしている。

中でもキャスト(キャスティングとも)と、スランプ(スランピングとも)という技法を森谷さんは多く用いる。

キャストは、型の中にかけら状のガラスを敷き詰め流れ融けることで成形する技法。
スランプは、予め作っておいた板状のガラスを型に置き、焼成すると型に沿って重力で流れ融けていくことを利用して成形する技法。

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先日、電話で森谷さんに話をうかがっていた。

その時にふとこんな言葉を聞かせてくれた。


「バーナーとキルンのガラスと。
二つが近づいていけばいいなと思ってます。


どっちのガラスを一緒に並べていても、自分が、自分とこでできたガラスってわかって見えるように。
ほら、最初の頃は
『なんか別々のガラスじゃん?』
『作る人二人いんの?』
とか言われちゃってたじゃないですか。


でもだんだんと近づいてきてる気がするので。
技法とか素材とかじゃなくて、もとになる、自分がこう作りたいものがちょっとわかるようになってきて。
それにもとづいて、こうどっちのガラスもやっているので。


ガラスなんて、コントロールできないっすから僕は。
そこから始まってるんで、面白いなと思ったところは。
学生(大学)の時かな?
全然こうなんかね流れてないんですけど石膏の中で。
流れてない感じがすごい面白くて。
流れてなくって、でも流れてないのが自然のものみたいな感じに見えたんですよね。
自分でこういう感じにしようと思ってやったけどそこにはガラスが届いてなかった。
で、そのとろっと流れる途中みたいなかたちが、なんか自分の意識とは違うかたちだった。
だからすごく自然なものって感じなんですよね。


自然なものに憧れているのかもしれないっすね。
感動するってなんかそういうもののことが多いから。


自分で作ってるけど、繰り返して作っていくと意識しないでも作れるようになってくる。
それでできたかたちは、自分のものっていうよりかはちょっとこう…自分が薄れていくじゃないですか?
キルンもですけど、バーナーはそういうのをもっと目指したいなと思ってますね。


ザインとかは普通でいいというか。
普通で使いやすいほうがいいから。
あんまり突飛なかたちとかはまあ自分は作れないから。
最小限のかたちのものを繰り返し作っていって、自分が薄れるようなものに近づけたほうがいいですよね。
無理してないのがいいっすよね」


バーナーのものたちと、キルンのものたち。
まったく異なるようでいてどちらのにも森谷さんが常に愉しみながら大事にしている「ガラスの動き」や「流れる様子」を見て取ることができる。

…ような気がする。

素材感や技法の違いなどを飛び越えたところに、確かに存在する気配。
自我とか自分の意識を手放していくことで、よりその人らしさの純度が濃くなっていく。

制作する上での思いや感覚、それは森谷さんがふだんを生きる中にもどこかにつながっている。
つながるその糸のような部分を新たに知ってもらうことで、森谷さんの作品を手に取ること、興味や愛着を覚える一歩やきっかけとなってくれたら幸いです。


森谷 和輝(もりや・かずき) 略歴
1983 東京都西多摩郡瑞穂町生まれ
2006 明星大学日本文化学部造形芸術学科ガラスコース 卒業
2006 (株)九つ井ガラス工房 勤務
2009 晴耕社ガラス工房 研修生
2011 福井県敦賀市にて制作を始める

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