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2021.07.30 Friday

読み物

森谷和輝 整音 ③

  • 森谷和輝さんロングインタビュー / 後篇

    森谷和輝さんロングインタビュー / 後篇
     展示会でだけのものを作ったりとかはこっちも楽しいし、お客様も特別感を楽しんでもらえるかな 

    昨年は変則的に十月に行いましたが今年は例年通りに戻って、森谷和輝さんの個展は恒例の七月に行います。
    森谷さんとご一緒するのも十一年目となりました。
    昨今では二年に一度くらいのペースでの展覧会が多いように感じますが、森谷さんとは毎年ベースでという刻みになっています。
    独特のテクスチャや色合いを持つキルンワークのガラス作品、薄手の耐熱ガラスで柔らかないびつさに愛嬌を感じさせるバーナー作品という、まったく異なる制作方法を言わば「二刀流」で行っており、その両方において、それぞれの目標ややりたいことを見出しながら、一年に一度の歩みを見せて頂いています。
    あっという間の一年ながらも、過ごす中ではやってみたいことや課題というのは尽きないようです。
    2021年の夏の足跡はいったいどんなもので、今いったい何を考えながら制作をされているのか。
    今回は電話インタビューにてお話を聞きました。
    森谷さんの謙虚なお人柄とさりげない中にも作ることへのますますの意欲など、森谷さん自身が撮影してくださった工房のお写真とともにお楽しみください。


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    大きい方のバーナー。森谷「もう少し大きなものが作りたくて手に入れました。ガラスにくびれをいれるためヘラ(古道具を改造)を付けています。いつも思いつきでやるので不恰好になります」



     見たいんですよね、バーナーでできるもの。自分がどんなもの作るのか

    ――今現在出来上がってる作品で自分が好きなものってなんですか?

    森谷「えっと、なんですかね、あれかなkouかな。意外と作ってますね」

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    花器「kou」



    ――kouのどんなところが好きですか?ものとして?作り方に面白さがあるとか?

    「なんか吹きガラスって感じですよね。シンプルに吹いて丸く膨らむっていう。特性があるじゃないですか。そういうのってキルンワークやってると作れない形なので。内側からこう力が加わってこう作れる形。バーナーをする時って、そういうキルンでできないようなことをバーナーでやりたいって思っていて。ガラス自体にすごいテクスチャーがあるわけじゃないんですけど、形として、うーん、バーナーワークのほうは形としての…うーん、なんていうんですか……(長考)」

    ――ふふふ、大丈夫です、すぐ言葉にまとめようとしなくていいですよ。

    「……その場のガラスが動いたみたいな形っていうのかな」

    ――ああ。今が含まれていますよね、確かに。今膨らませたという。全然キルンとは性質が違いますしね。やはり好きなんですねバーナーも。両方ね。

    「好きだからやってるんでしょうね。それぞれ違うからやるんでしょうね。でも難しいんですよ、ほんとに。どっちも一生できるくらいのことだと思うので。絞った方がいいと思ってた時もあるし。なんかもう好きだ嫌いだとかじゃなくて、もう自然にやってるだけなのかな。ま、見たいんですよね、バーナーでできるもの。自分がどんなもの作るのか。ただでもキルンだけでももっとやってみたいと思うから。まあまあそれはもうどっちもやったらいいかなって感じですよね」

    ――やりたいっていう内は、やれるなら、やれる環境があるなら、やりたいことをやったほうがいいんじゃないでしょうか。

    「いいんですかね。まあ好きなのかやっぱ。そう言ってしまえばそうか。楽しいんでしょうね。楽しいし、こんなんできたって見てもらいたいし、っていうのがあるんですよね。去年は割とバーナー作品少なかったんですけど、今年はちょっとね雰囲気変えたいので。頭の中のイメージはもう結構、バーナーのものが並んでるんですよ」

    ――もう脳内展示が始まってるんだ。

    「そう。これはもう誰の展示なのかくらいの。頭の中ではあるんですけど。作れるのか!」

    ――わからないけどやれるだけやって展示迎えたいですね。


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    キルンワーク 葉皿の制作。棚板に直接ガラス片を置くので離型のため石膏を塗っています。


    それが実は自分らしいのかな

    ――あと今出来てる中で気に入ってるものをあげてと言ったらkouをあげてくださったわけですが…

    「あ、そうか!まだここからねkouの形変えたバージョンみたいなのを作ろうって話してましたけど、そっちがおすすめなのかな?まだ出来てないけど(笑)あれもね苦戦してて(笑)コンポートみたいに広がってるやつ作りたいなと思ってたけどすごく難しくて今の感じだとうーん、って感じなんですね。で今ちょっと他の形で、ひょろっと長い、一輪挿しになってるみたいなのを出そうと思ってるので。これがいいかもしれない。これからできる予定の新しいものの中では」

    ――まだできてないから見えてない部分があるけれども(笑)

    「はい、そう!あと小さい花器って前あったんですけれども」

    ――懐かしいですね。

    「ありましたよね〜。初心に戻ってちょっと小さい花器を出したいなと思ってます。あ、でも前の小さい花器と同じやつじゃないんですよ。本当に言葉通りの、サイズがちっちゃめの、ちょっと差して、キッチンとかちょっとしたとこにちょんって置く用のやつを、もういっぱい出したいと思ってるんです(笑)」

    ――いっぱい出したい、ね(笑)頭の中ではね!

    「そう頭の中では(笑)なんで、はい!僕はそれが実は自分らしいのかなとそういうのは思ってました。最近なんか、ね?全然、うん…」

    ――そうですね、そういうのはなかったかな。

    「そうそう、ですよね?そういうのは作ってなかったなってやっぱり自分で思って。kouとかもどんどん技術に走っていくと複雑なもの作りたくなっちゃうし、そういうのもあるんだけど、ちょっと本当に作りたいというか欲しいというか好きな感じというのを、なんとなくこういろいろね、ごちゃごちゃガラスをくっつけてやったりもしてたんですね、なんか。最初はね。やったんですけど、ちょっと無理があるなあっていうのと、うーん。うまくいかないし、時間ばっかりとって。これどうなんだろ?って。出来たものが悪いってわけじゃないけど。我が強い感じのをいっぱい作っちゃって。そっち方向にいっちゃって。だからまだいくんですね、僕は。素直になったと思ったら自分の内側に行ってしまって、それでちょっと疲れてしまい。僕も好きだし、最初の頃の感じで作ってみようと思って。すっとやってみたやつがなんか良かったんですよね。『おっ、これ好きな感じのやつだ』と思って。本当にちっちゃいやつなんですけど。それでわかってきて。それをいっぱい作ろうと思ったんですけど…後が続かなくて…なんか(笑)」

    ――自然なことな気がします。楽しむというか遊ぶというスタンスで作るからできるものは、よし作ろうと思ってやると違う感じになるのは自然のなりゆきじゃないですか。

    「そうか、なんなんですかねー。それは出したいと思ってて。僕のおすすめはその辺です。まだ出来てないけど(笑)それが一番気に入ってるやつです。本当はそれなんで。あーやっと出た。
    でもやり過ぎちゃったやつも持っていこうかな」

    ――そういう作品も展覧会という意味ではあるといいですよ、きっと。

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    キルン 大きめ一基 小さめ二基を交互に使います。
    深さ68センチに6〜8段の棚を組みます。


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    ガラス片を敷き詰めた様子。葉皿は細かいガラス片を使います。



     『毎回どんなのが見れるんだ?』って。その部分っていいなと思います

    「あとこの間、剛さん(陶芸家の高木剛さん。森谷さんと同時期くらいに京都・百万遍の手づくり市に出展していた時代があって二人は昔からの顔なじみ)の展示のこと、渡邊さんリポストしてましたよね」

    ――印象に残ったのでしましたね。

    「ですよね。剛さんは『人気のものばっか出さずにいろいろ作ってちゃんと自分で選んで出しました』みたいに書いていたでしょ。あれはいいっすよね。引っ越して作り方も一新して窯も変わって。いいなあと思ってます」

    ――展覧会をやる心意気を感じましたね。自分でも楽しく、見る人にとっても楽しか、そういうふうに出来たらね。

    「いつも来るお客様も楽しいですよね。もちろん新しいお客様もだし。毎回『どんなのが見れるんだ?』って。わざわざ来たいと思わせるって大事っすよね。その部分っていいなと思います」

    ――新しいものを発表できて、それをお客様が見ることができる場って今は展覧会が主流ですね。

    「そうですよね。だから、自分でいいと思ったものをちゃんと選んで出すって、展示会をする意味でもあるような気がします。定番とか売れてるものも大事ですけど。定番と言ってもおんなじものというか、ちょっとずつ変えたりしているから違うんですけど毎回。ま、でとにかくやっぱりその展示会でだけのものを作ったりとかはこっちも楽しいし、お客様も特別感を楽しんでもらえるかなと」

    ――いいですよね。
     
    「僕もそういうふうにやっていきたいと思った」

    ――今回は音や場の雰囲気を大事にしながら、やっていきましょう。

    「あとbell(森谷さんの作品で風鈴形オブジェ)出したいんですけど前回は室内で展示したけど、今回ちょっとでもいいから外とかに吊るして、外でも鳴る感じにできますかね?」

    ――出来ますよ。あんまり風が強かったら引っ込める時もあるでしょうけど、いいですね、しましょう外に。

    「なんかこれからもっといろいろ音出すもの作りたいんですけどね。音のこと考えるのもいいなと思ってます」


    (了)



    森谷 和輝(もりや・かずき) 略歴
    1983 東京都西多摩郡瑞穂町生まれ
    2006 明星大学日本文化学部造形芸術学科ガラスコース 卒業
    2006 (株)九つ井ガラス工房 勤務
    2009 晴耕社ガラス工房 研修生
    2011 福井県敦賀市にて制作を始める

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