読み物
ふつうの 少し先の 風景 ③


一問一答|“自分が竹細工を続けることで手仕事の種を蒔く”
出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いのもと、この度もご紹介記事を上げております!
今回はいつもと趣向を変え、スタンダードに一問一答形式にしてみました。
どきどきしながら質問をお送りし、そして戻ってきた回答にまたどきどきしながらまずは店主の私が読むというもしかしたら一番自分が楽しかったかもしれないとはたと思ったりもしましたが。
シンプルな形式ですが作家さんのふだんの表情や過ごし方、考え方などもちらりと覗くことができて興味深いものになりました。
一問一答形式、そして末尾には店主の私が思い浮かんだ小文というスタイルになっています。
質問1 制作をする上でもしくは日々暮らす中で大事にしている本あるいは映画はありますか?もしくは仕事をしている時によくかける音楽などはありますか?
橋本 ―以前はよくラジオを聴いていたのですが、最近はSpotifyのpodcastで美術手帖や英会話を聴きながら作業をしています。
(※高校時代はカナダのバンクーバーに留学し、ロンドンにも一ヶ月居住経験ありという橋本さん。英語は全然というものの本当はけっこう話せるのでは…)
質問2 座右の銘や好きな言葉、大切にしている言葉があったら教えてください。
橋本 ―大切にしている言葉はローマの詩人ルクレティウスの「Ex nihilo nihil fit.(Nothing comes from nothing.)」
「無から生じるものはない。」という言葉です。
微力ながら自分が竹細工を続けることで、手仕事の種を蒔き、少しでも共感して下さる方が増えればと願っています。
質問3 手仕事のもので大事にしているもの、使っているもの、(所持していないけれど)記憶に残っているもの、いずれか教えてください。
橋本 ―竹の先生から譲り受けたすず竹用の道具。
10年以上前に先生のお母さんが使っていた道具を譲っていただきました。
道具を作る職人さんも少なくなっているのでとても貴重で大切にしています。
質問4 今回制作されている中で、特に力を入れている作品、ご覧になってほしい作品について教えてください。
橋本 ―一つひとつに思い入れがあるので特に力を入れた商品はありませんが、二段の蓋物は自分で考えた形となります。
お花見用のお弁当箱や大切なものを入れていただくにも最適です。
質問5 三人展、ご自分以外の金城貴史さんや吉田慎司さんの印象、或いは籠や木の匙について思う浮かぶイメージのいずれかを教えてください。
橋本 ―金城さんにはお会いしたことがないのですが渡邊さんがお声掛けなさったということは、きっと吉田さん同様真面目で実直な方なんだろうなぁ~と勝手に想像しております(笑)
私もお二人の作品が楽しみです!
※本文写真は二枚とも橋本さんによるもの
こちらは愛猫のカプちゃん。橋本さん曰く「もう18歳なので毎日心配ですが25歳位まで頑張ってほしいなと思っています(笑)」という…25歳となるとそれはもう化け…いえいえ笑
*****
橋本晶子さんのこと
千葉で毎年行われている二日間の野外クラフト展。
そこで、出展者として岩手から来ていらしたすず竹細工の橋本晶子さんに出会いました。
当時、お客様からすず竹細工の修理品依頼の相談案件を持ち込まれ修理をしてくれそうなつくり手さんを私は探していました。
不思議なことに、そのタイミングで同展に出展する作家の販売手伝いをすることになっており、出展者やその関係者たちの宿近くにあるスーパーで多くの作家たちに紛れて買物をしている橋本さんを見つけた私は思い立って修理相談の声をかけたのです。
買物中に突然声をかけられ彼女もさぞびっくりしたはずですが(お互い出展者と出展手伝いという立場だったからなのか)、その場で修理の籠を見てくれると言ってくれたのでした。
「修理仕事は、物を長く使い続けることと、物自体が受け継がれていくことにも繋がるんですよね」
と長い歳月を見据えた考えを、その時から橋本さんは当たり前のように口にしていました。
そこから8年経ち、先日「おばあちゃんになるまでよろしくお願いします」と声をかけて頂きました。
彼女は、おばあちゃんになってもものづくりをしているだろう自分のことをとても自然にイメージしているんだなとわかり、胸を打たれました。
岩手すず竹細工の生業は、古くから彼の地では女性が中心となって暮らしの中で担ってきたもの。
しかし明らかな後継者不足となっている。
それでも橋本さんはこれからも続けていこうと思いを持っている。
果たして彼女と同じ年齢までできるかはわからない。
けれど、どんな形になろうと彼女の仕事を伝えていくことは続けたいと気持ちを新たにしました。
ふつうの 少し先の 風景 ②


一問一答|“僕の製作は、木の塊から匙を削りだす作業”
出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いのもと、この度もご紹介記事を上げております!
今回はいつもと趣向を変え、スタンダードに一問一答形式にしてみました。
どきどきしながら質問をお送りし、そして戻ってきた回答にまたどきどきしながらまずは店主の私が読むというもしかしたら一番自分が楽しかったかもしれないとはたと思ったりもしましたが。
シンプルな形式ですが作家さんのふだんの表情や過ごし方、考え方などもちらりと覗くことができて興味深いものになりました。
一問一答形式、そして末尾には店主の私が思い浮かんだ小文というスタイルになっています。
質問1 制作をする上でもしくは日々暮らす中で大事にしている本あるいは映画、もしくは仕事をしている時によくかける音楽などはありますか?
金城 ―yumbo というバンドの「みだれた絵」という曲を、この冬はよく聞いたり歌ったり(子守歌として)していました。
学生のころから好きな曲で10年以上前の曲なのですが「新しい病が 今日を歩けば 揺れながら線を引く 暴れる目を開いて」という歌詞が今の気分にシンクロした感じでした。
昼の作業時は大体ラジオを聞いていますが夜の作業時、静かに集中したいときに音楽をかけます。
https://www.youtube.com/watch?v=_cE1I2znOvU
質問2 座右の銘や好きな言葉、大切にしている言葉があったら教えてください。
金城 ―「臆せば死ぬぜ」 松本大洋作 ピンポン(漫画)より
質問3 手仕事のもので大事にしているもの、使っているもの、(所持していないけれど)記憶に残っているもの、いずれか教えてください。
金城 ―木曽さわらのおひつ 4年ほど前に購入し、冷ご飯の美味しさに目覚めました。
質問4 今回制作されている中で、特に力を入れている作品、ご覧になってほしい作品について教えてください。
金城 ―どの匙にもそれぞれ思い入れはあるのですが、今回は「蓮華」を挙げようと思います。
大体半年から一年くらいのスパンで匙の型を作り直すことが多いのですが蓮華はこの3年半程、正面からの型の変更を行っていない唯一の匙です。
側面の型やその他細部は変更しているので出来上がりは以前とは別の匙になっているものの、正面からの形にある程度の強度があるんだろうなと思っています。
質問5 三人展、ご自分以外の橋本晶子さんや吉田慎司さんの印象、或いは籠や木の匙について思う浮かぶイメージのいずれかを教えてください。
金城 ―僕の製作は、木の塊から匙を削りだす作業です。
いわば最初から匙は木の中にあるのですが、箒や籠のように素材を束ね、編み、組んで、一つの形を作り上げる仕事にはより人の知恵や技が感じられて憧れに近い感情を抱いています。
※本文写真は二枚とも金城貴史さんより
作業机→気に入っている風景というかいつもの風景です。製作に追われていると机の上がごちゃごちゃしてきます。無事に匙と向き合える一日が有り難いです
小刀→ほぼすべての匙を最後にこの小刀で削り仕上げています
*******
金城貴史さんのこと
過去に一度だけ企画展にお出になって頂いて以来なのでかれこれ7、8年ぶりにご一緒させて頂きます。
でも折に触れてふとどこかのイベントで顔を合わせたりお見かけしたりするので、その時々のお仕事ぶりや空気はそう遠くない距離感で感じさせてもらっていました。
いつもどこかで気になっているつくり手さん。
その証拠というか、常にご一緒にお仕事をしてきたわけじゃない割に、手もとには金城さんの匙をかなりの数所有しているのです。
写真はマイコレクションの金城さんの匙たち。
(引くくらい持っていて自分でもちょっと驚きました)
金城さんの匙は、いつもいろんな感覚や考えや思いを引き出してくれます。
匙考。
匙はもっとも身近な手道具のひとつで、使い勝手の定義は十人十色。
わかっていても、金城さんの匙を手にするとその美しさや用途について自分の中の感覚が触発され、ついああだこうだ語りたくなってしまいます。
そうやって知的興味を刺激させてくれるのと同時に、実際に今まで使わせてもらってきた実感…自分の内側の感覚はただひたすら「使いやすいよ!」と素直な声を上げています。
確信と実感を小脇に抱えながら、今回もまた超個人的目線による金城さんの匙についての思いを皆さんにお伝えできれば幸いです。
ふつうの 少し先の 風景 ①


中津箒のつくり手の吉田慎司さんが、昨年8月に「ふつうの研究」
「ふつう」
今、様々な状況や環境が変わり揺らぎ、
今回の展覧会は私が思う、身近な自然や地域、
With a warm feelings ⑦


“チームでやると、その火がね、使える火が多くなるんです”
とりもと硝子店さんは、ガラス作家の荒川尚也さんの工房「晴耕社ガラス工房」で長くスタッフとして働いていた鳥本雄介さん・由弥さんご夫婦が営んでいます。夫婦であり、良き制作パートナーでもあるお二人。
百職に初めて届けられたとてもプレーンな姿かたちのコップ「フリーカップ」が個人的にとても気になって、これについてお聞きしたところ思っていた以上の思いがここには込められていました。
後篇はフリーカップを中心としたインタビューです。
○フリーカップのこと
練習のために作り始めたコップで、大事にしてるコップというかね。あれでいろんなことを今でも確認してるというか。ガラスの生地の柔らかさとかもきっちりやっとかないとすぐ野暮ったくなるんで。
なんかかっこいいのができる時はね、何も考えなくてもかっこいいのができて。そのためにいろんな準備をしとかないとかっこよくならない。きっちり押さえるとこ押さえないと。そういうのがね中々。
いけると思ってたけど、あれ?今日ダメだねとか。それはなんでだろうというのを検証して。むしろどうにでもなるもんってあるんですよ。割とどんな感じでもなんとかなっちゃうっていう。うちの場合、少ないんですけどね。ごまかそうとしてないんでね。ごまかしてやっちゃったらうまくなんないと思ってるので。お客さんに納得してもらえるようになりたいけどまだまだね、押さえないといけないとこがたくさんあるけど、せめてね今ね、今作っててこれいいね、かっこよくできたねと思うもんで安定させたい。まだね、なんかそんなこともいかないですよね。早くそこくらいになりたいんだけど。そこってたぶんずっと動いていくとこやから。いつまでもそんな風に思っちゃうのかなと。階段のぼってって、けっこう上に来たなって思っても、その時思ってた上のほうっていうのは実は下のほうだったりするんだよって。たぶん皆さんそんな感じなんだろうと思いますけどね。
僕がやりたかった当時のコップっていうのが、同じように作ってるつもりだけどどうしてもブレるっていうかね。同じものをしようと思ってもできないって、どうやればいいんだろうなと思って。
出来るだけ均一に同じものを作ろうと思うものがフリーカップであったのに対して、絶対に同じようにやってるつもりでももうちょっと揺らぎというか誤差というかブレというか…なんて言ったらいいんやろ、まあそれでやり始めたのがアブク(アブクシリーズ)。あとはね、それまでずっとお酒を飲むコップばかりずっと作っていたのでソフトドリンク飲むコップがほしいなと作り始めたのがアブクの細。
フリーカップ作る時、いろいろテーマがあって、あんまり薄くピンピンにしようと思ったら鉄の型に当たっているとこと当たってないとこの差がすごく出ちゃうなとかね。だから気分にもよるんですけど、底にちょっと肉をためるのか、全体的に同じ肉厚ぐらいにするのかっていうのもね。やろうと思うとテーマがいろいろあって。
底のほうがちょっと肉を厚めにした場合と、底もだいたい同じくらいにした場合とでとっても印象が変わるので。どっちがいいかというわけではなくて、どっちも良かったりするんです。まあ物が違うからなあって。名前変えてもいいぐらい物が違うんです。でもどっちもいいってことにしとこうかなって。
あと、何種類かまとまったご注文をお店さんからもらった時に、たとえば丸い感じのものばっかりの時なんかは底がちょっとビシッとしたもんがあったほうがなんかいいよねって、勝手にこっちでバランスとったり。そんなこと考えて作れる時ばっかりじゃないですけど、ゆとりがある時はね、そういうこともします。お店の人が開けた時に、わ!とか、やった!とか思ってくれたら嬉しいじゃないですか。
由弥さんのつくるお料理はいつも健やかで、いつもおいしい。
吹く男は、出し巻き卵をつくるのもとてもお上手。
とりもと硝子店(鳥本雄介、由弥) 略歴
鳥本雄介 1975年生まれ。
鳥本(旧姓 酒井)由弥 1978年生まれ。
晴耕社ガラス工房に勤務、荒川尚也に師事。
それぞれ自身の作ったものを世の中に発表しながら、
退社後、2人で窯を築く。
2015年独立、開窯。「とりもと硝子店」として活動を始める。
*****
『フリーカップ
練習のために作り始めたコップは、フリーカップという名がつき、とりもと硝子店のスタンダード商品となりました。
プレーンなグラスから個性が滲み出てくるためには、たくさん、たくさん作りこむことだと思います。
18年かけて、まだ千個ほどしか作れていませんが、まだ見ぬ一万個先に作るフリーカップは、今よりも多くのことを語れるはずなので、これからもひたすら作り続けます。』
雑誌nice thingsさんにフリーカップが掲載された際に、雄介さん自らが寄せた文章だそうです。
フリーカップの由来や所以、とりもと硝子店さんが大切にしているガラスだということは、私は今回初めて知りましたが、ただその物のみを見てもどこかに何か惹かれるものがありました。
すとんとした真っ直ぐな円筒形で、何かすごく特徴的なデザインを与えられたりされているわけでもない。
ただ、そこに在る。
とりもと硝子店さんの調合したガラスが融かされ、そして一個のものとして、かたちを与えられ、そこに在る。
とても透明で、置いておいたらその場にそのまま溶けていってしまいそうなほど柔らかで豊かな質感のガラスは、ずっと前からそこにあったような感覚。
どこがとか何がとか、説明をするのが難しいけれど。
気がついたら手を伸ばして触れている、思わず使っていたと気がつくかもしれません。
往々にして、とりもと硝子店さんが作っているほかの作品たちもそういう佇まいのものなのです。
とてもプレーンで飾り気ない素の表情だけれど、その「素」のガラスを真面目に楽しみながら作っているからだろうと思います。
ごく当たり前の日々の暮らしの中にも、ちいさな楽しみや喜びを見つけて過ごしている方には、きっとこのとりもと硝子店さんのガラスたちの心地良さに心惹かれてしまうのではないでしょうか。
ガラスそのものだけでも慎ましやかに美しく、そして飲み物を入れたり料理をよそったり暮らしの中に置いてみたりすることで、ますますその魅力がきらめき始めること。
ぜひたくさんの人に感じてもらいたいです。
With a warm feelings ⑥


“チームでやると、その火がね、使える火が多くなるんです”
とりもと硝子店さんは、ガラス作家の荒川尚也さんの工房「晴耕社ガラス工房」で長くスタッフとして働いていた鳥本雄介さん・由弥さんご夫婦が営んでいます。夫婦であり、良き制作パートナーでもあるお二人。つい先日三人目のお子さんが産まれたばかり。上のお二人のお子さんもまだまだ甘えたい盛り。電話インタビューを行った際は電話越しにお子さんたちの笑い、泣き、時に叫ぶ声も聞こえてきて実に楽しく微笑ましい時間でした。主に雄介さんが話してくださり、お子さんを見ながら時折由弥さんもお話してくださるスタイルでのインタビューとなりました。
○個人ではなくとりもと硝子店、というかたちで活動することについて
雄介
「一人じゃたぶんもうすでにここまで来れてないと思うんでね。このスピードでたぶん来れてないので、やっぱりこの人たち(家族みんなの)のサポート、応援がね。」
由弥
「あなた(雄介さん)と私で出来ることは全然違うけど、それは枝葉なことであって、目指していく方法はズレてないから迷わないみたいな、船の航海でいえば…そんな感じやったんな。私の品物を、あなたが作ることに対して私はまったく疑問がなかったやん?それであなたが作ることで逆にすごく良くなったなって思うことのほうが多かったし、今はそのタイミングじゃないって寝かせてる作品も多いけど、それはそれでね。そこからのスタートだなって。」
雄介
「荒川(尚也さん。晴耕社時代のこと)さんのとこで、チームで作るという仕事があって。スタッフだけで。それが僕の中で楽しかったんですよ。そもそもガラスっていうのが、荒川さんの教えでもあるんですけど『一人でやったら無駄な火が燃えすぎるんです』っていう。で、チームでやると、その火がね、使える火が多くなるんです。同じだけ点けてても品物に変えることができる。ガラスの場合は寝てても起きてても火が燃えているので、火が点いてる限りは一つでも物を作ったほうがいいんです。
一人で5時間作ってたとえば20個作れましたっていう時と、二人とか三人で5時間やって40個や50個できましたって時にも燃えてる火は同じなんです。出来るだけ無駄な火は燃やさないっていうのはとても大事なことなんで。そういうのも合わさって、そもそも一人でやるっていう発想を良しとしていなかった部分がありますね。とりもと硝子店というスタンスにして、一人でやってんじゃないぞという形にして良かったなとすでに思っています。一人の名前を打ち出したいなとは全然思ってない。
サインもね、責任のために(作品の裏に)サインを入れてるところがあって。「誰が作ったんやこれ?」と責任を問われた時に、サインがあったほうがいいねと。うちで作ったんですと(誇るような)いうサインじゃなく、何か問題があったら言ってくださいね、という。
だから詠み人知らずでいいんですよ。だけどみんな知ってるという。誰が作ったかわかんないけどこのコップ俺も持ってる、私も持ってるとか、そういうとこに行けたら嬉しいなという。ニューノーマル。
あと、もともとは由弥さんが作ってたやつって渡邊さん、わかるでしょ?チリリとか波紋の花器とか、今回出してないけど游水の鉢とか。あれは由弥さんの。名前がね詩的なのは由弥さんです。うちのヒット商品は由弥さんが作ったやつが多いね。」
由弥
「昔作ったやつは私はもう作らんやろなっていうのはあって。自分は吹いていた(※過去形なのは由弥さんは現在育休中でしばらく吹きからは遠ざかっているためと思われる)から思うけど、ガラスが選んだ人がいるなっていう。融けたガラスが吹く人を選んでいる感じがする時があって、個人的な私の見方なんやけど、うまいへたじゃなくて、なんかこう融けたガラスと仲良く仕事するのがうまい人って見てて音楽的っていうか、お互い無理がないっていうか。見てたらそういうのがあって。私はけっこう逆にガシガシしがみついてるなあという感じが自分の中にあって。向いてるか向いてないかで言うたら向いてへんのやろうけどでもやりたい!みたいな。培ってきたもんもあるし、すごく吹きガラス愛してるから。今は自分のできる仕事をするし、また二年後くらいには吹きもまた始めたいと思うのでそれを楽しみにしてます。」
雄介
「あとね、ちっちゃいコップだとかはね、このちっちゃい人(鳥本家のお子さんたち)たちが使うかどうかっていうのを、ちゃんと正解かどうかをこの人らは判断するんですね。そういう大事な役。残酷な判定が下ります。がんばってるからとか関係ないんでね(笑)。」
○これからガラスを通じてやりたいことについて
雄介
「今、灯油使ってるんですけど、天ぷら油の廃油を燃料に入れていこうと。しないといけないなと思ってること。ちゃんとクリアしていかないと。あとは一緒に働く人と出会えたらいいなと。自分らだけでは辿り着けないところに行けるでしょう。そうしたらきっと、さっきの火を燃やさないとってところにも繋がるんですよ。
(※最近とりもとさんは、お客様のもとで割れてしまったとりもと硝子店作品があったら取扱店に持ち込んで頂き回収し、融かして再利用するという試みを始めています)
割れたのを回収させてもらうことでいいことは、いっぺんガラス化したものを融かすほうが温度低くても融けるんですよ。調合した原料のほうが高温で焚かないとガラス化しないんですよ。それだったらちょっとでも回収してゴミも減るっていうのと、悪いことはないなと。持ってきてくれる人も「これはゴミじゃないんだな」と思える。そういう活動をしているってことをまず知ってもらうのが大事かな。
あまりガラスのことをご存知じゃない方でも『え、これ割れてもまた融かせるの?』と知ってもらうことが増えたらなあと。」