読み物

濵端弘太 つながり/循環 ①

普遍性及び不変性 前篇

濵端弘太さん インタビュー|自分の中から 《前篇》



木工家 濵端弘太さんの展覧会は三年ぶり4回目。

長崎市にある工房にお伺いしてお話するのも3年ぶりだったが、前回訪れた時から物語の続きが始まっているような感覚に襲われた。
いい意味での変わらない空気が漂っているように思えた。
日本家屋の一部を改装して作られた仕事場は、障子を開けると透明な白い光が差していた。
窓の外に広がる枇杷畑も、大きな葉を茂らせている枇杷の木も、以前と変わらずそこにあり、懐かしさを覚えた。
変化を感じたのは、作家自身が以前にも増してこの地にどっかりと根を下ろしたような表情。この工房の工房主としての存在感に厚みが出ているような、そんな気がした。
工房主である作家は、作品を介しての意見交換も以前より活発になり、思いを言葉にする姿勢が増していた。
実は今回4度目の個展にして初めて、店から展覧会のテーマを示させて頂いた。テーマがあるということを一種の縛りと捉える人もいるだろうが、拠りどころと捉えることもできる。枠を利用してどれくらい楽しみを見出してくださるだろうか。
濵端弘太という作家が持つ、頼もしいほどの〈普遍性〉及び〈不変性〉は本展覧会ではどのように作用するか、お話をうかがった。


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──今日は久しぶりに彫るところを見せて頂きました。先ほど彫ってくださったお盆もとてもいいですね。花皿(濵端弘太さんの定番とも言える作品)のイメージをお持ちの方にとっても、濵端さんの作品世界に奥行きを感じて頂けそうです。

濵端:1回目の個展の時にもうすでに花皿が出ていたと思うんですけど、あればっかりではなかったじゃないですか。

──そうですね、あの時も花皿の雰囲気とはまた異なる作品群も少しありましたね。

濵端:ですよね。今日実演してお見せした作品のようなものをね、あの時もうちょっとやりたかったんです。お盆とか。時間がなくてできなかったみたいなのが結構あって。今まで個展は百職さんでは3回させてもらいましたよね。その時々でやりたかったけど間に合わなかったみたいなもの。そういうものがあったんで。それを今やりたいなと思っています。

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──嬉しいです。制作期間はどうしても有限ですからね。ある年の展覧会は季節的に漆が乾きにくくて間に合うかどうか、ということもありましたね。今回4度目ですが4度目にして初めてテーマをお渡しさせて頂いて、また面白い展示になりそうです。

濵端:テーマ(つながりと循環というテーマ)もらったからそう考えたのかな…今までの流れというか、つながりから。展覧会とはあまり関係ない時に急にパッと(過去に作りたかった作品のことが)思い浮かんだりするんです。あの時の展覧会でやっておきたかった作品、そういえばこんなんだったな、みたいに。できる時にそういうことはやっておきたいよなって。

──機会って、いつもあるとは限りませんね。機会やタイミングを大事にというのも一つ。先ほど端材から作ったカトラリーを見せてくださいましたよね。それを拝見して、これは循環というテーマをお伝えしたからかな?とも思ったけど、そうではないことがわかりました。

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濵端:逆にそういうところから今回のテーマを考えると、なんだかよく分からなくなるんです。俯瞰視点になるというか。スケールが大きすぎる。それを言い出すと「この木がまた巡って、また木になって…」みたいな。いやそうじゃないって。別にそうじゃないなと。

──地球規模的視点から今回のテーマは見ていないということですね。

濵端:そうです。自分の制作の中からテーマを見る。となると、やっぱりさっき言ったみたいな、今までの展示の流れとか、自分が物作った時に自分で思ったことや反省もあるし、お客さまやお店の方からアドバイスや言葉をもらって、それが乗っかってまた作ることに繋がっていくっていう。だから、まあ意外と特別なことではない。自分が作ったものが使われるということはすごい特別なことだと思うんですけど。つながりと循環を考えてみたら、別になんか当たり前のことをやっている。むしろ当たり前だからそういう風につながる。そういうスケールの大きなことを考えるより、自分の制作の中からどうなんだろうというのを考えました今回のテーマは。

──身近なものに寄せて考えて頂けて嬉しいです。それがあることで血肉の通った作品になるように思います。そうでないとどこか空虚になってしまう。自分の肚に落ちていることは大事ですよね。今日お邪魔している仕事場は常に日々仕事をしていらっしゃる場所であるわけですけど、ここで自然と心に浮かんできたり湧いてくるものこそが本当の意味で自分の中に根づいているもので、それを基にすることで土台のしっかりした作品が出てくるのではないかと。自分の内側にあるものを探ってみてもらえるのはありがたいです。こうして時は巡り物事も循環し、今までを振り返ってみて掬いあげたものを今回形にしてもらえるのは、いよいよその時が来たという感じがしてわくわくします。

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濵端:初めての展覧会がテノナルさんですからね。9年前。

──そうですね、9年前です。

濵端:9年といっても意外とそんな長いものではない。他の(ベテラン)作家さんから見たら「まだ9年?君はまだ9年しかやってないの?」って。でも初心に還るようなテーマなのはよかったです。

──その9年の中での成長であったり制作活動を積み重ね続けられるのは、ご自身の努力もさることながら、良いお客様やお付き合いされるお店さんとの関係性もあったりと、多くの事柄が結びついた上でだと思うので、まだ9年という方もいらっしゃるかもしれませんが簡単ではなく素晴らしいと思います。これからの方向性としてはどんなことを思い描いたりしますか?例えば、今よりも更に技術を身につけてアーティスティックなものをやりたいだったり、理想はありますか?

濵端:いや、なんだろう。自分としては結構逆のことを思ってて。なんかね、デザインとか技巧に凝るというよりも…別にわざとラフに作るとかじゃないんですけど…。さっき話題に出たグリーンウッドワーク、生乾きで作るみたいなものがありましたが、そんな風に地面により近くなるもの作りというか。そういう感じになっていきたいかな。丁寧にやるっていうのは多分変わらない。

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──拝見していると、初期の頃と比べ、必要な部分と不要な部分を見極めて、余計な手数を減らしていらっしゃるような、少しずつ手放していくようになっていらっしゃる印象も持っています。

濵端:そうですね、なんかこう、やらなくていいことが見えてきたみたいな。それはあります。(定番となっている)花皿もいろんなパターンを以前は結構やってたんです。輪郭の形とかいろいろ。それはシリーズ化としてはいいんですけど、さっき言ったような、それはやらなくてもいいことだろうとある時点から考えるようになりました。何を捨てて何を残すかっていうところで。

──自分の中での仕分けをやり始めるフェーズに来たのかもしれませんね。先ほど見せて頂いたコーヒーのためのボウルというかカフェオレボウルのような深さのあるボウル。あちらは濵端さんの仕事では今までにない新しい展開。それは残されるかどうか、今後の行方がとても興味深いです。

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濵端:これって持ちやすいのはやはり丸じゃないですか。丸って別に刳り物でやらなくてもいいという形でもあるんです。

──こういったものは木工旋盤などで制作している方も多いイメージです。

濵端:そうそう。それでなんか反抗的なアレで今まで作ってこなかったと思うんです、振り返ってみると。でもね別に手でやったら手でやったで、違ったものができてくるんで。それでいいかなと思い始めています。

→→→後篇に続く


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濵端 弘太(はまばた こうた)略歴
1990年生まれ
2011 京都伝統工芸大学校 卒業
大阪市の木漆工芸家 藤嵜一正氏に師事
2015 長崎市で主に器や盆などの制作活動を開始

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