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土居祥子 つながり/循環 ①

作家紹介 土居祥子さんへの一問一答

作家紹介 土居祥子さんへの一問一答


土居祥子さんとはどんな作り手でいらっしゃるのか。
ご紹介のため、過去の記事を次にまとめました。
ぜひこの機会にご覧ください。

「土居祥子さん 2024年ご紹介記事」
想いを馳せつつ手を動かす https://tenonaru100.net/photo/album/1253553
日々の暮らしの中で欲しいと思うもの https://tenonaru100.net/photo/album/1253571
自然の巡りを感じること 
https://tenonaru100.net/photo/album/1254076


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通奏低音のように。

それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの全体に影響を与える。「もの自体」だけではなく、根源となるその作家自身の存在は欠かせない。それだけに作品のみならず出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いがいつもあります。
作家さん自身からの誠実な言葉と考えをお読み頂きながら、作品を紐解く手助けや愛着を深めていく入り口になれば幸いです。
今回百職では2回目の展覧会を開催してくださる土居さん。街と自然が心地よいバランスで溶け合う滋賀県守山の自宅兼工房で、季節の移ろいにとても細やかに心寄せながら制作されています。
ものづくりへの純粋なこころのともしびをいつも大切にしながら、現代の日常的な暮らしの視座と、イタリアのフィレンツェで学んだ古き良き職人魂を受け継ぐ熱い志と技術は、お会いするたびにキラキラと輝きを増しています。




質問1
はじめましての方に向けての、経歴とは違う自己紹介をお願いします

───琵琶湖の近くにある自宅の一室で革のものづくりをしています。旅先で出逢ったコインケースに心惹かれ、持ち帰って暮らしの中で使うたびにその秀逸な形や使い心地にどんどん魅了されてゆき、この技を知りたい、とフィレンツェへ短期留学をしたのが28歳の時でした。
フィレンツェでの出逢いや経験が今のものづくりと共にある暮らしにつながっていて、革という素材がもつ面白さや魅力を感じてもらえるような革のものづくりができたらと思っています。

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質問2
革を用いたものづくりを選んだ経緯、始めた頃に感じていたもの、そこから歳月を経て変化したこと、変わらない点をそれぞれお聞かせください

───前職は百貨店社員で、最初に配属された紳士革小物売り場で革製品を扱い革への知識を深めているうちに、どんどん革という素材の魅力にはまっていきました。でも自分がいいと思う経年変化豊かな植物タンニン鞣しの革で作られたバッグがその当時売り場にはなくて、自分で作ってみようと革工房がひらいている教室に通うようになりました。その後、フィレンツェでコインケースと出逢い、本格的に革のものづくりを学ぶようになっていきました。始めた頃は、切って、貼って、、まるで工作のようだな、と小学校の図工の時間に戻ったような感覚でした。最近になって漸く、作業一つ一つの意味を自分なりに解釈できるようになり、この小さな作業の積み重ねが美しさにつながっていることを心に留めながら手を動かせるようになった気がしています。
そして、今でも変わらないのはコインケースが出来上がったときの感動です。
昔から継がれてきた形はなんて美しいのだろう、この技法を生み出し繋いできた先人はすごいなぁと、何度作っても思うのです。

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質問3
今まで訪ねた中で、最も印象に残っている場所はどこですか。その時の思い出もよかったら少し教えてください

───フィレンツェにある師匠の工房です。古い道具の数々、つくりかけのものがそこらじゅうに置いてあって、師匠のご機嫌な鼻歌が BGM。少しずつ形になってゆくコインケース、師匠の手の動き、かけてくれた言葉の数々…
濃密な時間を過ごした分、今でも心に占める割合が大きい場所です。
最近では、昨秋に訪れた信楽のMIHOミュージアム。紀元前に作られたという古代美術品の数々を目の当たりにして、何千年も前から人はものを作ってきた。そして道具としての用途を満たすだけでなく、手間をかけて装飾を施していた。今、私たちがやっていることも何も変わらないなぁ、と可笑しくもあり、ひどく心をうたれました。

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質問4
ご家庭では庭づくりも楽しみのひとつとお聞きしていますが、園芸や植物、庭のある暮らしは自らに何をもたらしていると感じますか

───庭に実生の野ばらの木があります。春に愛らしい白い一重の花をたくさん咲かせて、秋冬には赤い実となり小鳥たちを庭に誘ってくれています。小鳥たちが実をついばむ姿をみていると、こうして鳥たちが野ばらの種を運んできてくれて、この場に芽吹き、枝葉を伸ばし、花を咲かせて実をつけ、また鳥たちがやってくるのだなぁと、大きな循環のなかにいることを感じさせてくれています。

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質問5
展覧会は春のはじまりを感じさせる季節かと思います。春のはじめの風情を感じるのはどんな瞬間ですか

───ミモザの甘い香りをかいだ時。庭の大木の遅咲きのミモザは3月下旬ごろに満開を迎えて、ほわほわした鮮やかな黄色と独特の甘い香りが庭いっぱいにひろがって、とても幸せな心地にさせてくれます。そして、まためぐってきた春に「ありがとう」と心から思える瞬間です。

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質問6
循環は自らの体内でも起こり、生活環境や宇宙にまであらゆるところにありますが、土居さん
が循環と聞いて頭に浮かべるものはなんでしょうか

───自然の大きな循環はなんて無理がなくて美しいのだろうと思います。
ものづくりもまた、大きな時の流れの中で無理なく循環するようにありたいと思っています。
革は、食べることから生まれる副産物で、先人が古の時代から暮らしに役立つ道具へと作り替えて使ってきた素材です。先人たちが自然の理のなかでしてきたように、手元にある素材を自分の手を動かすことで暮らしに役立つ何かにしていくことは、無理がなくて心地がよいなぁと感じています。

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質問7
これまで継続して今のお仕事をされてきたと思います。向き合い続ける中でご自身が大切にしてきたつながりはなんですか

───縁あって出逢えた人とのつながりを、特に大切に思っています。想い続けているといつか自然とつながるような、そんな気がしていて、今展もまさに、そう。作り手のお顔やエピソードが浮かぶものは、暮らしの中で使うたびに心に潤いを与えてくれていて、私が作るものもこうでありたい、と思うのです。ものを作ることが人との出逢いやつながりへと導いてくれていることは、とても幸せなことだなぁと思っています。



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土居祥子(どい しょうこ)略歴
1985年生まれ 地元の普通高校、大学を卒業
2008年 百貨店に入社
2014年 フィレンツェへ短期留学
鞄職人養成学校「scuola del cuoio」にてバッグ作りの基礎を学びながら、伝統工芸品を作る工房「il Bussetto」にて修行
2018年 col tempoとして制作活動を始める
《col tempo はイタリア語で「時と共に」という意味
【時と共に 変わっていく、育っていく。 そんな、ずっと使い続けたい 革のもの】
をコンセプトに、フィレンツェの伝統技法を用いた縫い目のない革小物や革を纏うようなシンプルなバッグを制作》

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