読み物

濵端弘太 つながり/循環 ②

普遍性及び不変性 後篇

濵端弘太さん インタビュー|自分の中から 《後篇》



木工家 濵端弘太さんの展覧会は三年ぶり4回目。
長崎市にある工房にお伺いしてお話するのも3年ぶりだったが、前回訪れた時から物語の続きが始まっているような感覚に襲われた。
いい意味での変わらない空気が漂っているように思えた。
日本家屋の一部を改装して作られた仕事場は、障子を開けると透明な白い光が差していた。
窓の外に広がる枇杷畑も、大きな葉を茂らせている枇杷の木も、以前と変わらずそこにあり、懐かしさを覚えた。
変化を感じたのは、作家自身が以前にも増してこの地にどっかりと根を下ろしたような表情。この工房の工房主としての存在感に厚みが出ているような、そんな気がした。
工房主である作家は、作品を介しての意見交換も以前より活発になり、思いを言葉にする姿勢が増していた。
実は今回4度目の個展にして初めて、店から展覧会のテーマを示させて頂いた。テーマがあるということを一種の縛りと捉える人もいるだろうが、拠りどころと捉えることもできる。枠を利用してどれくらい楽しみを見出してくださるだろうか。
濵端弘太という作家が持つ、頼もしいほどの〈普遍性〉及び〈不変性〉は本展覧会ではどのように作用するか、お話をうかがった。


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──先ほど実演してくださったお盆の、例えば入り隅部分を丸く面取りをするのかしないのかとか、するならどの程度までするのかといった事柄がありますよね。作品のディテールを作っていく際、濵端さんの場合は、急にデザインが降りてくるような感じなのか、事前にいろいろ練り上げたものを準備して様子をを見ながら取り入れるんでしょうか。

濵端:選択肢の中から選んで、組み合わせてやるみたいな感じですね。

──なるほど。選択肢が頭の中にあると。それらを組み合わせていくんですか?

濵端:そういうことです。

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──ある匙作家さんの取材をした時も、そういえば柄の部分と皿の部分のデザインをどんどん描きためていらっしゃって。それをフィーリングで、その時の気分で組み合わせていたり…ということがありました。

濵端:似てますね。僕もそんな感じでやっていると思います。

──日常の様々なものを見るなどしてイメージソースにしている方もいます。濵端さんは例えば骨董を見たり、何かしら美術的な物事は昔から興味はありましたか。

濵端:子どもの頃から特に好きだったとかでもないですね。何か古いものを集めているわけでもないし。美術というか、ある意味では自分に必要なものしか見てない。松田権六(金沢生まれの明治~昭和にかけ活躍した日本を代表する漆芸家・蒔絵師。卓越した技術と功績で「漆聖」「うるしの鬼」とも称され近代漆芸の金字塔とも言える世界を作り出した)っているじゃないですか。松田権六曰く、ものづくりは、とりあえず作家やるんだったらそれでもういいんだと。自分に役立つものだけ見てればいいんだと。これが何年に作られてた古いもので、こっちはいつ頃のもので云々…というのは学者がやればよくて、ものづくりでやる必要はないという意味のことを言ってて。それは確かにそうだなと思って。興味があるんだったらいいけど、いわゆるものづくりの勉強としてだったら、それはやらんでもいいなっていうのがありますね。これなんですけど、これは春日盆といって古くからある定番のものですね。こういうのを見たとしても、結局そこから自分が何を選んで何を出して何を引いていくかっていうことなんですよね。あと、そこに人それぞれの手の癖というようなものが出てきて、丁寧にやるタイプなのか、あえてざっくばらんにやるタイプなのか。

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──古典を手本にするという学び方、作り方もありますが、それでも同じものにはならないですよね。

濵端:うん、ならないですね。

──使っている道具や設備について少しお話聞かせてもらえますか。特に最近は設備や道具が値上がりしたという苦労をほかの作家さんからお聞きすることがあります。そもそもものづくりの設備や道具、材料自体が値が張るものも多いですが、濵端さんはいかがですか?

濵端:僕、あんまりお金かけてない。作業場はともかく、道具は高いのはあんまり買ってなくて。なんかお寺とかで蚤の市やるじゃないですか。その時に1本500円とかで、すんごい錆びてるやつが出ていて、錆びていてもそれ買って砥ぐ。

──使い物にはなる?

濵端:ならないやつもありますけどね。でもね結構大丈夫。こういう柄が古いやつとかは全部蚤の市で買ってるんです。綺麗な柄のやつは新品で買ってますが、どうしてもないやつ(形)とかあるので。うん、でもまあ大抵こうなんです僕の道具。そんなお金かけてないし。刃物もこうね、砥いでやるだけなんで。人力な感じですから。ランニングコストとかそんなものはない。

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──刃物は買い足すことはあっても、買い替えることは稀と聞きますね。

濵端:そうですね。砥いでずっと使えますから。あと最悪、道具があれば外ででもやることはできる。

──たくましい。腕一本で食っていくという言葉がふさわしい。道具は長崎に戻ってからも手に入れたりしてるんですか?

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濵端:ああ、いや、それはもう向こう(関西)にいた時に。四天王寺の蚤の市とか、東寺、北野天満宮の天神さん。ああいうの探していくの面白いですね。500円とか1000円とかで。500円とか1000円ですら値切って買わないといけないっていう時代でした。

──関西にいらっしゃった頃は学生時代、修業時代ですよね。今思うと、それもひとつの道具の目利きの勉強にもなったかもしれませんね。蚤の市は木工の刃物類のほかにも古いけど様々な工具が並んでる露店もありますし。

濵端:そうですね。そういうのを見るのも面白かったですね。

(了)


三年ぶりに個展開催して頂く濵端弘太さん。
ご紹介のため、前回の展覧会におけるインタビュー記事を再掲しました。展覧会をより深く楽しみたい方は、ぜひこの機会にご覧ください。

濵端弘太さんにお聞きする 前篇 https://tenonaru100.net/photo/album/1197989
濵端弘太さんにお聞きする 後篇 https://tenonaru100.net/photo/album/1197990
前回展覧会「木を見て我を見る」/2023年9月30日(土)-10月8日(日)

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濵端 弘太(はまばた こうた)略歴
1990年生まれ
2011 京都伝統工芸大学校 卒業
大阪市の木漆工芸家 藤嵜一正氏に師事
2015 長崎市で主に器や盆などの制作活動を開始

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