読み物
はじまりまたはおわり おわりまたははじまり ④

通奏低音のように。
それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの全体に影響を与える。「もの自体」だけではなく、根源となるその作家自身の存在は欠かせない。それだけに作品のみならず出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いがいつもあります。
今回は1人×1ユニットから成る展覧会です。
タイトルや展示テーマから取った「初めて」「(物事が続く)継続」を織り込んだ一問一答。
作品を紐解く手助けや愛着を深めていく
Q1.はじめましての方に向けての、経歴とは違う自己紹介をお願いします
A1.幼い頃から何かを作ったり描いたりすることがなんとなく好きでし
A2.最近初めて知って腑に落ちたことなのですが。
そんな中最近仕事中に流していたラジオ番組で、展覧会等で仏像達

Q3.同じように陶芸を新たに志したい方に向けて「
A3.納期を守ることです。

Q4.これまで継続して今のお仕事をされてきたと思います。
A4.一つのことを続けている中でこの世のものごとは共通していたり繋

Q5.これから深まっていく冬で、一番好きな食べ物を教えてください
A5.お餅です。私の実家では昔から大晦日の前の日に餅をつき小さな鏡
はじまりまたはおわり おわりまたははじまり ③

豊かで澄み切った水のような透明ガラスと、湯気のようにあたたかな白の耐熱ガラスで制作するとりもと硝子店さんの鳥本雄介さんと由弥さんが暮らすのは京都府京丹波町。
お二人にもそこで暮らす中での冬の風景や風物を訊いた。
「次の冬が引っ越してからの最初の冬になるので、楽しみにしているのです。
どんなところにどんなふうに雪が積もるのか。
どこで雪遊びをするのか。
ワクワクしてます。
冬の空気、光の具合が好きですね。
冬に流れる川の水の色は少し青みがかって見えます。

光の強さや角度のせいかなと思っています。
それとキンとした空気。
冬ならではの透明度の高い空気を思い出しました。
──鳥本雄介」
「2月生まれの私にとって冬はとても身近です。
雪、薄氷、氷柱、霜柱等々、水が映す冬の情景は次々と変貌して美しく、私を捉えて離しません。
雪深い富山で暮らしていた頃、雪は白ではなく、透明の集まりである事を体感してから、更に冬が好きになりました。
降り続く雪が、街灯に照らされて雪野原に描いた一面の降る雪の影。
いつか形にしたいと想い続けているシーンです。
今も雪深い地域に暮らしています。
冬に再会する度に新しい透明と出会っているように感じています。
もうひとつ挙げるとしたら赤でしょうか。
夕日で切ない程茜色に染まる山は『明日は雪になるよ。』と伝えてくれます。
冷たい空気を頬に感じながら見る茜色は神々しさを孕んでしみじみ沁みます。
薪ストーブの火の赤さやストーブに手を伸ばす小さい人達の真っ赤なほっぺや冷たい指先の赤さといったら!
冬の赤色は透き通って澄んでいながら強く芯から燃えて暖かい。
そんな感じです。
──鳥本由弥」
はじまりまたはおわり おわりまたははじまり ②

銀彩で描かれたどこか愁いを帯びた動物たちと、触れたら溶けてしまいそうな白が印象的な磁器作家の竹村聡子さんが暮らす長野県飯田市。
彼女の冬の風景や風物を訊いた。
「積雪の日の晴れの早朝と真夜中が好きです。

一面真っ白に降りしきった雪上に太陽と月の明かりが照らされて、どの季節よりも一日中外が明るい景色に毎年飽きることなく感動します。

またその雪上に残る明らかに犬猫以外の野生動物の足跡があると、普段こんな場所を駆けているのかと彼ら息遣いのようなものを感じられることも嬉しいです。

私の住む土地は干し柿の産地で辺りは柿の木が多いのですが、冬場は野鳥たちの餌が少なくなるので鳥たちのために柿の木に少し実を残してある光景も好きです。
──竹村聡子」
はじまりまたはおわり おわりまたははじまり ①

竹村さんの暮らす飯田市も、とりもと硝子店さんたちの暮らす京丹波町も、雪のある冬が訪れる。
野生動物たちの足跡、川の水の青さ、切ない程茜色に染まる山、新しい透明と出会う感覚。
厳しさと静けさの中、冬ならではの自然の営み、人々の暮らしはいつもそこにあり、竹村さん、とりもと硝子店さんたちは、楽しさや美しさ、ほっとする情景を見出していた。
冬を慈しみ、今この時の中に新鮮な喜びを見出しながら、春へと歩む。
ぜひお運びください。
冬の家 ⑤

通奏低音のように。
それは物事の底流に在るもので、気付かぬうちに知らぬ間に、もの全体に影響を与える。「もの自体」だけではなく、根源となるその作家自身の存在は欠かせない。それだけに作品のみならず出展作家さんのことを少しでも知って頂きたいという思いがいつもあります。
今回は4人の方が集う展覧会ということで、それぞれの皆さんに一問一答形式でお答え願いました。質問テーマに冬を織り込み、感じ方、過ごし方、楽しみ方などから作品や人柄が淡く浮かび上がるようです。
それぞれの方の作品からイメージを膨らませた「冬の家 小話」も合わせて掲載します。
①自己紹介をお願いします
石原── 1997年 愛知県立窯業高等技術専門校 修了。
瀬戸でやきものを学んでから随分経ちますが現在は、名古屋の西隣、津島という街で白、黒、無彩色のシンプルなうつわを制作。
個展、グループ展を中心に活動しています。

②冬は好きな季節ですか?苦手な季節ですか?
石原──寒いのが苦手なこともあって、冬はどちらかと言えば苦手な季節
でもここ数年は寒い冬は暖かい部屋で温かいものを食べると言う楽しみも見つけたので今展の冬の家では温かい食卓をイメージして制作したものをいろいろ展示したいと思います。
③ご自身の冬の暮らしで欠かせない暮らしのアイテムを教えてくだ
石原──私の冬の暮らしに欠かせないものは取手のないカップ。
仕事の合間や寒い外から帰ってきた時に温かい飲み物をカップに入れて両手を温めながらホッとできる冬に
④秋の終わりから冬にかけて様々な風物詩がありますが楽しみにし
石原──紅葉狩りに行くのも楽しみですが家の近所で色づいていく街路樹の様子を眺めるのも秋から冬にかけ

⑤今年の冬にやりたいことを教えてください(新しいことでも、毎
石原──冬の定番、作業場のストーブで焼き芋。
今年もまたやりたいです。
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冬の家 episode04
目下就活中の大学生の彼女(21歳)に、遅まきながら始めたアルバイトの初給料が出た。
幼い頃、母に手を引かれながらごくたまにだけ入る作家もののうつわの店があった。
「素敵ね」
と言いながら数々のうつわを前に、母はいつも見るだけで、決して買うことはなかった。
女手一つで自分を育てずっと応援し続けてくれた母に、何かうつわをプレゼントしたいと考えていたある日、彼女はふと通りかかったうつわ店のウインドウの前で立ち止まった。
ウインドウの向こう側に並んでいる、味わいある濃淡と柔らかな丸みを描いたきれいなグレーのゴブレット。
これを母と自分のとを二つおそろいで買ったら?
お酒もようやく飲めるようになったから。
いつもは素直に言えない〈ありがとう〉の言葉も添えて。
母と一緒にこれで飲んでみたい。
かすかな緊張を覚えながら、店のドアを押した。
バイト代が入った財布をお守りのように胸に抱き、この冬、彼女は生まれて初めて、一人うつわの店へ、ゆっくりと足を踏み入れた。
