2021年以来、久しぶりに出展してくださる境道一さんと知子さん。
この数年の間に、お子さんたちの手が離れ、仕事場に居を移された
まだこの文章を書いている時点では工房にはお伺いできていません
展覧会は穀雨の季節。
花散らしの雨から、草木を潤し田畑に染み込む雨。
春の雨は、自然や作物にとっては恵みの雨。
冬を忍んだそのご褒美の雨。
たくさんの生命を育み、その背中を押します。
成長に目を見張る一方、夏へと入れ替わっていく端境期で、新しい
雨を聴きながら、静かな時間を作る。
こころとからだに、気持ちよい風を通す。
咲き始める牡丹を愛で、伸びてきたよもぎの若葉で拵えた草餅を新
ささやかなご褒美とおもてなしを〈私〉にも。
忙しい時ほど、自分のことも大切に。
本展のテーマは、自分への初夏のご褒美とおもてなしとしました。
皆さま、ぜひ楽しみにお越しくださいませ。
真竹の白竹細工を手掛ける岡悠さんの定番作品のひとつ、茶托。
材料は、自ら竹割りして作った約1.5mmの竹ひご。
これを二本揃えて寄せながら底部から編んでいく。
本麻編みは、竹細工の基礎中の基礎である六つ目編み系統の編み方。
極細のひごを使うことで紋様に繊細さが生まれ、出来上がりは精緻で華やかさも感じられるものとなる。
約1.5mmのひごは竹細工の中でもかなり細めのひご。
第一にこういった細いひごを作ることがまず非常に難しく、竹を扱う高い技術が問われ修練がいる。
作り出したひごを編み上げていくのも同じく技術が必要不可欠。
積み上げた高い技術を生かし、緻密で華のある茶道具や美術工芸品を生み出していくのが京竹細工。
伝統工芸の京竹細工工房での修業時代を経て独立した岡さんが今作るのは美術工芸ではなく、暮らしの中に彩を添える日々の竹細工。
ただその作品の中には京竹細工の世界で培った技術と思わず目を奪う美しいデザインがはっきりと存在していて、それが岡悠さんが作るものの個性となっている。
麻編みの麻紋様は、丈夫でまっすぐに育つ植物の麻にあやかった健康や成長を願う吉祥紋様として今も広く親しまれている。