読み物
椀籠屋の石井 鉄屋の鈴木 ④


宮崎出身。

昼間は彼女の制作スペースとしている部屋は、
「
と石井さんは笑っていた。
竹ひごの削り屑は素足に刺さるとけっこう痛かったりする。
ある日突然竹細工職人になったお母さんをどう感じたのか、娘さんにも聞いてみたいと思った。



石井さんは42歳の時に、ご主人の異動先の大分で、
そこで2年、主婦の傍ら別府や安心院で竹細工に明け暮れた。
ご主人の異動勤務に終わりが来るのはわかっていたので
「
と、
神戸に戻ってきた今もその時の竹細工は家のあちこちでたくさん使




今年で47歳となり、竹細工を始めて6年目を迎えた。
これからも先へ先へと道が伸びている。
椀籠屋の石井 鉄屋の鈴木 ③


一問一答|“汗をかいて働いた後のご飯がとても美味かった”
通奏低音のように。
それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの
今回作家さんお二人に一問一答形式での質問にお答えに願いました
質問1
ご自分の言葉で自己紹介をお願いします。
鈴木 ―群馬県の高崎市十文字町で2003年より十文字工房として鉄の仕事をしています鈴木浩と申します。
主に鍛鉄という技法で門扉やフェンスなどのエクステリアから家具や建築金物などのインテリア、
質問2
どのような思いやきっかけでこの道に進まれましたか?
鈴木 ―もともと絵描き志望だったのですが、
質問3
自身の制作をする上で、
鈴木 ―昔よく買った画集や展覧会の図録は大事にしていて、時たま見ることはあります。基本作業中は槌音でしっかり叩けているかを判断しているため音楽は流していません。かけても爆音にしないと聞こえません。でも休憩中はラジオをよく流していてクラシックやポピュラー音楽
質問4
座右の銘や好きな言葉、
鈴木 ―大切にしている言葉は「目と耳と口と鼻と足と手」
長野の工房を出て程なく、仕事上の行き違いで師と仲たがいのなって手紙などのやりとりをして、最後に自分に送ってくれた言葉。
質問5
今回の展示で出される作品について何か思い入れのある作品だった
鈴木 ―今回の展示会の制作にあたり、店主の
壁掛けのレリーフ花器や鉄額はあえて全部、
1976 群馬県高崎市生まれ
1999 武蔵野美術大学油絵学科卒業
2000 長野県原村の鉄の工房で働く
2003 群馬件高崎市で十文字工房として鉄の仕事をはじめる
椀籠屋の石井 鉄屋の鈴木 ②


一問一答|“ひとつひとつ正直に真面目に作っています”
通奏低音のように。
それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの
質問1
ご自分の言葉で自己紹介をお願いします。
石井 ―宮崎の田舎育ちです。進学でふるさとを離れ、
質問2
どのような思いやきっかけでこの道に進まれましたか?
石井 ―20年程前に初めて竹かごを家に迎え入れ、そのステキさにすっかりハマってしまいました。好みの竹かごを探し続けましたが、なかなか見つからず、それなら自分で作ろう!、作りたい!、と思い続けること10年以上。そんな時、転勤とは無縁だった主人が突然大分に異動になりました。大分にいた約2年の間、別府や安心院などで竹細工の基本を学びました。神戸に戻り、地域の資源を生かしたものづくりをしたいと思い、竹林整備活動に参加しながら竹かごの制作をしています。
石井さんが初めて手に入れた竹籠。宮崎の、道の駅の隅のほうに置かれていたという。九州系の竹細工に見られる表面の「磨き技法」による仕上げで美しい飴色になっている。脚の一部を石井さんご自身で修繕したそうですが今でも現役でとても丈夫。こんな籠がつくりたいと石井さんは言う。
質問3
自身の制作をする上で、
石井 ―いつもラジオを聴きながら制作してます。
質問4
座右の銘や好きな言葉、
石井 ―「いまを生きる」。
質問5
今回の展示で出される作品について何か思い入れのある作品だった
石井 ―自分が使うとしたら…、といつも考えながら、ひとつひとつ正直に真面目に作っています。
石井さんの家には、大分で修行していた頃「とにかくこっちにいる間にたくさん練習しよう」という思いで拵えた籠がたくさんあり、実際に家のあちらこちらで使われている。現在手がけている青竹細工と違い、別府竹細工特有の白竹作品が多い。
石井美百(いしい・みほ) 略歴
1975 宮崎市生まれ
2017 大分県別府市や安心院で竹細工を学ぶ
2019 神戸に戻り地元の竹を使ったかご作りを始める
椀籠屋の石井 鉄屋の鈴木 ①


コハナタケという屋号で、
十文字工房という屋号で、
今はひたすら椀籠にこつこつと専念する職人的な「椀籠屋」
かたや鉄を素材にあらゆる品を魔法のように作り出す「鉄屋」
新たにご縁を頂いたお二人の制作への熱量、知識欲、
五月は、スペシャリストな「椀籠屋」、オールラウンダーな「鉄屋」
叶谷真一郎 Listen ⑥


数えてみるとはじめてクラフトイベントで知り合ってから今年で10年になる叶谷真一郎さん。
神戸市北区で拠点を構え、百職もその神戸に二年前に移転してきて、いよいよ叶谷さんの展覧会を迎えます。
お付き合いが長い分、だいぶ以前にお聞きしたことを今改めてお聞きしてみたり。
インタビュー後篇は、同席してくれた真一郎さんの奥様で発酵料理家の尚子さんとの丁々発止のやりとりにクスリとさせられ、ふだんのお二人の生活がちらりと見える瞬間が面白いです。
真一郎さんの真面目で誠実がゆえの独特の考え方や、自分の作品たちについてこれからの展開にも触れています。
どうぞお楽しみください。
○僕はちゃんと考えすぎ
―多分なさそうな気がするんですけど、座右の銘とか…
真「はい、座右の銘とかもう、無いですね」
―(笑)まあでも大切にしてる言葉などはさっき話してくれましたね。座右の銘じゃないけど、心に響く言葉はあるってことですね。イチローの話とか
真「そうですねえ。そういう感じになるかな、じゃあ。特に気の利いたそういう座右の銘とかことわざ的なものとかはないですけどねえ。この前半分冗談みたいなので言ってたのが『群れない、媚びない、靡かない』っていう(笑)それかなあって言ってたんですけど」
―手仕事のもので何か自分が作ったものでもいいんだけど、何か大事にしてるものとか、自分が持ってるものじゃないけど、こうどこかで見たもので記憶に残ってるものとかありますか?
真「そういうのもね、考えたんですけど思いつかなかったんですよね。うーん」
―素晴らしい作品は見てらっしゃるんでしょうけど。好きなアート作品とか
真「いやあ、それもねえ…」
尚「絵とかは?」
真「絵?特にねえ…同じよ。うーん」
尚「この人(の絵)も好きで、この人(の絵)も好きくらいの感じやから。お真の特徴ですよこれは」
真「ああ、ああ。好きな食べ物のこととか?」
尚「そう。好きな食べ物を何回聞いても答えません。例えば二択三択とかでこれとこれは?って聞くじゃないですか。『いやあ、どれも別に同じくらい好きやしなあ』くらいな感じで。だから絶対そのはっきりとこれっていうことをあんまり言わない。というか思わないんでしょうねえ」
真「言えたら言うんですよ。あえて言わないんじゃなくて」
尚「だからこの人の性質?あたしなんかだいたい聞かれたらこれ言うとか決めてるとかあるんですけど。食べ物とか、おでんの具は何が一番好きとかさあ、そういうことでも『いやあ…』って絶対答えなくって、ちょっとイラっとするんですけどね」
真「(笑)」
尚「だいたいこれっていうのがあるやろって、聞いたこっちからしたら思うけど。まあそういう人やなって感じです、何聞いても。そうやって今も、これもこれも別に好きやねんけど一番を答えることができない。そういう感じのところがあるなって今聞いて思い出した」
叶谷家の愛犬ハチ(本名:八十郎)は現在13歳
―無いことは無いんだろうなとは思いますけどね。今日熱弁を振るってらっしゃったし(黒澤明のこととか)。無いことは無いんだけど
真「一番を答えられる人はすごいなと思いますけどね。だから僕はちゃんと考えすぎなんですよね、真面目に」
尚「そうやわあ、真面目。そんなん私なんか今日言ったのと明日言ったの違うかもしれんけどくらいな感じで答えちゃうからねえ」
―(真一郎さんと)同じような考えですね私も
尚「そうやね、渡邊さんもやっぱそういう、なんかちゃんとした人なんやろね、きっと」
―私は融通が利かないんです本当は。答えますよ、答えるけど、本当は心の中で思ってます。『これって本当は単純には言い切れないんだけどな』って感じながら、(向こうが)答えないと困るだろうなと思うので答えるんですけど。本当はいろいろ思ってます、心の中では(笑) でも良いと思います。だってそれが本当の答えなんでしょ?だからそれでその、例えばおでんの中の具で『たまごが好き』っていうことにその人の人間性が見える場合もあるかもしれない。そう聞かれても結局『どれも割と好き』っていう答えに人間性が見える場合もある。答えって、どの具材が好きかより、人間性がわかるほうがいいと思うんですけどね。ただほとんどの人は『結局どれが好きなのか知りたいんだけど』と質問に対するそのものの答えをほしいなと考えるかもしれませんね
尚「うん。聞く時は答えを知りたくて聞いてるからやろね。聞くほうの期待よね、多分。『え、大根とか何か好きな具材言ってよ』みたいなとことかあるやん。だってそうじゃないと聞かへんやん、人は。だから聞かれるってことはそういうことなんやろうと思う。それ答えられへんからいつも『え~、え~』ってあなた言ってるねんな」
真「そう、そんなん聞くなよって感じ」
尚「だいたい私はもうお真にはそういうのあんまり聞かないけど。もう答えないんでね」
真「昨日ラジオでパラちゃん(お笑いコンビ「メッセンジャー」のあいはら雅一)が言ってたわ。うまい棒の、うまい棒占いで何味が好きかとかって勝手に占っていい加減な占いしとるらしい(笑)あの味が好きな人はあーそれはどういうあれですねえとかいって。いい加減な、出鱈目ですけどね。それができるようになったとかって言ってて。なんかそれみたいやなって思って。面白かったけどね」
―お二人の話ずっと今聞いてましたけど、質問に対してずばりの答えになってるかどうかはともかく、「らしさ」が伝わってくる言葉が返ってきてよかったです
○土感ある一方でそのうち磁器とかそういうのもあっていいかな
―今回気に入ってる作品とかシリーズとか、色でもいいですけど、何かありますか?
真「それもまたちょっと難しいんですよね…」
―そうおっしゃる気がしてました(笑)
尚「私なんかはこれとこれとこれみたいな感じで言っちゃうからねえ、いつも。まあ、あなたはね」
真「どれもといえばどれもやし、どれもそうじゃないと言っちゃうと、ちょっとお客さんがえ?って思っちゃうかもなって思うからそういう言い方もできないけど、そうともとれるんですよね。うーん、難しいです」
―どれも力入れて作ってますけどって
真「そうそうそう、だからどれもいったら同じだから、これっていうのは…うーん、よう答えんなあ…えー…」
―新しく作った、近年の釉薬だったりとかでもそれはそれでやっぱり考えてるだろうし、以前からやってるやつでも多分試行錯誤してやってますしね。
尚「最近はちょっと灰粉引も嫌やって自分では言ってる」
―嫌や?
真「嫌…うーん、はっきりとは言えないけど」
尚「テンション上がらへんみたいな」
真「そうやなあ。なんかね、年齢的に50になったんですけど食生活でちょっとこってり系が無理になってきたんですよ。ラーメンだったらとんこつはちょっと後でしんどくなる。もうちょいあっさりした塩ベースとかのほうがいける。焼肉もあほほど食べてたカルビがもう無理みたいになってきたのと、なんか似てるなと思ったのが、灰粉引は鉄粉がばーって出るじゃないですか。ちょっとそれがね、若干うるさく感じ出したんですよ。焼きによってはね、今ここにあるこれはね(いくつか持ってきた灰粉引のうつわを見せながら)いいんですよ、おとなしめでいいんですけど、還元が強くかかるとこの灰の緑とかも濃く出て、鉄粉もうわーって出たりするとちょっと、ああこってりやなあって思う時があって。うまく窯をコントロールしようとするんですけど、なんかちょっと難しくて。土の状態もあるんだと思うんですけどね、その時の。結構鉄分が含まれてたら鉄粉うわーって出るし。窯との関係もあるしで。それを抑えたいなって最近ちょっと思ってきてて、あっさりとした感じで焼きたいなとか思ってまして」
―うんうん、なるほど
真「ちょっとあっさりし過ぎかなと思うくらいでもいいかなと思ってきてて。そんな感じにだんだんなってきてますね。作品全体を見直した時にちょっとあっさりとした白も欲しいなって。なんやったら粉引じゃなくて磁器でもいいんかなとか思って。磁器は前からちょこっと作ったりはしてたんですけど。ここでもう少し取り組んでもいいかなってずっと思ってはいるんですけど。あの白さが中に入ったらいいかなって思ってますね。今後のテーマとして。さすがに全部磁器とはいかないですけど、少しそういうあっさり薄味のが入ってもいいかなって自分の中で思ってるかな。そう言いながら一方でちょっと土感がどうとかって言ってますけどね。ただ、うん、その灰粉引と白っていう関係でいえばちょっと白も入ったらいいかなと思ってます。土感ある一方でそのうち磁器とかそういうのもあっていいかなっていう、うん。」
尚「あとなんか最近ちょっと色物とかぐちゃぐちゃになってるよね」
真「え、ぐちゃぐちゃ?どういうこと?」
尚「ぐちゃぐちゃっていうか。なんて言ったらいい?黄土灰はこれとあれと…こっちもそう、これも黄土灰やでとか言って」
真「ああ、それは土に直接かけるか、化粧の上にかけるかとか。あとはほんまは全然違う土調やけど、色が似てるからひとくくりにしようって。色分けですね。釉薬名でわけるんだったら全然違うけど、その釉薬名もちょっと…ほんましんどくて、思いつかないんですよね。思いつかないって言っちゃあれやけど。何とか釉って自分で独自の名前を付ける人あるじゃないですか。でもほんとちょっとないんですよね。小洒落た名前つけるっていうのも、うーんっていう感じで。色の見た目の印象で分けてるんですよ最近は。だから最近は混乱してますけどね」
尚「粉引も含め灰粉引も含め白は全部白ですって感じやし。でお客さんは前につけていた例えば来待だったら来待って名前で覚えててくれる人がいるから、文字として見る時に来待がなくなってるんで混乱!みたいな。あ、そうそう来待といえばさ、丸鉢よくない?(真一郎さんに)渡邊さんに見せたっけ?」
真「見せたよ。でも安定してない。まだわかんないなあ」
尚「(うつわを出してきて)これこれ」
―ああ!それなら見せてもらいましたよ。良かったやつ
真「化粧(土)との相性が難しいんだよ。違う調合にしたらうまくいくけど、発色が変わるし」
尚「あたしはそれでもいいと思ったけど」
真「うーん。黄色が強くなっちゃったからな。料理映えるのは今出してるうつわのその色だと僕は思う。けどあんまりうまくいってない」
尚「最近皿が多いから鉢を作ったらいいと思ってて。小鉢、中鉢、大鉢。結構皿って最近みんなすごいやってません?」
―プレートは今、特にうつわの中でも主流ですよね。流行っているといってもいいかな。インスタ映えの影響が大きい。プレートはお料理を盛りつけて俯瞰で上から撮るといい感じの写真が出来上がりやすいから、そういうのを見てプレートほしがる人が増えているんだろうなあ。でもまた、いろんな料理作って盛鉢に盛るのもいいから探してるってお声も聞くようになってますよ。使ってみると小鉢も重宝しますよね。すっとメイン皿の横に添えるとすごくいい
尚「そうそう。ふつうのふだんの食事の時に便利なんですよ。だからさ出したらいいかなって」
真「うーん。10個焼いて2つ3つ取れるかもしれん」
尚「えー、そんなに悪い?」
真「最悪の場合」
尚「でしょ?半分くらいはいけるでしょ。この間の窯出しの時にはもうちょっと出てたでしょ」
真「まあ4個くらいね…」
―取れ高4割はいいとはいえないね…
真「そうなんですよ!」
―最近は特に様々な作風の作家さん、うつわが多様に流通してますけど、ふだんの暮らしの料理になじむうつわを作ろうとする真一郎さんの工夫や姿勢を待っている人、喜んでくれる人がきっとこれからも支持してくれると思ってます
尚「うん、そういうことやんな。すごく独創的な料理作る人もいるじゃないですか?プロのシェフとかじゃなくても。ソースとか多用して。あんなんどういうふうに考えるんやろって。たまには作れても、毎日は無理やろって。基本はどんな人も作れるような料理をふだんの盛りつけでできるうつわでいいんじゃないかなって。私らの最近の答えかな」
真「昔から作ってるような料理を、僕のうつわに盛ったらちょっとおいしそうに、1.5割増しでもいいから『おいしそうに見えます~』って言ってくれるのであれば、そうであればいいのかなって。うわあオッシャレーみたいな(笑)、映えるようなすごい料理や盛りつけじゃなくても、普通の食卓を豊かにできるようなうつわが作れたらいいかな」
(了)
叶谷真一郎(かのうやしんいちろう) 略歴
1971 京都生まれ 兵庫県西宮市育ち
1998 京都伝統工芸専門学校卒業後、丹波立杭焼窯元で勤務
2003 奈良市内で独立
2007 神戸市北区へ工房を移築
2010 イベント等に出展し活動を開始