読み物
森谷和輝 つながり/循環 ①
工房にて/工芸のこと 前篇
毎夏の展覧会前に、森谷和輝さんの工房に伺って打ち合わせをするのも恒例となっている。
初夏に訪れると去年よりも明るくなっていて、室内を良く見渡すと住まいの壁の一部が白い漆喰造りになっていた。
漆喰の壁に光が映り込み、見本にと運ばれてきた森谷作品の硝子も仄々と明るかった。
そんな中、森谷さんの口からふと「工芸」という言葉が出て、少し驚いた。
これまで森谷さんと交流を重ねる中で、彼の口から工芸という言葉が出たことはほとんどなく、ただただ硝子という素材に魅せられたものづくりを貫いてきている印象があった。あえて森谷作品をカテゴライズするとしたら、従来の工芸というより、より現代的なライフスタイルとの親和性を持つものづくり、言うなれば生活工芸とかクラフトがより近しいようにも感じるが、ある面ではとてもアーティスティックな表現をしているようにも見え、自由度の高い、とらわれない魅力を森谷さんの硝子は有している。
そんな作品を手掛ける彼が考える工芸とはなんだろう。
──告知用に先に送って頂いたseiは久しぶりでしたね。ひっくり返した裏側はかなり研ぎ澄まされた仕上がりになっていたり、以前のものから今のものまでの変遷を感じて面白かったです。
森谷:seiは頭の中でこういうのどうかなと思っている形があるので、それを狙って作っていきたいです。今はまだ少し適当に巻いている感じになっているので。あと以前はこうツンツンツンツンツンついて泡を入れていたんです。今は泡が自然に入るようになったのがいいなと思ってます。溶かし具合で泡があったりとかしてくれるのがいいんです。
──作り方が変わると、自ずとできるものにも現れますね。
森谷:ちょっとずつ変わっていくのがいいなと思っています。同じものを作ってるけどちょっとずつ変わっていくような。先日「工芸とはなんですか」みたいなことを聞かれたんです。「あなたにとって工芸的な部分はどこですか」と尋ねられて。とっさに思いつかなくて。
──難解な質問ですね。
森谷:その時は「手で触って作ることです」みたいなことを言ったんです。でも冷静に考えて今言いたいのは、素材と技術があり、それを用いて同じものを繰り返し作りながらも徐々に変化していくといったものがすごく工芸的だなと。積み重ねていくといった感じ。
──工芸の背景にある人間的なものを感じますね。
森谷:少し前までの自分は、硝子の表情のことについてよく話していたんです。硝子のことを聞かれると表情が云々みたいな話になりがちで。でも最近はそれだけじゃなくなってきたなと。素材が一番大事で、それを十分に表すために技術はすごく必要。自分の頭や心にあるものを、技術を発揮して表現する。それを繰り返していくことで、より良いものが生まれてくると思うようになりました。自分は硝子工芸やってると思ってないから困っちゃうんです。硝子が好きで作ってますみたいなのが始まりでずっと来ているのですが、あえて工芸的な部分を言うなら、素材と技術、繰り返していくことがそれかなと。そういうのが最近思うことです。
→→→後篇に続く
森谷 和輝(もりや かずき)略歴
1983 東京都西多摩郡瑞穂町生まれ
2006 明星大学日本文化学部造形芸術学科ガラスコース 卒業
2006 (株)九つ井ガラス工房 勤務
2009 晴耕社ガラス工房 研修生
2011 福井県敦賀市にて制作を始める